南部ロンアン省のKIZUNAレンタルサービス工場が9月28日、3回目となる「KIZUNAサプライヤーデー2018」を開催した。入居企業とサプライヤーをつなげるマッチングイベントで、入居企業24社が出展し、約60社180名が来場した。
出会いを求めて製造業集合
KIZUNAサプライヤーデー2018が行われたのはホーチミン市7区にあるIPC Tower。セミナールームでの開会式では、司会者がベトナム語と英語で話し、日本語と韓国語が正面のプロジェクターで表示。日系と韓国系の入居企業が多い、同工業団地ならではの配慮だ。
今回の趣旨が紹介された後はNCネットワークのセミナーがあり、その後は皆で隣の会場に移ってビジネスマッチングが始まった。入居企業がブースで商品や資料を並べ、来場者が興味のあるブースを訪ねるスタイルだ。出展企業は日系が多く、来場者はベトナム人の他に日本人や韓国人、欧米人の姿も見られた。
KIZUNAレンタルサービス工場には、2012年設立のKIZUNA1から今年4月に完成したKIZUNA3まで3つがあり、比較的若い工業団地と呼べる。そのため出展企業もこの数年の進出が多く、他社とのネットワークをより求めているように感じた。出展企業の何社かに話を聞いた。
日系企業が数多く出展
日系企業のEMUDEN VIETNAMは2017年の設立。ピンジャックやコネクタ、端子台などの電子機器機構部品メーカーで、日本本社からの部品をノックダウン生産している。出展の目的は2つあり、1つは自社商品のアピール、もう一つは台紙や製品をパックするビニール袋の調達だ。
「日本からの輸入では関税もあって調達コストが高くなるため、現地調達を考えています。ただ、RoHSのデータが必要となるので、品質が限定されます」
そのためローカル企業からでは調達が難しく、日系企業から始めて、幅広く商談がしたいとのことだった。
同じく日系企業のYUMOTO VIETNAMは製造装置や産業用部品の切削加工を行っており、今年完成したKIZUNA3の入居第1号企業。出展理由は主に材料の調達で、品目は段ボール箱、粘着テープ、段ボール箱への印刷など。
「おかげさまで忙しく、2交代制にできないかと考えている最中です」と進出早々事業が好調のようで、調達にも力を入れたいようだった。
日系でプラスチック成型のTOKAI PLASTIC VIETNAMは現地調達と自社PRが目的。最終的に15社程度と名刺交換したそうで、サプライヤーデーは情報収集とネットワーク作りに役立つと語る。
「色々な業界の方と一気に話ができるのがいいですね。今後の交流にもつながっていくと思います」
入居企業ではないが、文具等のカタログ販売でお馴染みのNhanh Nhanhは、コンパクトになった新しい冊子と取扱い商品を展示。Webサイトなどを活用することが多い製造業支援のFACT-LINKも出展し、運営しているECサイトのFACT-DEPOTをアピールしていた。両社とも製造業関係者に販路を広げたいようだった。
目的は自社商品のアピール
ユニークな企業も出展。HNN VIETNAMは、ベトナムの若者たちが集まって立ち上げたベンチャー企業だ。「Revo Coffee」というブランドでフィルター付きのコーヒーカップやコーヒー豆、これらをセットにしたギフト商品を販売している。鮮やかな色彩と高級感のあるデザインのカップ、お洒落なパッケージは、ベトナム製とは思えないほど(?)センスがいい。
目的は調達よりもむしろギフト商品の販売で、カップの蓋などに文字を入れられるという。企業が社名を入れて、自社の従業員や社外の取引先に贈るような、規模のある受注を目指していた。
「私たちのお客様はベトナム人が多いので、外国人にアピールしたくて来ました。サプライヤーだけでなく同じKIZUNAのメンバー(入居企業)にもぜひと思っています」
空気圧機器、流体制御機器などを販売する日系企業のCKD VIETNAM ENGINEERINGは、来場者もそうだが、KIZUNAの入居企業にもっと自社製品を知ってもらいたいと出展した。製品を展示すると同時に、何種類ものパンフレットを用意していた。
KIZUNAでは年に何度か入居企業同士の交流会が催されているが、工業団地は1~3まであり、企業同士が日常的に接する機会は少ない。来場者はもちろんのこと、「同じ入居仲間へのPR」を考えている企業が意外に多かった。
調達よりも販売を重視した企業は他にもあり、例えばビニール袋を製造するNAM THAI SONは、日本向けに数多くの種類を輸出している。例えば、家庭で使うごみ収集袋、100円ショップのレジ袋、ショップのロゴ入り袋などで、約60種類を生産しているという。目にしたことのあるものばかりで、、日本が懐かしくなった。
「日系と韓国系の来場者が多いと聞いて、参加を決めました。どれも品質には自信があります」
DONGTAMは工業用の移動式集塵機を製造するベトナムメーカー。装置自体が大きいので実物は展示しておらず、パンフレットなど資料を豊富に揃えて、ポスターも展示。日系企業にも納入実績があるようで、パンフレットは日本語版も用意していた。
「日系企業が多いと聞いて出展しました。弊社の商品をご紹介したいためで、今回は調達が目的ではありません」
食品や服飾など多彩な業種
食品関係メーカーも出展していた。和菓子の製造と販売をしているGo Go Entertainmentは、餅菓子や饅頭、どら焼きなどの商品展示と試食会を実施。商品はで20種類ほどあるそうで、いくつか試食するとどれも生地が柔らかく、中の餡も甘くて、日本製と言われてもわからないほどの出来栄えだ。目的は原料の調達で、生地を作る餅粉の他、トッピングのクリームや粉砂糖などを求めていた。
「これから大きく売っていきたいので、調達はもちろんですが、来場者の方が食べて、気に入ってもらえればと思います」
現在は日系を含めた小売りチェーン店と商談を進めており、手ごたえをつかんでいるそうだ。
食品メーカーではラーメン店「田所商店」を展開するトライ・インターナショナルの現地法人MISOYA VIETNAMが生製麺など加工食品を展示する一方で、干し魚やシーフードなどの現地調達を希望。真空パックされたキムチを取り扱う韓国系のLEE & KIMは、唐辛子、パウダー、甘味料などを調達したいという。
食品以外でも、VINH PHATは服などアパレル製品に付けるタグ用の紐、タグファスナーを製造しているメーカー。ブースには様々な素材や色、デザインのタグファスナーが展示されていた。これらの素材日本から輸入しているが、ベトナムにいいサプライヤーがいれば商談したいと参加を決めた。
「原材料以外にも、商品を入れるパッケージのサプライヤーさんがいれば、こちらも相談したいと思っています」
VIET METALは金属製の機械部品メーカー。現在の顧客はヨーロッパが多いので、日本などに広げたいとのこと。また、T.L.S SERVICE AND TRADINGはインクメーカーで、こちらも日系企業にインクのPRをしたいと意気込んでいた。
主催者に聞く開催の経緯
今回出展したのは食品・飲料、プラスチック、梱包・ラベル、金属、縫製、精密機器などの業種で、入居企業の要望に合わせてサプライヤーに声をかけたという。日系企業の窓口ともなっているKIZUNA JVのSales Director、白川誠子氏はこう語る。
「まずは入居企業様から売りたいもの、買いたいもののニーズリストを出していただき、それをまとめて、NGOと協力してサプライヤーを探しました」
今回のサプライヤーデーで去年に続いて3回目であり、初回は入居企業から「サプライヤーとつながるだけでなく、同じ入居企業と交流できてよかった」という声が多かったという。サプライヤーデーの目的は調達先探しだが、入居企業はほぼ中小企業なので、大手のような情報量やネットワークは必ずしもない。同じ製造業と知り合う機会という意味でも、参加者は満足していたようだ。
また、KIZUNA JVの副社長であるTran Duy Vu氏は、サプライヤーデーを振り返って「予想以上に多くの人が集まった」と語った。前回は製造業関連のサービス系企業も含めたのだが、今回は製造業に絞って広報したとのこと。来場者が多いばかりでも、顧客が満足する質が伴わなければ意味がないという判断だ。
「アンケートなどから今回の結果をフィードバックさせて、次回以降にどうするかを決めます。来年再開するかもしれないし、新しい形で進める可能性もあります」
工業団地が主催するサプライヤーデーでは、ロンハウ工業団地でも昨年11月に第2回目が開催され、好評のうちに終了している。入居企業と外部の製造業をつなげる試みは、顧客満足度を上げるだけでなく、工業団地のアピールにもなる。
参加者に聞くと材料の調達だけでなく、ネットワーク作りや商品アピールなど交流の場ととらえている人が多かった。名前の「サプライヤー」デーという趣旨だけでなく、今後は全方位的な「製造業交流会」に発展していくのかもしれない。