これまで社会資本の導入が最も困難とされてきた都市交通インフラ分野において、ホーチミン市のメトロ(都市鉄道)事業に対し、大手民間企業からの投資提案が相次いでいる。これは都市鉄道事業が新たな魅力的投資先となっていることを示している。
相次ぐメトロ建設への投資提案
サン・グループはホーチミン市人民委員会に対し、サイゴン川沿いに幅8~10車線、全長約40kmの幹線道路と、並行してメトロまたはトラム路線の建設を提案した。この案は、旧クチ県からカンザー県までの約78kmに及ぶ以前の提案を縮小したものであり、以前の案ではタイニン省までを結ぶ約100kmの軽鉄道も含まれていた。
また、THACO(チューンハイグループ)は、公共投資によって年内にも着工予定のメトロ2号線(ベンタン~タムルオン区間)への参入を希望し、さらにこの路線をトゥーティエム都市区およびロンタイン国際空港まで延伸する都市鉄道計画にも投資を提案している。総投資額は54億ドルと見積もられる。
そのほか、ダイズン、CC1、ホアファットの3社によるコンソーシアム(DCHコンソーシアム)は、メトロ2号線、ベンタン~ロンタイン線、ビンズンニューシティ~スオイティエン線の3つのプロジェクトに対しEPC(設計・施工・設備供給)形式での参画を希望している。
また、ソビコ・グループもメトロ4号線(ドンタイン~ヒエップフック)の建設提案を提出済みで、投資研究のための法人設立と外国人専門家チームによる早期の事業化を表明している。
これにより、ビングループが総額40億ドルの市内中心部とカンザーを結ぶ都市鉄道プロジェクトを提案したことを皮切りに、現在までに民間大手5社がホーチミン市に対して5路線の都市鉄道投資を正式に提案していることになる。
法整備が後押し、民間参入の障壁が低下
ベトドゥック大学交通研究センターのブー・アイン・トゥアン准教授によれば、都市鉄道は初期投資が極めて大きく、工期も長期にわたる上、運営開始初期には乗客数が少なく収益化が難しいという課題がある。このため、これまで民間企業は参入に消極的だった。
また、タイの高架鉄道プロジェクトのように、PPP(官民パートナーシップ)による社会化が失敗し、最終的に政府が巨額を投じて買い戻す事例なども二の足を踏む原因となっていた。
しかし、現在は中央政府・地方自治体ともに都市鉄道を「国の資産」「都市発展の軸」と捉えており、積極的な制度整備と支援が進んでいる。特に、行政再編によりホーチミン市の範囲が拡大したことで、地域間の移動需要が急増し、都市鉄道への期待が高まっていることが、民間の投資意欲を高めているようだ。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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