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ベトナムビジネス特集Vol106|
ベトナム・トレンド 2019年!

動きが激しいベトナムの流行。経済成長が続く中でベトナム人の関心は多様化し、それをつかめばビジネスの勝機となる。最新情報と日々接している市場調査会社が、今年のトレンドを語る。

INTAGE VIETNAM LLC
Managing Director 根岸正実氏

トレンドヒッターは
若い高収入オフィスワーカー

 グローバル展開する調査会社、インテージグループのインテージベトナム。全国に1000人以上いる専属のフィールドワーカー(調査スタッフ)による丁寧な調査が強みだ。
 Managing Directorの根岸正実氏は、「10代のトレンドは驚かせてくれるが消費力が弱い」と語る。
「消費力のある20~30代を見ることが重要。特にハノイやホーチミン市に住む、世帯年収10万円以上のオフィスワーカー。彼女・彼たちをトレンドヒッターとしてチェックしています」
 ベトナムで感じているのはライフスタイル多様化の兆候だ。ただ、現在はクラスタ(タイプ・グループ)数がまだまだ少ない。例えば自動車ユーザーなら、日本では8クラスタくらいに分かれるが、ベトナムでは「外観重視」や「コスト重視」といった2~3種類のみ。だから、現在はミニクーパーやアルファロメオなどが売れない市場。今後、クラスタ数は増える(細分化する)だろうが、今は「その新たなクラスタの価値観を求め始めた初期の状態」という。

電子決算でE-Wallet
広がるレジャーやエコライフ

 今年のトレンドを4つ挙げてもらった。その1つめはキャッシュレス(電子決済)。ベトナムは現金社会であり、同社の調査でも91%の人が、直近6ヶ月に現金でオンラインショッピングの支払いをしている。しかし、今後の6ヶ月において現金支払いしたいというスコアは75%と減少しており、逆にE-Wallet、ビザとマスター(クレジットカード)、銀行のモバイルバンキングが上昇している。
「中でもE-Walletが伸びています。利用者が多いのはハノイの男性で、全体平均の2倍。コンパクトシティでない大都市で、デジタル志向の男性がいち早く使っている」
 E-Walletには現金の盗難のリスクがないほか、クレジットカードのような面倒な審査もなく、使うほどポイントが溜まり、入会キャンペーンなどで特典も付く。ダントツの人気はMomoで、同社の調査ではシェア8割という。


 こうした電子決済はオンラインショッピングで広がっているが、ベトナムに多いパパママショップなどの伝統流通では変わらず現金。ただ、この流通を使うのは40代以上が多く、若者はE-Wallet等の対応機器を置き始めているコンビニなど近代流通に移りつつある。また、ベトナムにはATMが少ないため、キャッシュレス社会へ潜在力はあると根岸氏は語る。
 2つめはプラスワンスタイルとしての、「安価で楽しめるレジャー・ファッション」。中でも2018年から急に流行し始めたのが、ダラットやサパなど地方旅行でのホームステイだ。ただし一般家庭での滞在ではなく、普通の民家などを若者向けにお洒落に改装して、「家にいるようにくつろげる」形に発展させたスタイル。ドミトリーも含まれるが、バックパッカーの安宿ではない。それではプラスワンスタイルにならないからだ。
「他のベトナム人や外国人とコミュニケーションを取りたい、新しい体験をしたいのです。価格はホテルより安くて1泊10~100USDほどですから、そこも魅力なのでしょう」
 3つめは「グリーン(エコ)ライフ」。プラスチックゴミが世界各地、ベトナムでも社会問題となっている。ベトナムでもストローを廃止して空芯菜や葦の茎を使用するような、意識の高いレストランやカフェが増えてきた。こうした店を積極的に利用したり、「マイストロー」を持ち歩いたり、「10日間プラスチックを使わない生活にチャレンジ!」とSNSに上げる若者が、20代中心に増えているそうだ。社会貢献活動においては「植樹」などへの反応は鈍く、直接「人」がうれしく感じること、「自分」ができることを求めている。
「自分と関係ないものには興味は薄く、先進国のライフスタイルを通して、他とは違う成熟した大人を意識したいのだと思います。今年も引き続きこうした若者が増えると思いますし、その流れでオーガニック食品などが売れるかもしれません」

カッコよくありたい男たち
10代から新ストリートフードも

 4つめは根岸氏の個人的意見とのことで、まずは女性のトレンドから。今年はベリーショートヘアの流行が来そうだという。昨年の「ミス・ユニバース2018」でベトナム過去最高のトップ5となった、ヘン・ニーさんの影響が大きいと見る。少数民族出身の彼女は黒髪のベリーショートで、堂々とした発言と態度はベトナムでも大いに共感を呼んだ。
「個性が強調された、これまでにないベトナム代表です。彼女の成功に感激している人も多い。現代の新たな女性像となる可能性もあります」
 5つめは男性のトレンドで、ジェット型ヘルメットとクラフトビール。大型バイクのライダーが増えるなど、バイクを単なる交通手段ではなくファッションの一つと考える男性が増加しており、ヘルメットもその一つ。以前のキャップ型ではなく、顎の両サイドまで隠れるジェット型が好まれ、お洒落なヘルメットショップも登場しているそうだ。
 もう一つは、今でも人気の高いクラフトビールの拡大。「モッ・ハイ・バー・ヨー」でガンガン飲むのではなく、インスタ映えするファッショナブルな空間で、静かに飲む。
「どちらも『カッコよくありたい』という気持ちが原点。こちらも一般の人とは異なる、成熟した大人への意識ですね」
 最後に10代のトレンドの例も挙げてもらった。それはドリンクのカップの上に、幅が広い料理の容器を乗せた、2イン1の「2段容器」だ(写真)。料理カップの上にストローを出して、下部のドリンクが直接飲めるようになっている。ちょっと、意味がわからない……。


「大人にはわかるはずがない、が彼らのトレンドの根っこです(笑)。ただ、現在は見栄えがイマイチ。コンビニなどが商品化してインスタ映えすれば、新しいストリートフードとして広がるかもしれませんよ」

B&Company Vietnam Co., Ltd.
General Director 太田薫正氏

マッチングサービスが幅広く
背景には所得差の拡大も

 訪問・街頭での対面調査やアンケート調査など幅広い手法を持つ中、得意とするグループインタビューの依頼が増加中というB&Company Vietnam。General Directorの太田薫正氏は、2019年のトレンドを挙げた。
 まず、2016年くらいから増え続けるシェアリング、マッチングサービス。Grab、Foody、Airbnbなどで、今年はお手伝いの家事代行サービス「JupViec」など、多彩な広がりが見込まれると語る。
「理由は中間層以上の利用側と、低所得者層を中心としたサービス提供側の、双方のニーズ増です。この背景には所得差の拡大があると考えています」
 同社では世帯月収で1500万VND(約650USD)以上を高所得者層、500万VND(約215USD)以下を低所得者層、その間の1000万VND(約430USD)前後を中間層としている。ベトナム統計総局のデータでは、2010年から2016年にかけて1人当たり平均月収は中間層で約130%増加し、低所得者層では110%程度の増加。低所得者層は中間層の伸びに追いついておらず、また、消費額の格差は所得以上に拡大している。つまり、利用側は便利さを求め、サービス提供側は所得を増やしたいのだ。
 ほとんどの日系企業は中間層以上がビジネスの対象で、低所得者層にはリーチしてない。スーパーなどの近代流通の利用が多く、ベトナムで多い雑貨屋や市場など伝統流通へアクセスが難しい点も理由だろう。
「ただ、IT企業と組んで伝統流通のマーケティングデータを採ったり、販路に乗せるなども可能だと思います。低所得層というよりオールベトナムを対象とするわけです。各所得層を上から下までつなげて人材を提供する、マッチングサービスもできればいいですね」

世界と同時に普及する
モバイル決済の可能性

 2つめは、世界で同時に起こっているトレンドの流行。主にIT系のAI、ブロックチェーン、仮想通貨などのサービスだ。近年のベトナムではベンチャーが盛んで、大手IT企業で働いた後に起業するなど人材の層が厚くなっているという。中でも世界と同レベルで進むのがモバイル決済だ。
「日本でも話題ですが、SuicaやEdy、銀行振込が一般化した日本と異なり、ベトナムでは銀行口座の所有者が成人の50%に達しておらず、一方で携帯電話はほぼ100%の普及率で、過半がスマホに移行してきています。モバイル決済を使う人は増えるでしょう」
 ベトナムのモバイル決済はMomoが大手で、中小企業も数多く参入しているが、ベトナム企業ならではの優位性があるという。昨年、中国で2強のAlipayとWeChat Payのベトナムでのモバイル決済を、ベトナム国家銀行が非合法認定した。
「外資系企業には門戸を厳しくする可能性があります。Momoはゴールドマン・サックスなどが出資していますが、出資額は全体の半分以下。この分野で外資の席巻はないと思いますし、ベトナム企業とうまく組めば日系企業も参入できるでしょう」
 3つめは不動産。価格も供給数も上昇を続ける不動産業界で、中間層に向けたコンドミニアムが増えているという。高所得者に多い投資用ではなく住居用で、500~800万円がメイン。中間層でも中央より少し下の層を狙った物件で、ハノイやホーチミン市であれば郊外にはなるが田舎とも呼べない地域に開発したり、1戸当たりの面積を狭くするなどで価格を抑えている。こうした中間層以下の市場が広がっていくという。
 最近は普及し始めた住宅ローンを組む人が多く、銀行だけでなくノンバンクを含めてサービスが増えている。
「住宅ローンは最高10年、金利は高くて変動金利のみ、高収入のサラリーマン以外は審査に通りにくいなどから、借りるハードルがまだ高い。それでも住宅ローン市場は広がると思います」

水や空気、住環境を重視
数年後には介護問題も

 4つめは出産スタイルの変化だ。ベトナムでは農村部では自然分娩、都市部では帝王切開が主流。都市部には病院が多いこともあるだろうが、母体にも子どもにも安全と考える人もいて、また出産日を選べるなどのメリットを感じる人は多い。医師からの指示がなくとも帝王切開を選ぶ人が多かった。
 しかし、ベトナム人の環境や自然への意識が強くなる中、自然分娩への回帰が起こっているそうだ。これをライフスタイル全般の意識の高まりという大きなトレンドとしてとらえることができ、「住環境」についてもより品質が重視されるようになりつつある。
「特に水と空気ですね。日本人は『外国だから』とある程度以上は気にしませんが、ベトナム人は気にし始めています」
 同社の直近の調査でも、住宅の屋内環境で重視するのはセキュリティに次いで水が2位で、臭い、空気と続く。自身の自宅の自己評価では、評価が高い順にセキュリティ、日差し、水、空気と続くが、自宅よりも居住都市全体の空気のほうが品質が悪いとしている。浄水器や空気清浄機などの販売はまだ少ないが、こうした環境対応機器は今年から大きく伸びると見ている。


 最後は2019年ではなく、もう少し先のトレンド。介護ビジネスだ。高齢者向けの老人ホームや介護施設はベトナムにほとんどなく、しかし徐々に始まる高齢化の中で必要になってくる。従来は家庭内でケアするのが「常識」でも、状況が変わってくるからだ。
「核家族化の進行、世帯人数の減少、一軒家でなくアパート等の住居による部屋数の減少、仕事や生活の忙しさなどから、家族での介護が難しくなるでしょう」
 そこでの働き手は用意できるのか。太田氏は、ベトナムでは看護師と介護士は分かれた資格ではないので、看護師がカバーするなど人材がいると語る。また、労働力の受け皿として、上記の家事代行サービスのお手伝いのような、派遣介護も考えられるという。
「介護はまだ先の話。ただ、5年後には施設がかなり増え、トレンドになると思います」

Asia Plus Inc.
CEO 黒川賢吾氏

世帯月収1000USD以上の
富裕層がトレンドを動かす

 オンライン調査でベトナムの「今の動き」をリサーチするAsia Plus。その回答で同社の市場調査を支える会員は50万人を超え、特に若い世代のトレンドを追い続けている。創業者でありCEOの黒川賢吾氏は、2018年が一番変化を感じた年だったと振り返る。
「とにかく皆が前年よりもお金を使うようになりました。見た目でわかるのはその格好です。ベトナム人はおしゃれになったと思いませんか?」
 黒川氏はどこの国に行っても、その国の人の腕時計を見るという。ベトナムの若者は以前は腕時計をせず、必要も感じていなかったのだろうが、今では高価ではないにしろ普通に身に付けているという。
 その背景にあるのが所得の増加だ。ただし、トレンドを動かす主役は中間層ではなく、世帯月収1000USD以上の富裕層だという。世帯月収が500USD台の中間層では生活するのが精一杯で、富裕層が生活費以外に使う「余剰金」が流行を作るそうだ。
「世帯月収1000USD以上とは、夫がサラリーマンで月収500USD、妻が会計士で月収500USDの夫婦などです。私がベトナムに来た4年前なら彼らは人口の10~15%だったと思いますが、今では20%、ホーチミン市なら25%かもしれません」

「趣味」や「便利」に投資
変わりゆく生活意識

 黒川氏が考える2019年のトレンドは、昨年から引き続いて拡大傾向にあるものだ。4つを挙げてもらった。1つめは「趣味や余暇への投資」。ベトナム人の週末や余暇の過ごし方と言えば、主流はカフェと映画。しかし今は趣味を持つ人が増えているという。
 女性ならダントツで「ヨガ」。近年の健康意識の高まりでスポーツジムに通ったり、スポーツをする人が増えており、ヨガ以外にもエクセサイズ系の趣味は増えるだろうと見ている。


 もう一つは旅行で、国内旅行やタイなど近隣国への海外旅行だ。若者の間では個人旅行もブームになり始めており、ちょっと変わったスタイルも見受けられる。
「Facebookなどで知り合った人々と一緒に旅行に出かけるための、コミュニティなどが誕生しています。また、最近はカメラを持った人を街で見かけます。スマホにはできないカメラの撮影を楽しんでいるのでしょう」
 2つめに挙げるキーワードは「時短」だ。ベトナム人には「コストを抑えるためには労を惜しまない」面もあるが、多少お金をかけても便利で、楽で、スピーディなサービスが人気。代表例がデリバリーであり、中でも利用者が急増しているのがフードデリバリーだ。Asia Plusの昨年6月の調査で、66%が利用している。
「少しのお金で、仮に雨でも、好きな料理を届けてくれるサービスは今後もユーザーを増やすでしょう。加えて流行りつつあるのは、各種の代行サービスです」
 例えば、アプリで頼める買い物代行サービスはコンシェルジュサービスなどとも呼ばれ、シンガポール発の「honestbee」などがある。コンシェルジュが各店を回って必要な品物を購入し、届けてくれるシステムだ。また、ベトナムでは家事代行サービスの「bTaskee」が伸びている。こちらもアプリから掃除、洗濯、エアコン清掃などを依頼できる。
「配車アプリのUberやGrabの存在が大きく、ベトナムに『注文する行為』を定着させたと思います。また、2018年はオンラインショッピングでのモバイル利用ががパソコン利用を逆転した年です。モバイルからの『注文』は大きく進むでしょう」

消費の手段「決済」が変わる
所得増へのモチベーションも

 3つめは「ブランド」。ただ、イタリア製の高級バッグをいくつも購入するような、先進国的なブランド信仰ではなく、多少高くても品質を担保するという考え方だ。ファッションならZARAやH&M、食ならオーガニック食品などで、「このブランドなら品質は大丈夫」や「この店で買えば間違いない」といった安心志向。同社の調査ではオーガニック食品に興味を持つ人が88%と高く、「興味がない」は0人だった。
 そして4つめが上記3つを支える「決済」だ。ベトナムでは現金決済が未だに主流で、同社の調査でもオンラインショッピングの決済は80%が現金。しかもこれは、大都市に住む若者層への調査結果だ。しかし今年は、QRコード決済と与信が広がると見ている。
「電子決済の中でも、『Momo』や『Zalo Pay』などのモバイル決済アプリを使った、簡便なQRコード決済が広がると思います。実際に参入企業が急増し、キャンペーンなども行われています」


 また、ここでの与信とは借入の許可や借入限度額といった意味で、黒川氏は特にリアルタイムのモバイル与信を挙げる。背景には消費者金融とその利用者の増加もありそうだ。
「周りが買っているから買いたくなってしまう。そして、お金がなくなったときの借りる先が家族や親戚。それが消費者金融に移りつつあるのではなく、様々な企業が与信サービスの機会を伺っている段階です」
 このように消費が活発になることで、今後は「お金を稼ぐモチベーション」も高まると考える。近年は起業などで成功する若者が増え、注目されることも多い。また、全体の給与が上がり続ける中で、優秀な営業マンの給与が課長クラスを超えるなども出てくる。
「自分も頑張れば彼のようになれる、お金を稼げるとわかってくれば、後に続きたいと思う人が出てくるのは当然でしょう。オンラインショッピングでは、現在は画一化された情報が発信されていますが、今後はよりデータを活用した個人向け情報への変化が期待されます」