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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第10回
フォーバルベトナム

海外事業展開支援、人材支援、ITサポート、レンタル工場の運営などを行うフォーバルベトナム。事業の特徴は日系中小企業が対象なことだ。ベトナム初進出の彼らを受け止めるCEO & General Directorの有賀正宏氏が語る。

海外展開や人材への支援

―― 御社の海外進出について教えてください。

有賀 2009年から始めました。日本市場が縮小する中で、中小企業が海外進出を模索していたことがきっかけです。中小企業が出やすい国を考えたときに親日国が多い東南アジアと判断して、2010年にカンボジア、2011年にインドネシアとベトナム、2012年にミャンマーに現地法人を作りました。

 私は2010年から、FS(事業化の可能性調査)を目的に出張ベースでベトナムに来ていまして、事務所探しから始めました。設立後は日本でフォーバルベトナムの経営を見ており、赴任したのは2016年です。約10年経ちますが、ベトナムに来る日系企業経営者の方々の意識が変化していると思います。

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―― 日本人の意識が変わったと。

有賀 2010年に視察などで来る人は、興味半分、遊び半分という人も少なくなかった(笑)。それが最近はほとんどいません。インバウンド観光客や技能実習生などのおかげでしょうか、外国人に慣れているように見えますし、具体的に「これがしたい」と目的を語る人が増えてきました。

 今の日本の景気は良いが、長くは続かない。ならば次の世代のために、次の仕掛けを考えたい。そう考えた彼らの選択肢は日本国内ではなく海外で、結果としてベトナムを選んでいるようです。

 私たちの事業の一つが海外展開コンサルティングであり、まさにこうした人たちを対象としています。また、海外展開には日本の県など自治体から委託を受けた事業が多くあり、主にテーマは3つあります。「県産品の輸出」、「インバウンド」、加えて昨年から「人材」が入りました。

―― どのような内容でしょうか?

有賀 県産品輸出やインバウンドでは、METALEX VIETNAMやVietnam Foodexpoなどの展示会で県のパビリオンを出展したり、県単位の商談会を開催するなどです。そこに現地のバイヤーを招待して、ブースで商談してもらいます。

 日本企業1社に対して約5~6社の商談が実現しており、「翌年度も参加したい」との意思表明をされる、リピーターとなる日本企業も多いのです。最近では一律に支援するのではなく、企業を特定して県産品輸出の成功事例を作ろうという動きもあります。

 また人材とは、高度人材や今月より施行された特定技能社員としてベトナム人を日本に送り出すことですが、日本の労働者不足対策が待ったなしの状況において、解消策としてとても注目されています。

 弊社の事業の一つである人材支援コンサルティングにも関係していることで、こちらの事業では、バリアブンタウ省にある職業訓練校の卒業生を、現地の日系企業様に紹介しています。加えて、日系企業の求める人材を育てる教育支援も2012年からしています。

―― 学校に対する支援ですね。

有賀 はい。ただ、日本人教師が生徒に教える方法では、その教師がいなくなると支援が止まります。そこで、日本で退職した教師を派遣して、ベトナム人の教師に教え方を教えています。期間は1~2年のボランティアで、常時2~3人がいまして、延べで14人ほどになりました。補助教員としてベトナム人教師とともに生徒に向かい合うこともあり、素直で目を輝かせている生徒と接して、とてもやりがいを感じてくれているようです。

 教えるのは基本動作訓練、マナー研修、技術や商業の専門教科などです。日系製造業が望む5Sや安全教育についても、卒業までの2~3年で自然に身に付いています。この生徒たちが卒業する際には日本の大学のキャリアセンター(就職課)のような役割をして、当地の日系企業に紹介しています。北部のハノイ技術短期大学でも少しずつ始めています。

順調に進むレンタル工場

―― 日系企業向けのレンタル工場も事業の一つですね。

有賀 はい。ニョンチャック3工業団地内に、地場デベロッパーのティンギア社や親会社のフォーバルなどが出資して、2015年にJapanese SMEs Development JSCを設立しました。ここが運営しているので、JSC事業と呼んでいます。

 調査を始めた2011年当時は、レンタル工場は1haの規模や1棟貸しがほとんどで、日系中小企業には広すぎましたし、初期投資としては高額でした。進出には小規模なプラットフォームがないと厳しいと感じていたところ、ニョンチャック3工業団地を運営するティンギアが話に乗ってくれたのです。

 初めてベトナムに来てゼロから立ち上げる中小企業を想定して、基本区画を288㎡と648㎡の2つにしました。また、ローカルの工業団地に比べて多少高くはなるものの、サポート体制を充実させました。労務系やIT系など内容を問わない「よろず相談」を受け付けていまして、操業前はもちろん、操業後もサポートしています。

―― 入居はどんな状況でしょう?

有賀 総面積は18haで、全10フェーズを計画しています。6フェーズまで完成しており、入居企業は42社で、そのうち31社が日系企業です。建設中の7フェーズでは約半分の入居が決まっています。業種は金属加工業が多く、他にプラスチック射出成型など裾野産業がほとんどですね。

 ニョンチャック3工業団地には自社工場を持つ日系企業が15~16社あると思うので、弊社の入居企業を含めてほぼ50社になります。これだけの企業数があるので、企業さん同士で仕事を融通し合うなども生まれています。また、皆さん進出して3年くらい経つと、経営が安定してくるように思います。

―― これからしたいことは何でしょうか?

有賀 ちょっと抽象的なのですが、今のベトナムの親日は我々ではなく先人のおかげですので、20~30年後もこの状態が続いているか不安です。いや、今ほどはないでしょう。一方、人口減が続く日本では、様々な面で海外の人に助けていただく必要が出てくる。ですから、今の我々がベトナムの若者に対して、日本を好きになってもらうよう努力する必要があります。

 ベトナムの若者の離職率が高いのは、キャリアプランを考える時期がないからだと感じます。日本なら大学もサポートしますし、最近では将来をしっかりと考える若者も増えました。しかし、ベトナム人は卒業後に働きながら考えるので、キャリアプランの中でのスキルアップやステップアップができず、目先の給与だけで転職を繰り返してしまう。

 どんな形かわかりませんが、私はキャリアプランを考える場を作ってあげたいのです。そこで育った彼らが将来社会の中枢で働くようになって、「俺たちが今あるのは日本人のおかげだ」と思ってくれれば、ベトナムの親日は今後も続くのではないでしょうか。

FORVAL VIETNAM CO., LTD.
有賀正宏 Masahiro Ariga
大学卒業後に株式会社フォーバルに入社。ITコンサルタントとなり関西支社長、東日本支社長、関連子会社の社長、フォーバル執行役員などを経て、2009年より執行役員兼海外ディビジョンヘッド。2010年よりベトナム拠点立上げに携わり、2016年より現職。