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ベトナムビジネス特集Vol115|
工業団地の視点! 米中貿易戦争・変わる製造業

悩みながらも発展するベトナムの製造業。近年はどんな企業がどのように動いているのか? 米中貿易戦争で中国からの生産移転は進んでいるのか?南北の著名な工業団地の視点から解き明かす。

日系企業移転はまだ様子見多数 バツのつかない国、ベトナム

 

Thang Long Industrial Park

Deputy General Director

和智 聡氏

 

特徴が見えないのが特徴 中国移転の問合せが増加

 

1997年に設立された北部の老舗、タンロン工業団地。現在ではタンロンと第2タンロンの土地は完売しており、レンタル工場は第2で一部空いている程度。そして第3タンロンは第1期と第2期を販売中で、既に16社と契約。入居企業はほとんどが日系企業だ。

その歴史から入居企業を見ると、当初は二輪関係や電子部品関係、そしてプリンターなどのOA系へと広がり、近年では業種の特徴は見られないという。

「本当に業種のバリエーションが広がりましたし、企業規模も大手から中小まで様々。突出した特徴がなくなってきているのが近年の特徴です」

ただ、以前はEPEなど輸出型企業が多かったが、この5年は内需型が増えており、現在はおよそ輸出型が6割、内需型が4割。また、中国からの移転案件は確実に増えているものの、米中貿易戦争を意識した移転はまだ少なく、一方で視察や相談の数は多い。そのため、日系企業はまだ様子を見ているのではないかという。

「中国事業からの撤退は容易ではないので、ゆっくり縮小して、次の場所を考えたときに浮かぶのがベトナムということ。現在はまだ多くの皆さんが、情報収集をしているのだと思います」

その他には、韓国企業の進出が増加している。エンタメやサービスの分野と同様に、製造業でも「日本より一歩先」に行っているようだと語る。

裾野産業の成長が不十分 ものづくりの前段階を準備

変化を求めてもなかなか変化しない分野もある。裾野産業だ。素材産業や部品メーカーの進出は増えているがまだまだ足りず、日系を含めた外資系の裾野メーカーが出てきやすい環境を作るべきという。外資の大手製造業が多く来ているが、言わばピラミッドの頂点の進出。その下の1次、2次、3次サプライヤーが育たないとピラミッドが成立しなくなる。

「ベトナムの裾野産業は海外から持ってくるか、国内の製造業を徹底的に育成するかですが、どちらも不十分です。この3年で少しずつ成長していますが、まだまだです」

和智氏は顧客などに「ベトナムは何が良いのか?」と聞かれて、「悪いことがないところ」と答えている。人件費やインフラ整備などの項目で◯と☓を付けると☓が付かない。例えば、タイはインフラ環境は良くても人件費が高く、ミャンマーは人件費は安くてもインフラが未熟だが、ベトナムは悪いところがない。それは創業へのハードルが低いことを意味する。

「仮にあっても、我々が頑張ってに近いレベルまでには持ってこられる。そのために自前で変電所を建てたり、法改正などの情報をいち早く伝えています。お客様には本業であるものづくりに専念してほしい」

先ごろ第2タンロンの拡張工事が発表された。第3期となり、2022年から販売を開始する予定だ。


進出の背景に中国工場あり 顧客ニーズは「高品質」へ

 

DEEP C Industrial Zones

General Manager Japan

土屋博一氏

韓国系と中華系が増加中 視察数は昨年の2倍を見込む

ハイフォンの港湾エリアに3400haという広大な事業用地を持つディープシー工業団地。DEEP CハイフォンⅠ~ⅢとDEEP CクアンニンⅠ~Ⅱの5つの区画がある。入居企業はベトナムが40社程度と多く、日系、韓国系、中華系(中国、香港、台湾)が15社程度と並ぶ。

中でも韓国系と中華系、特に自動車関連企業が増加しているそうだ。これはVinfastが自動車工場を建てたことが大きく、韓国系と中華系のサプライヤーが増えている。1年少し前から視察や成約が増加しており、今年の売上も視察数と連動して伸びてきているそうだ。

「ディープシーは港に隣接しているので、欧米へのダイレクト船舶などが工場のすぐ近くに着き、コンテナは低コストで工場に輸送できます。また、液体貨物などのタンカーを横付けできる埠頭を運営しており、タンクローリーのコストと時間を省略できます」

顧客ニーズも変化している。共通しているのは水や電気などの品質向上。以前は断水や停電がないことが要望だったが、水の質やスチームの有無、電気では電気変動の変動値が少ないなどに変わった。設備や機械が精密になったせいか、品質重視のトレンドがあるそうだ。

「東京電力、関電工、大和ハウス工業、KDDIさんなど日系企業とのアライアンスを加速させて、日本の工業団地と同じ品質を目指しています。厳しい日本水準が実現できれば、他の国の企業さんも満足してくれるはずです」

視察の背後に中国工場 自前の発電設備を計画

米中貿易戦争の影響かは不明だが、視察に来て成約した企業には、中国に工場を持っているケースが多くなったという。また、3~4年前は視察に来た人の10~20%程度が中国に工場を持っていたが、この1~2年で50%程度に変わったそうだ。

「母数が小さいので一般論とは限りません。ただ、中国でハイフォンをPRするセミナーを始めたのですが、参加者の反響が良くて来年も実施する予定です」

進出企業には二極化が起こっているという。安価な人件費を求めて繊維工場のような労働集約型企業が進出する一方、先進国に似た自動化やIoTなどインダストリー4.0の設備を導入する自動車系や輸送機器系などの企業がある。

数年先には電力の質を安定させ、次は太陽光、ゴミ焼却、風力の再生可能エネルギーで自社の電力を作る計画だ。太陽光パネルは設置を開始し、風車は今年中に1号機が完成の予定。

「港が近いことを利用した取り組みも進めます。詳しくは言えませんが輸送関係のサービスで、湾岸のオペレーションを拡張する予定です」


次々埋まり「取り合い」も発生 移転が加速するレンタル工場

 BW Industrial Development JSC

Head of Japan Desk

齊藤 公氏

全国9ヶ所で工業団地を開発 契約率は目標の2倍に

 

レンタル工業団地の大手デベロッパーであるBWインダストリアル。元国営不動産会社のBecamex IDCが30%、アメリカの投資ファンドWarburg Pincusが70%を出資して設立された。ベトナム国内9ヶ所の工業団地を開発し、レンタル工場を建設中だ。新たな投資先も探しており、開発が決まる工業団地が今年中に2~3ヶ所増えると予想している。

Aerial view of the factory complex, part of Bau Bang Industrial Park, developed by BW Industrial Development JSC in Lai Hung Commune, Bau Bang District, Binh Duong Province, Vietnam on Monday, Aug. 6, 2019. Linh Pham for The Wall Street Journal.

北部はバクニン省のVSIP バクニンⅠ、VSIP バクニンⅡ、ハイズン省のVSIP ハイズン、ハイフォンのVSIP ハイフォン。南部はビンズン省のバウバン、ミーフック3、ミーフック4、VSIPⅡ、ドンナイ省のニョンチャック2。

このうち、北のVSIP バクニンⅠはほぼ全てが埋まった。VSIPハイズンは今年9月着工で来年4月に引渡し予定で、徐々に埋まり始めている。VSIP ハイフォンは今年8月着工で来年3月に引渡し予定で、第1期が80%ほど埋まっている。

南ではバウバンが第1期と第2期が完売、第3期は来年2月引渡し予定で、既に半分が予約で埋まった。ミーフック3は第1期と第2期が完売し、第3期は今年12月末に完成予定で半分が埋まった。引渡しまでにはすべて埋まると見ており、第4期は来年6月に完成予定だ。

これ以外の4つの工業団地は未着工だが、販売中の5工業団地はどこもハイスピードで入居が決まっている。

「当初は引渡し時に50%の契約が目標でしたが、現実には倍の100%が出ています。この一番の要因は米中貿易戦争と感じています」

同社の営業部門は日系、韓国系、中国・香港・台湾の中華系、欧米系を主としたインターナショナルの4つ。工業団地全体で入居企業が多いのは中華系で40%、インターナショナルが30%、日系と韓国系がそれぞれ15%となっている。

業種は北部と南部で異なり、北部は既に進出している自動車、電気など大手メーカーの1次、2次サプライヤー、南部は消費者向けの家具や靴、アパレルなどのメーカーが多い。

今年から変化した移転理由 各国企業の問合せが急増

ジャパンデスクを担当する齊藤氏の入社が昨年7月。この1年強で大きな変化があったという。中国からの生産シフトは昨年から見られたが、主な理由は人件費の上昇や環境規制の強化。それが今年に入って、米中貿易戦争が原因と見られる問合せが増えている。昨年は4つのデスクの合計の問合せが月に30件ほどだったが、今年の1~3月には40~50件となり、9月現在では100件以上という。

「日系もそうですが、海外初進出の企業からの問合せはほぼありません。タイ法人などからはあっても、ほぼすべてが中国に進出した外資系企業か中国にある中国企業からです。中国は手続き上簡単に撤退できないので、中国の工場は閉じずに、徐々にベトナムにシフトするのでしょう」

加えて、ベトナムの外資系企業からの引き合いもある。目的は中国での生産分をベトナムに移管するための工場拡張が多く、実質的には中国からの生産移転と言える。

問合せは昨年は北部が多くて6割ほどだったが、徐々に南部が増えて、現在は半々。工業団地の完成するペースが南部の方が少し早いので、「既にモノがある」、「早く入居できる」などが影響しているのかもしれない。

BWインダストリアルに企業が多く集まる理由を、新設の工業団地だからではないかと齊藤氏。例えば、南部のバウバン工業団地の第2期が完成したのが今年の4月。昨年はまだどこもなく、徐々に完成していく時期が米中貿易の悪化と重なっている。準備が短期間で済むレンタル工場の特性も大きな理由のはずだ。

「未着工の工業団地もありますが、国内9ヶ所で同時に開発を進めているレンタル工場はBWだけだと思います。選択肢の広さもお問合せの理由ではないでしょうか」

大型工場が多い欧州企業 決断が早い中華系企業

日系企業では小規模生産はレンタル工場、大規模ならば自社工場と考えることが多い。広くて3000㎡まではレンタル工場で良いが、4000㎡や5000㎡になると土地利用といった具合だ。そのため500~2000㎡のレンタル工場を使うことが多いが、中華系や欧米系は1万㎡、2万㎡を借りる企業も少なくないそうだ。

「ヨーロッパ系が顕著ですね。日系は長期で進出を考えますが、彼らは無理なら撤退することを視野に入れており、工場進出の捉え方が違うようです」

速いペースで入居企業が埋まっていくと、「取り合い」になることもある。中華系企業の決断スピードはかなり早いそうで、視察に来てから1週間で決める企業も。仮予約には1ヶ月分の家賃がデポジットとして必要だが、予め用意してあり、現金で支払う場合もあるという。仮に1㎡当たりの1ヶ月の賃料が3.5USDで、敷地が4800㎡とすれば、1万6800USDになる。

一方、日本の企業は課長クラスがまず視察に来て、日本で会議に上げて、稟議が通れば役員クラスが来るなどのプロセス。そのため、最初の視察から決断までに3ヶ月から半年かかるという。この結果、多くの道路に面している角の区画はアクセスが良いので人気だが、中華系か欧米系企業に取られてしまうそうだ。

「以前から中国からベトナムへの移転を考えていた企業は多く、米中貿易戦争でその決断が早まったこともあるでしょう。1年先を考えていたがすぐにでも、などです。この傾向は今後も続くと思います」


中国系と香港系企業が微増 内需向けベトナム企業が増加

 

Long Hau Corporation

Investment Promotion Manager

奥倉敏夫氏

韓国からの進出が旺盛 中国や香港はこれからか

南部ロンアン省にあるロンハウ工業団地。土地利用とレンタル工場を合わせて170社ほどが入居し、およそ50%がベトナム系、25%が日系、10%が韓国系で、他に欧米系や中華系などが入る。大手企業もあるが中小企業がメインで、最近では香港系、ヨーロッパ系、韓国系が多く来ているという。

「韓国系企業が多いのは、韓国人が多く住むホーチミン市7区のフーミーフン地域から近いためでしょう。近隣のKIZUNAレンタルサービス工場やヒエップフオック工業団地にも多くの韓国系企業が進出しています」

第1期と第2期の土地利用はほぼ埋まって現在はレンタル工場がメイン。第3期は造成中で、日本、韓国、ベトナムの企業が入居予定。今年中に第3期の第1フェーズの引渡しを目指し、入居状況を見ながら第2フェーズを開発する予定だ。

「米中貿易戦争の影響でしょうか。中国本土からでは深センの企業が入りました。ほかには香港系企業が少し増えています」

第2期内に昨年末、「T-4コンパウンド型レンタル工場」が完成した。A区画とB区画を合わせて9ユニットがあり、早々に埋まったが、入居するのは日本、韓国、ドイツなどの企業だ。また、ロンアン省で初となる6階建てのビル型レンタル工場が、今年中に完成予定。既に日系企業3社とMOUを結んでいる。こちらも人気で問合せが多いが、その中心は日本、韓国、ヨーロッパなどの企業だ。

「中国からの移転に関わらず、改めて工業団地、特にレンタル工場のニーズの強さを感じています」

内需狙いのベトナム企業 外資系は輸出型が中心

奥倉氏はロンハウ工業団地で5年ほど働いている。その間の周囲の変化は道路、住宅、商業エリアなどがかなり整備されて、小売店も充実し、各店舗が洗練されてきたこと。それに伴い住民が増加し、入居するベトナム企業も増えている。

特に各種設備、肥料、医薬品など自社製品の倉庫が目的の企業や、不動産開発に伴う建設資材や家具などを作る製造業が入居。力を付けてきたベトナム企業が、内需向けに事業を拡大している様子が見られるそうだ。

「内需市場に参入するベトナム企業は今後も増えると思います。ただ、ロンハウの中だけを見ると、日系を含めた外資系企業は輸出型で、内需向けが増えている気はしません」

ロンハウ工業団地がベトナム企業から選ばれる理由は、ローカル工業団地と比べて賃料は多少高いものの、外資系が多く入居している運営の安心感と、立地の良さと見る。

地元住民の増加で工業団地で働く人も増えたが、それを超える求人数のためか、ワーカーや事務職を集めるのに苦労している企業が多いそうだ。


海外からの進出製造業 傾向に大きな変化は感じず

LONG DUC INVESTMENT CO., LTD.

General Director

鎌田雅彦氏

入居企業はほぼすべて日系 近年は内需型企業が増加

双日、大和ハウス工業、神鋼環境ソリューションで88%を出資する、南部ドンナイ省のロンドウック工業団地。販売用地は完売しており、現在はレンタル工場への誘致がメインだ。ただ、第1区画は全て、第2区画はほぼ全てでレンタル工場への入居企業が決まっており、昨年7月に完成した第3区画にも多くの引合いがあるという人気ぶり。

入居するのはほとんどが日系企業で、販売用地とレンタル工場を合わせた合計60数社中で、日系以外は3社のみという。

「お客様から支持される理由は総合的なクオリティの高さだと思います。都市圏、港湾、将来の新空港へのアクセスの良さ、充実したインフラ、日系企業による日本人が対応する安心感などです」

入居企業で多いのは業種では金属加工で、企業規模なら中小企業。以前はEPEなど輸出型の製造業が多かったが、内需向けの企業が増えており、現在の割合は半々という。

視察に来るのも日本企業が中心で、コンスタントに週に1社、多いときは3社が来訪。入居企業やこうした視察に訪れる企業を通しても、企業の国籍、業種、規模などで特別な変化は感じないそうだ。

「米中貿易戦争の影響で中国からの移転が増えているなどの報道がありますが、以前からチャイナプラスワンなどでベトナムに進出する企業は多く、米中貿易戦争がトリガーになっている実感はありません」

第3区画から第4区画へ 工業団地のニーズは続く

土地利用がほぼ完売したこともあり、今後はレンタル工場により一層注力する。設備やインフラに対する顧客企業からの要望は特にないことから、現在の施設やサービスに満足していると感じている。

上記のように現在は第3区画を開発中だが、その次は第4区画を作る計画があり、第3区画の倍ほどの面積になりそうだという。時期はまだ決まっていないが、第3区画の今後の契約状況に合わせて動けるように、これから予定を考えるところだ。

「感じているのは内需向け企業の増加で、弊社の例ではダンボール製造や食品製造などのお客様です。この数年で増えてきましたし、第3区画、第4区画でも入居していただけるものと思います」

親会社の双日は、ベトナムにはまだまだ工業団地のニーズがあると考えている。現在も新しい工業団地用の土地を探しているところだ。