9月9日、飲食店のオーナーたちはホーチミン市による飲食店の活動再開許可を聞いて一瞬喜んだものの、従業員、食材調達、配達員の手配の問題や思ったほど注文が来ない可能性など様々なリスクを考慮し、実際に営業を再開した店舗は一部に限られた。
飲食店によれば、現在のような厳しい状況で外食産業が本格的に活動を再開させるにはまだ時間が必要だ。大手チェーンだけでなく、小規模な個人経営の飲食店でも営業は再開したいが、現在のような全てが不足している状態では難しいと判断している。
コストをカバーするには注文が不足している
2か月前からデリバリーでの販売もできなくなったフーニョン区のチンキ―食堂は、9月9日になってもシャッターが下りたままだった。
店主のズンさんは、これまで鶏肉、エビ、魚、野菜などの食材を仕入れていたバーチェウ市場の店舗がまだ閉店したままで、営業を再開する目途が立っていないと話してくれた。また、配達作業員を見つけるのも難しく、同一区内しかデリバリー出来なければ注文する客もそれほど見込めないとのことだ。
「野菜や新鮮な食材の価格が高騰しており、仕入れた食材を使いきれなければ大きな損失になります。COVID-19の検査費用も1回あたり20万VNDかかり注文が少なければ割高になります。現時点では経営効率は非常に悪く、感染のリスクまであります。」とズンさんは説明してくれた。
デリバリー販売専門のTasty Kitchenを経営するチューンさんは、デリバリー販売は自社の強みではあるが、まだ準備が間に合っておらず、営業再開までにはあと数日はかかる見込みだと話す。さらに、店舗を再開するためには、地域を管轄する機関に報告手続きをおこなう必要があり、その後、スタッフの手配や原材料の仕入れ、配達員の確保も必要になる。
「弊社の従業員の殆どが田舎に帰っており、一部は封鎖地域にいて仕事に戻ってくるにはかなり時間がかかります。感染状況が複雑で、誰もがすぐに仕事に戻ってこれる状況ではなく、COVID-19検査費用や食材費の高騰といった問題もあります。なので、うちでは当面の間は冷凍食品パッケージの販売のみをおこなうことにしています。」とチューンさんは話してくれた。
109チキンホットポットチェーンの創業者であるティンさんは、9店舗あるチェーン店の従業員が通常時の40%程度しか確保できておらず、その従業員も多くが封鎖地域に住んでおり、ワクチンをまだ接種出来ていないので、あえて店を再開させることは考えていないと説明する。
「3つの現場対策を実施するコストは言うまでもなく、検査費用や食材の仕入れ価格の高騰、配達費用の上昇などの問題があり、弊社としてはもう少し待機を続けるしかありません。」とティンさんは話す。
安定した仕入を待たなければならない。
ビンタイン区でフォーの食堂を営むゴックさんは、この2ヶ月全く調理をしておらず、オーナーが値下げしてくれたものの毎月店の家賃を1500万VNDを支払う必要があり、一刻も早く営業を再開したいと話す。
「でも、フォーの麺を仕入れられないので、今は販売再開が難しいです。店はビンタイン区にありますが、フォーの製麺所はトゥードゥック市にありここまで配達してもらう事が出来ません。1日に200杯のフォーが売れてようやく利益が出るのですが、今は配達料金も高くてあまり多くの注文が見込めません。」とゴックさんは話す。
トゥードゥック市内でパン屋を営むトゥアンさんは9月9日から営業を再開した。しかし、トゥアンさんによれば、野菜や香草など十分な食材が手に入らないのでまだバインミーを販売することが出来ないそうだ。
「これらの食材は、通常なら卸売市場の店舗が配達してくれるのですが、今は営業していません。従業員も田舎に帰っていますので、今は自分でできる範囲しか販売できません。」とトゥアンさんは話す。
ホーチミン市内のカフェチェーンの代表であるAさんは、ホーチミン市の発表があってから経営幹部と営業再開に向けて話し合いをしたが、スタッフと配達員の確保が難しいという事で結局事業の再開は見送った。このチェーン店では、スタッフの多くがCOVID-19に感染し、他の従業員は田舎に帰ったり、封鎖された地域に住んでいる。
「これまでデリバリーはパートナー企業にお願いしていましたが、パートナー企業もスタッフが足りずに困っています。なので、当社では、営業再開はせず、対応できる少数のスタッフで野戦病院や検問所に無料で飲み物を届けるだけにすることにしました。」とAさんは話してくれた。
ホーチミン市でシーフードレストランを営むチューンさんは、取材に対して従業員と顧客を維持するために、9店舗中7店舗で営業を再開させると述べた。しかし、仕入れ先の営業停止によって販売できる食材は通常時の30%程度に過ぎないそうだ。50人以上の従業員で”3つの現場対策”を実施するためには月に数億VNDの経費が必要になる。「注文品の80~90%は配達アプリによって配達されていますが、配達料金は通常時の3倍にもなっているので、注文が伸びずに大きな損失が出るのではないかと心配しています。」とチューンさんは話す。
あえてリスクはとれない
多くの飲食店オーナーが、一般の市民が街に買い物に出かけれられる状態になるまで販売再開を控えると答えた。
「配達料金が高額なので、1度目の注文はあっても2度目、3度目は無いでしょう。お弁当1個が10万ドンだったらいったい何人の人が注文しますか?この販売方法では注文数も見込めず、スタッフも足りないし食材費は高騰していますから利益が出ないのは当然です。」とトゥードック市で食堂を営むタインさんは話す。
一方でカフェチェーンを営むティエンさんは、感染が拡大してからこれまでに4回も営業再開を経験しており、飲食業界にとって最も重要なことは安定性であると指摘する。
「営業を再開するたびに清掃、修理、スタッフ確保に費用が掛かります。なので、私達はすぐに営業再開させるのではなくてもう少し様子を見ます。多分2か月後もまだ営業再開できる状況にはならないでしょう。」とティンさんは話す。
ティエンさんによると、いま多くの家主は賃貸料を値下げしているが営業を再開すれば賃貸料はもとに戻るだろう。しかしだからといって経営がうまくいく保証はない。輸送費が高騰し、コーヒー豆などの仕入れ価格も値上がりしている中で毎日営業を続けることは非常に難しいと話してくれた。
例えば、コーヒー豆はダックラック省やラムドン省からホーチミン市の焙煎工場に運ばれ、その後、市内の各区の店舗に配送される。しかし、現時点では区を跨いだ配送は難しく原材料価格を30%以上押し上げている。
「以前は、タンフー区から5区まで10㎏のコーヒー豆を配達するのに3万VNDの費用が掛かりました。しかし今では25万VND払っても配達してくれる人が見つかりません。最近のビジネスにおける最大の問題は、区を跨いだ配達が出来ないことです。配達が容易になれば、販売価格を下げられるだけでなく、消費者も注文しやすくなります。」とティエンさんは説明する。
「飲食店のデリバリーサービス再開は、良い兆候ですが、実際に各企業が営業を再開させるためには、まだ多くの問題が残されています。そのため、政府は企業と共にこれらの問題を解決し、早急に以前の生活を取り戻せるようにする必要があります。」とチューンさんは指摘した。
出典:10/09/2021 TUOI TRE
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