毎年恒例の製造業の大型展示会「METALEX Vietnam」と大規模な商談会「FBCものづくり商談会」が、新型コロナの影響からオンラインで開催された。今度も増えるであろう展示会や商談会のオンライン化をレポートする。
Virtual METALEX Vietnam
Virtual METALEX Vietnam 2020が10月23日と24日に開催された。ただし、従来の展示会ではなくオンラインだ。その内容を見ていこう。
事前にWebサイトから登録すると、前日にリンクのURLが送られてきた。それを開くとトップページである「ロビー」が表示される。ホーチミン市のSECCのような、イラスト化された展示会場のエントランスだ。上部にあるタブから行きたい(見たい)場所を選ぶ。大まかにはメイン会場「Exhibition Hall」、商談会「Supporting Industry Show 2020」、Webセミナー「Webinar」に分かれる。
「Exhibition Hall」には出展企業のアイコンがずらりと並び、左側のフィルターで条件検索もできる。アイコンをクリックするとイラストのブースが表示。ブースのデザインはほぼ皆同じで、色と多少のデザインが違う程度だ。
ブース中央や上部にはモニターがあり、クリックすると動画やホームページが表示される(ない場合もある)。動画は英語やベトナム語の音声や字幕が多かったが、日本語表示のみ、韓国語音声のみなどもあって様々。
ブース右側に立つ男性(女性版もある)からの吹き出しには、チャット、メール、商談用のカレンダー機能、テレビ電話があり、出展企業にアクセスできるようになっている。
ブースの下部には会社情報、連絡先、チラシやブローシャーのファイルもある。これら資料が豊富にあり、動画もしっかり作っている企業がある一方で、資料も動画もない場合もあった。事情はあるのだろうが、来場者には何も伝わらないのではないか。
部品などモノから探したいならタブの「Products」が便利だ。製品が写真で一覧表示されるので見つけやすいし、クリックするとブースやチャット機能につながるようになっている。
公式発表によると、登録者数は1750で来訪者は447。出展社数は110で、来訪者は平均で61ブースにアクセス。また、来訪者がチャットに入った回数は合計で356、来訪者と出展者によるメッセージの送信は1240、 テレビ電話の回数は951だった。
JETROのリアルな商談会
JETROの商談会「Supporting Industry Show 2020」はリアルとオンラインのハイブリッド型で行われた。オンラインの場合は上記のように、チャット、メール、テレビ電話などで「来意」を伝えるか、改めて日時を設定する。
リアルの展示会場はホーチミン市のホテルニッコーサイゴン。在越の日系企業19社が、部品調達を希望する「バイヤー」として出展した。ホテル内とあって各社のブースは小さく、室内の壁に沿って囲むように配置。そこへ初日の午前中にもかかわらず、開場時間から多くのベトナム人が押し寄せた。
その何社かに話を聞いた。Sharp Manufacturing Vietnamはディスプレーのモジュールと空気清浄機の部品を調達したいとのこと。ベトナムでの商談会は初めてで、生産増もあって現調率を高めたいと、ローカルのサプライヤーを探していた。
JUKI VIETNAMは主力商品のミシンの部品調達がメインで、ローカルのネットワークを開拓中。一方で自動車用部品などを製造しており、こちらの業務もアピールしていた。これまではタイ支社で見ていたが、ベトナムに事業部を立ち上げたそうだ。
予想を上回るリアルへの来場者
Vietnam Onambaは冷蔵庫、エレベーター、燃料電池などのワイヤーハーネスを作っており、当初は日本向けだったがベトナム市場を開拓中。電線、チューブ、ウレタンフォームなどの材料を現地調達したいそうだ。
「現在の現調率は3~4割ですが、メインは外資系企業で、ベトナム企業からは段ボールなどの副資材を調達しています」
Amon Vietnamは「現地調達で困っているものを持ってきた」と、電動ペンチや検電テスターなど自社製品を展示。売込みも兼ねているそうだ。現調率は4割以下で、ローカル企業を探しているが、なかなか見つからないという。
「大抵の部品は本社で一括購入して輸入していますが、スピードアップとコストダウンのために現調化を進めたいです」
KATSURA VIETNAMは部品の塗装先を探すと同時に、ダイキャスト加工の受注も狙っていた。展示していたのはガスのレギュレーターで、日本やASEANにも輸出している製品だ。
「オンラインの商談会は初めてです。日本人同士なら良いけれど、通訳が入ってのオンラインでうまくいくのか心配ですね」
開場から2時間で、出展各社は10社程度の来訪を受けていた。合計の来場者はJETROの予想を上回り、2日間で447人を達成。出展者からは「効率良く数多くの商談ができ、参加してよかった」との感想や、オンラインの利点として「遠方の企業とも交流が可能で、移動コストも削減できる」、「情報のやり取りが容易」などの声があったという。
FBCハノイものづくり商談会
10月28日と29日に開催されたのは、FBCハノイ2020ものづくり商談会。ハノイのThe Vietnam Trade Promotion Center for Agriculture (Agritrade)がリアル会場で、Zoomでのマッチング商談会やバーチャル商談会が行われた。
まずはオンラインのWebサイトに入ってみる。登録後にイラストのエントランス、次にロビーに入ると、画面下部にタブが並んでいる。「Exhibition Room」をクリックするとメイン会場で、展示会場を上から見たアングルで社名と番号が並び、AからCに分かれたブースが合計93ある。
クリックすると「バーチャル商談ブース」のイラストが表示される。中央に女性がいて、ベトナム人はアオザイを、日本人は着物を着用。その上部にはモニター、左右にはポスター、下には受付台があり、室外には資料のラックや製品のイラストがある(ない場合もある)。
動画をクリックすると動画が始まり、ポスターはその現物(製品のチラシ等)に拡大、資料ラックはブローシャーや会社案内等の資料で、部品など製品をクリックすると写真や説明が出る。受付台は日本語や英語での企業情報だ。こちらもMETALEXと同様に出展企業で差があり、企業情報のみという場合もあった。
画面の左端にはアイコンがあり、吹き出しがチャット機能、カレンダーマークがアポイントの申請、スピーカーはテレビ電話のリクエストだ。画面左右には矢印があり、隣のブースに移動できる。
タブの「Exhibitor」は出展企業リストで、出展企業が一覧表示される。「Exhibitors Extra」はWebでの出展企業リストで、ベトナムと日本だけでなくタイの企業も多かった。
右端にあるタブ「Attendee」は調達・供給のニーズ。企業単位で求めるものが、二輪車部品、機械加工部品、CNC旋削・フライス製品などと、連絡先と共に載っている。
リアルの商談会は取材しなかったが、今回はタイでのFBCバンコクウェブ商談会が同日開催され、出展企業はベトナムで130社(Web出展37社、会場出展93社)、タイで102社(Web出展71社、会場出展31社)が集まった。
調達を望む品目は自動車、OA機器、電気・電子関連と幅広く、リアルの来場者は合計で1800人、事前申込を含むベトナム側の総商談件数は5500件にも上った。出展企業からは「満足度が高い」や「次回も出展したい」などの他、「年に複数回の開催を」という希望もあった。
オンライン開催での課題
これら2つの展示会・商談会で、リアルの商談は共にスムーズに進んだようだ。では、オンラインの課題は何か。どちらもサイトの構造はシンプルで、操作にはすぐ慣れる。当たり前だがリアルの展示会と違ってサクサク回れる。コンタクトも容易に取れたはずだ。
ただ、出展企業によって動画や資料など情報に差があったのは残念。個人の感想だが、情報の少ない企業はザッピングのように飛ばしてしまい、その分、情報の豊富な企業を見つけるとクリックしてしまうのだ。製造業系展示会の醍醐味である「実際にモノを見て、触れられる」がないだけ、情報の充実は欠かせないと感じた。
それでも、積極的に取引を望む企業が100社以上も並び、その場で質問や商談ができるチャンスは大きい。すぐに契約に至るのは難しくても、第一歩としてのパートナー探しができるのなら、オンライン展示会は重宝されていくだろう。
今後は在宅勤務も進むだろうから、自宅のPCから世界中の展示会に出展と参加ができ、新しい出会いや商談が生まれる。特に出展側にとっての大幅なコストダウンは魅力だ。始まったばかりで出展者も来場者も要領をつかめていないだろうが、数年後には「ニューノーマル」になるかもしれない。