かつて新型コロナが猛威を振るった国である中国、アメリカ、イギリスは、迅速なワクチン接種と検査、厳格な隔離措置によって今では新型コロナをほぼ克服しつつある。
中国では、最初に武漢でウイルスが発見されてから1年以上が経過し、人々は普通の暮らしに戻っている。新型コロナによるパンデミック後に、この国の経済は、大きく成長した。2020年7月の中国の工業生産は2019年と比べて4.8%も上昇している。中国の成功は、強力な感染防止対策によるものだ。
イギリス政府は、国内で感染が拡大し始めた時期に、新型コロナへの対応が遅く、集団免疫に対して盲目的な信仰を示したために多くの批判を受けた。アメリカは、2020年当初に新型コロナの危険性を過小評価したために、世界最大の感染国となってしまった。しかし、迅速なワクチン接種キャンペーンにより、この2つの国は、長いトンネルの先の光が見え始めている。イスラエルも医療のデジタル化によって、アジア諸国に比べワクチンの接種が格段に進んでいる。
迅速なワクチン接種キャンペーン
現在、イギリスのワクチン接種状況は、世界でもトップクラスに位置している。イギリス政府は、12月8日の時点で、最初の新型コロナワクチンの承認をおこなった。これまでに国内で3500万人が、アストラゼネカ、ファイザー、モデルナ製のワクチンを少なくとも1回接種している。イギリス政府は、7月末までに全ての成人にワクチン接種を完了することを約束している。
世界の中でもイギリスがワクチン接種プログラムで先行できている秘訣は、ワクチンに対する悪いニュースも公表し、それでもなおかつワクチン接種計画を維持し続けたことにある。この戦術が国民の信頼を得るのに役立ったのだ。
イギリスのスターリング大学行動科学センターのデビッド・コマーフォード氏は、「イギリスは、医療広報が素晴らしかった」と説明する。コマーフォード氏は、ワクチン接種による血栓症の症例が世界で最初に報告されたとき、各国政府がどのように反応したかについて例を挙げた。このニュースが最初に出たとき、アメリカ、フランス、イタリアの政府は、ワクチン接種を一時停止した。これによって国民のワクチンへの信頼性は急落したのだ。
しかし、イギリスでは、国民保健サービス(NHS)が新たなワクチン接種ガイドラインとして30歳未満の人は、アストラゼネカの代わりにモデルナかファイザーのワクチンを接種するよう推奨するとしただけで、ワクチン接種計画を粛々と継続した。
スターリング大学の専門家達によれば、このイギリス政府の対応により、ワクチンによる血栓症のニュースが広がっても、イギリス国民のワクチンに対する態度は変わらなかったという。これは同じニュースでEUの多くの国民がワクチンに対して慎重になったのとはかなり対照的な出来事であった。
アメリカでは、ワクチンが新型コロナの感染率と入院率を低下させている。5月10日、ホワイトハウスのジェフリー・ザイエンツ新型コロナ対策調整官は、「我々は感染状況を改善できている」と述べた。
アメリカではこれまでに、成人人口の60%弱の人が少なくとも1回の接種を終えており、人口の34%にあたる1億1300万人が2回の接種を完了している。独立記念日にあたる7月4日までに全人口の70%に少なくとも1回のワクチンを接種するというバイデン大統領の目標は、まもなく実現するだろう
新型コロナワクチンの接種普及により、アメリカの1日あたりの感染者数は、2021年1月の25万人から現在では4万3000人にまで、急減している。また入院患者数と死亡者数も劇的に減少している。
「誰もが疲れきっており、マスクを毎日着用するのはうんざりだと思っている。しかし、我々はついに出口に近づき、トンネルの向こうの光はますます鮮明になっている」とザイエンツ氏は語った。
医療システムのデジタル化によりイスラエルは世界で最もワクチン接種が進んでいる国の一つとなった。感染リスクの高いグループの90%弱が既に2回目の接種を完了しており、4月7日には全人口の57%がワクチン接種を完了している。
5月9日、イスラエルの一日の感染者数は10人となり、過去数か月で最低の数字となった。但し80人の重症患者については引き続き入院が続いている。
イスラエルはアジア諸国に比べてはるかに合理的なワクチン接種プログラムを展開した。ワクチン接種プロセスは、完全にデジタル化されており、看護師は、接種データをスマートフォンのアプリを使って入力することが出来る。ワクチン接種を終えて帰宅した人には、副反応について、オンラインで調査表が送られてくるようになっている。
イスラエル国民は、健康保険機関が発行したアプリを使って、ワクチン接種の予約手続きをおこなえるようになっており、入力されたデータは、市町村レベルの社会保険機関であっても患者の健康記録にアクセスできるように、国家レベルで管理されている。
迅速なテストと厳密な隔離
新型コロナの感染が確認された当初、武漢は、ウイルスに対する対応が遅く、情報開示が不十分だとして批判された。2020年2月末、武漢の政府当局は、担当者が住宅を戸別に訪問し、感染者を仮設病院に隔離したり、症状のある子供を親から引き離すことさえ行った。屋外では、ドローンが通りをパトロールし、市民にマスクの着用を促していた。
中国国務院は、各州に対して24時間体制の対策本部の設置を命じ、検査で陽性と判断された人の隔離施設を設立するよう求めた。人口500万人都市の場合は、わずか2日で全人口のPCR検査をおこなえるようにし、それより大きな都市でも3日から5日以内に全員の検査を行える体制を整えた。
昨年、中国では5000人以上の公務員が新型コロナ の管理に失敗した責任を取る形で解雇処分を受けた。また石家荘市では、隔離施設を脱走してタバコを買いに行こうとした男性が、管理当局によって木に縛りつけられるという事件も起きた。
今年の4月、国境を接するインドでパンデミックが起きたが、中国は広範囲な検査と海外からの入国者に対する厳格な隔離措置により、国内の市中感染をほとんど出していない。5月12日、中国は16人の陽性者を確認したと発表したが、それらは全て海外からの入国者であった。
中国の国家保健委員会は、海外からの入国者全員に隔離期間中のPCR検査を義務付けている。隔離14日目には、入国者は検査の精度を保証するため2か所の検査機関で検査を受けなければならないとされている。
中国の新型コロナ感染対策の成功は、中央集権化された強力な権力によるものだ。この様な感染対策は人権侵害であるという批判を受けることもあるが、ウイルスへの対策としては確かに効果的である。
出典:14/05/2021 VNEXPRESS
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