世界経済の不透明感の中でも堅調
世界経済が不安定な状況にある中でも、ベトナムの工業不動産市場は、コスト面での優位性、エネルギー価格の競争力、そしてグリーン生産への移行を背景に、外国直接投資(FDI)を引き付ける有望な投資先として存在感を示している。
専門家によると、新たな成長サイクルにおいては「低コスト」だけが決定要因ではなくなっている。現在のFDI投資家は、ESG基準、法制度の透明性、グリーンインフラといった要素を重視し、ベトナム進出を判断しているという。
南部工業不動産、市場稼働率は高水準
サヴィルズ・ベトナムの工業不動産部門責任者であるジョン・キャンベル氏は、ベトナムの工業不動産が持つ中核的な競争力は依然として強固であると指摘する。
同氏によれば、2025年時点のベトナムにおける製造業労働者の平均賃金は月額約350米ドルで、中国やタイと比べて大幅に低い水準にある。また、生産用電力の価格も1kWhあたり0.076米ドルと、 中国(0.112米ドル)やフィリピン(0.150米ドル)を下回っている。
キャンベル氏は「ベトナムの工業不動産市場は、面積拡大だけに依存する段階から、プロジェクトの質、投資規模、付加価値を重視する新たな発展段階へ移行しており、これは長期的な構造変化である」と述べている。
大規模・長期投資へのシフトが鮮明に
サヴィルズ・ベトナムの報告書によると、2025年最初の10カ月間における電子分野の新規FDI案件では、プロジェクト数の62%がレンタル工場型(レディビルト工場)である一方、投資金額ベースでは68%が工業用地の賃借案件に集中している。
これは、大手メーカーがベトナムで長期かつ大規模な生産拠点を構築する傾向が強まっていることを示している。
また、南部地域の工業団地用地の稼働率は90%に達し、平均賃料は1㎡あたり191USD/賃貸期間となっている。レンタル工場分野では稼働率が92%に達し、平均賃料は月額4.4USD/㎡と高水準を維持している。
グリーン工業が投資資金の流れを左右
サヴィルズ・ベトナムは、2026年に南部の経済圏で環状道路、高速道路、空港、港湾といったインフラが本格稼働することで、地域間の接続性が大きく向上すると予測している。
同社によれば、新たな成長局面では、インフラ整備の進捗、法制度の透明性、ESG基準、持続可能性への対応力が、企業の進出・再編判断における重要な指標になりつつあるという。
キャンベル氏は「コスト優位に加え、交通インフラ、明確な法的枠組み、国際基準への対応力が、高品質なFDIを引き付け、定着させる決定的要因になっている」と語る。
FDI世代交代、工業団地も「質重視」へ
プロデジ・ロンアンのチューン・カック・グエン・ミン副社長は、現在の工業不動産開発は、政府方針と世界的潮流に沿ったグリーン型・ハイテク型・エコ型が主流であると述べた。
同氏によると、多くのFDI企業は既製工場だけでなく、迅速な法的手続き支援、社会インフラとの連携、グリーン金融へのアクセス、再生可能エネルギーの活用、さらには工業共生による資源・廃棄物・エネルギー最適化にも強い関心を寄せている。
このような投資家動向を踏まえ、プロデジでは工業団地を「量」ではなく「質」で発展させる戦略を採用し、ESG、排出削減、運営効率を重視する新世代FDIの誘致を進めているという。
「無形資産」もFDI誘致の鍵に
JLLベトナムのレ・ティ・フエン・チャン社長は、世界の製造業はネットゼロを約束しており、グリーンかつスマートな工業団地のみがグローバル・サプライチェーンに適合すると指摘する。
同氏は、高品質なFDIを呼び込むためには、不動産そのものだけでなく、労働力の質、生産性、支援サービス、透明な投資環境といった無形の価値にも注力する必要があると強調している。
本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN



















