ベトナム最大級の工作機械、精密機械、金属加工の総合展示会「MTA VIETNAM 2018」が、7月3日~6日にホーチミン市のSECCで開催された。6ヶ国の国際パビリオンを含めて452社が出展し、4日間で1万1131人が来場した。
出展は外国、来場はベトナム
今年で16回目となるMTA VIETNAM 2018。ベトナムで最大級の製造業の展示イベントで、毎回ベトナム人の来場者が多いことが特徴だ。それを見込んでか国際パビリオンはドイツ、台湾、韓国、シンガポール、タイ、日本など12ヶ国あり、22ヶの国と地域から452社の企業がブースを出展した。ジャパンパビリオンでは日本から14都道府県の24社の中小企業が参加した。
会場はSECC国際展示場。一般に使われるホールA1とA2の他に通路を挟んだA3も使用。A1のエントランスへ向かうといきなりドイツパビリオンが並び、すぐに国際色豊かとわかる。メインホールに入ると右手にジャパンパビリオンが縦横にあり、越えて先に進むと日系を含めた著名なグローバル企業からベトナムの小さな企業まで、様々な展示が見て取れる。
ブースの上部に「TAIWAN」、「KOREA」、「Singapore」など自国のロゴを掲げる各国企業が多く、モーターショーのコンパニオンのように、揃いのユニフォームやアオザイで対応する女性たちが華やかだ。
出展されたのはやはり旋盤やマシニングセンターなどの工作機械が目立ち、加工機、精密機器や部品、材料や素材までサイズも価格も幅広く、バーチャルリアリティ用の機器や工場内用のウインチなどにも来場者が集まっていた。何社かに確認したところ、最新モデルを展示している企業がほとんどで、ベトナムでの販路拡大に向けた熱の入れようが伝わってきた。
出展社は外資系企業が多く、ブースには英語や外国語のできるベトナム人スタッフが常駐。一方の来場者は圧倒的にベトナム人で、機器の動作を真剣に見つめたり、商談や質問をする姿がそこここで見られた。
購買意欲が高いベトナム企業
いくつかの日系企業を紹介すると、メインホールの入口近くで広いブースを出していたのがYAMAZAKI MAZAC VIETNAM。今回で12回目となる出展で、ベトナムに合わせた中小型の旋盤とマシニングセンターの最新モデル4機とNCコントローラーを展示。ユニークなのは同社の顧客が同社のマシンで加工した製品をサンプル展示していたこと。General Directorの大津高人氏は、「出来上がりを実際に見てもらい、安心して使っていただくための工夫」と語る。
来場者は地場のホーチミン市だけでなく北部や中部からも参加しており、同社の顧客もハノイから来て1週間滞在中という。
「購買意欲、設備投資意欲は日系企業よりローカル企業のほうが強く、注文もほとんどがローカル企業からです」
中古機械を使っていたが、資金ができたことで新品を買うなども多いようで、経営者や代表者が来場して即決する場合もあるとか。実際、昨年のMTAでは5分ほど話して購入を決めたベトナム人もいたそうだ。
「日本から視察に来て、ベトナムの企業が日本の企業よりもいい機械を使っていると、驚く日本人の方もいるんですよ(笑)」
AMADA VIETNAMはMTA VIETNAMへの出展が今回で10回目ほど。自社の工作機械の輸入・販売を行う同社は、ベトナムで初披露となるファイバーレーザーマシンの最新機などを展示。ベトナムでの顧客は制御盤やエアコン等のカバーやエレベータ部品といったメーカーで幅広く、MTAでは特に板金をメインにした金属加工メーカーにアピールしたいそうだ。
Service Managerの齋藤隆史氏は「MTAはお客さんにPRして接点を作る場。その後に自社の展示場で実機を見せて、商談を進めたい」と語る。また、General Directorの菊地幸仁氏は「最新機をフラッグシップモデルとしてベトナムでの認知度を上げて、スタンダードモデルも普及させたい」という。
工作機械以外にはIoTの仕組みを説明する動画や、工作機械と連携させたモニターを展示。解析ソフトを使った加工機のモニタリングによる、現場や工場の改善などを行えるという。また、10~30分程度の時間を区切った、マシンの紹介やIoTの説明会も実施していた。
材料や測定器などにも注目
TAKAISHI INDUSTORYは「SPラバー」という独自の「すべるゴム材料」を展示。水回り製品に使って水漏れを防いだり、消防車用のバルブに使って放水が楽にできるようになったりと、グリスやオイルが不要となるゴム材料だ。
Directorの高石純二氏は「MTAは初めてですが、朝からひっきりなしにお客さんが来ています。ゴムで困っている人が多いのは間違いないですね」と語る。中国製のゴム製品を使っている企業も多いようだが、徐々に水漏れしてしまうことに悩む人もいるという話だ。
実際、ブース前に置かれた通常のゴムとSPラバーの箱に指を入れると、後者に湿り気があるのが実感できる。表面のコーティングでなく滑る成分を素材に配合しているため、半永久的に効果が続くという。
「この展示会はベトナム人の来場者が多いのがいいですね。商談につながると思います」
ベトナムには支社がないため、ベトナムの代理店が出展していたのがニコンのブースだ。電子顕微鏡と測定器があり、機器によって代理店が異なり、どちらも若いベトナム人スタッフが対応していた。電子顕微鏡を担当するRYOKOSHA VietnamのVo Thi Hoang Maiさんは「お客さんは日系メーカーが多いですね。特に基盤や金属を扱う会社さんです」と語る。
電子顕微鏡を実際に試したり、測定器の説明に聞き入る来場者が数多くいた。
ベトナムの成長で見える勝機
THKは広いスペースを設け、主力商品のLMガイドなど多数の部品と自動機を展示。MTAは今回が2回目と、THK株式会社の産業機器統括本部IMT事業部チームリーダーの青山陽一氏は語る。
「昨年は大きなブースを作りましたが、思ったほどアピールできなかったと思います。今年は現場の運営もわかってきて、お客さんに対応できていると感じています」
同社の製品は日本と中国で注目され、その勢いがアセアンに流れていると実感しているそうだ。生産現場の自動化が進むベトナムには勝機があり、ただ進出間もないことから顧客獲得のためにPRが欠かせないという。
「製品はもちろん、自動機のソリューション提案を進めたいですね。部品の設計から製造までの時間とコストを考えれば、自動機を採用するメリットが大きいことを伝えていきたいです」
DMG MORI VIETNAMは最新型の5軸制御マシニングセンターなどを展示。マシンの前には常に来場者がいるほどの人気ぶりで、多くのベトナム人が覗き込むように加工の様子を眺めていた。工程の複合化により、3軸では2台必要となる曲面加工が5軸では1台で済むようになり、時間、スペース、オペレーターなどが削減できるという。
今回で5回目の出展。Product and Key Account Managerの桑原太平氏は、ベトナムの製造業は急速に知識を身に付けており、賢く、スマートになっていると語る。
「実機を見ての質問、比較検討の基準、交渉などからそれが伝わります。モノづくりに真剣になっている証拠ですし、非常に喜ばしいことです」
台湾製や韓国製の他社製品には「見積りで負ける」そうだが、顧客が成長することで、マシンの値段だけを見ずに、「1年使い続けたら単価は下がる」などを理解してくれるそうだ。また、日本製品への信頼感は相変わらず続いており、常に情報を求める製造業に対して、MTAはそれを提供できる場であると考えている。
「今後は自動車産業も起こってくると思いますし、ベトナムはこれからも伸びるでしょう。マーケットサイズはまだ小さいですが、拡大する角度は高いでしょうね」
ジャパンパビリオンをサポートしたのがJETRO(日本貿易振興機構)。今回で12年連続となり、14の都道府県から24社の中小企業が来越した。これらの企業を紹介するパンフレットを用意するなど準備も万端。応募は34社からあったそうで、毎年30社程度の応募があるそうだ。
ものづくり産業部の佐藤竣平氏は、「この場での契約は難しくても、商談がきっかけで契約につながるケースはあります」と語る。
JETROでは展示会の半年程度後にフォローアップとしてヒアリングを行っており、そこで契約につながったなどの声を聞くという。成果は実感しているので、来年以降も続けたいという。
次のMTAはハノイだ。MTA Hanoi 2018は今年の10月16~18日、International Center for Exhibition (I.C.E)で開催される。