日本の外国人労働者需要は増加しているが、送り出し機関は労働者の確保に苦戦しており、日本からの要望に応えるために仲介業者に一人あたり2000~3000万VNDを支払って人材を確保している。
今年も残すところあと10日余りという中で、ホーチミン市ビンタン区に本社を置く送り出し機関のEstrala社は、今年の日本への労働者派遣人数が目標を達成できないと明らかにした。
「これは多くの同業者に共通する状況であり、結果を受け入れるしかありません」とEstrala社のグエン・テー・ダイ副社長は述べた。ダイ副社長によれば、複数の老舗大手送り出し機関はこれまで、地元の労働・傷病兵・社会局や雇用サービスセンターと協力して、人材を確保し日系企業へ紹介する責任を果たしてきた。この方法によって仲介コストが削減され、間接的に労働者の負担するコストが抑えられていた。
しかし、最近では仲介業者が人材を囲い込んでいるために雇用サービスセンターは労働者の確保が難しくなっている。現在、多くの新規設立送り出し機関が受注に応えるだけの労働者を確保するために高額な仲介手数料を支払っている。仲介業者は労働者を見つけると、主にこのような新規送り出し機関に紹介している。
「最終的に全てのコストは労働者の肩にのしかかってくるので、競争のために仲介手数料を上げ続けるわけにはいきません」とダイ副社長は話し、ルールに従って正しい手続きをしている企業ほど人材の確保が難しくなっていると指摘した。
Saigon Intergco社のズーン・ティ・トゥ・クック社長も同様の意見で、正規のライセンスを持つ送り出し機関が人材を確保できないでいる一方で、ライセンスを持たない仲介業者が大量の人材を抱え込んでいると述べた。このような業者が地方の労働者を抱え込んでしまっているため、送り出し機関は地方での人材確保に苦しんでいる。
「日本との契約を履行するために早急に労働者を確保する必要がある企業は、このような業者から一人あたり2000~3000万VNDを支払って人材を確保せざるを得なくなるでしょう」とクック社長は話す。
このような状況は労働・傷病兵・社会省のグエン・バー・ホアン副大臣も認識している。ホアン副大臣によれば、海外で働くベトナム人労働者は依然として増加しているが、個々の企業を見ると、特に業界を代表するような大手企業の場合は、人材が集められずに徐々に送り出し人数が減少している。
ホアン副大臣によれば、最近は労働力の輸出ライセンスを持たない違法な仲介業者が迅速かつ高給で日本へ派遣すると約束して人材を囲い込みながら、正規の送り出し機関に人材を転売している。これによって結果的に多くの労働者が負担増を強いられている。
日本は、長年にわたりベトナムにとって最大の労働力輸出市場だった。今年6月までに海外に派遣された労働者約7万人のうち、58%を日本が占めている。ベトナムは日本に技能実習生や労働者を派遣している15カ国の中で最多の派遣元となっている。現在、約52万人のベトナム人労働者が日本で働き、生活しており、10年間で8倍に増加している。ベトナム人労働者の日本での平均月収は1200~1500USDとされている。
グエン・バー・ホアン副大臣によれば、日本側の受入れ組合は、日本での労働者採用ニーズは非常に大きいと話している。日本側の受け入れ組合は労働者を確保するためにベトナムの送り出し機関を定期的に訪問しているが、日本へ派遣される労働者の確保が予定通り進んでいない。そのため、一部の日本企業は、フィリピン、マレーシア、インドネシアから労働者を確保する方向にシフトしている。
送り出し機関の日本語教育センターで働くファン・ビエット・ブーン所長は、現在、労働者の送り出し市場は違法仲介業者によって無秩序になっているだけでなく、様々な要因によって人材不足に陥っている。
ブーン所長によれば、日本では最近円安が急激に進んでおり、2022年~2023年の消費者物価指数も3%以上上昇している。一方で、日本では最低賃金の調整が制限されているため、日本で働く労働者の賃金はあまり上昇しておらず、長年にわたって1~3%の増加に留まってきた。
ブーン所長は、ベトナムは急速に発展していると指摘する。10年以上前なら日本に働きに行ってベトナムに送金する1500~2000万VNDは大きな金額だったが、今ではベトナムの物価が急速に上昇したため、それほど大きな金額とはみなされなくなった。以前なら、日本に3年働きに行けば、ベトナムに戻ってから土地を買って家を建てられたが、最近は、マンションをローンで購入することでさえ躊躇するほどだ。
「ベトナムへの送金額には以前ほどの価値がない一方で、コストは減っていないどころか上がっているのです」とブーン所長は話す。日本とベトナムが法規制によって手数料を引き下げても、送り出し機関はその分を労働者のコストに反映させず、仲介業者による人材確保の支払いに充てている。初期コストが大きく、VNDベースの給与が目減りし、家族への送金も多く出来ないのに借金返済が必要とあって、労働者は日本に興味を失い、別の国を探すようになっている。
これまでに多くの労働者と接してきたブーン所長は、多くの人が最初は日本で働くことを選ぶと話す。しかし、その後、色々と考えた結果、彼らの多くは長期的な発展を期待してヨーロッパを選ぶようになる。「日本市場は他国と労働力を取り合うことになるでしょう」とブーン所長は話す。
ブーン所長によれば、労働力の供給状況は時期によって異なり、労働力が豊富な時期もある。例えば高校卒業時期だ。多くの生徒が海外での出稼ぎを希望しており、卒業するとすぐに送り出し機関に登録しようとする。テト後の徴兵終了時期も人材を集めやすい。企業はこれらの時期を利用して、自治体と協力して人材を確保することができる。
一方でグエン・テー・ダイ副社長は、当局が送り出し機関の資格を持たない仲介センターが人材を”転売”するために労働者を集めている状況を是正する必要があると指摘する。このような状況の是正は、労働者の費用負担減につながるだけでなく、日本という伝統的な労働輸出市場を守ることにもつながる。また、そうなれば送り出し期間も仲介業者に多額の費用をかけるのではなく、高い給与、技術指導、語学研修によって労働者を集めることができるようになる。
出典:2024/12/20 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載