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ベトナムビジネス特集Vol132
参入が止まらない! コスメ市場の魅惑

収入アップや健康意識の向上などで急伸を続けるベトナムの化粧品市場。シェア9割を占めると言われる外資系企業の中で日系企業も奮闘。オンライン販売も拡大中だ。その実際を、ビューティーショップ、化粧品メーカー、越境ECの3視点から探る。

 Matsumoto Kiyoshi Vietnam        LOTUS FOOD GROUP  
   CEO  宮岡弘樹氏       CEO & President Le Van May氏

タイ、台湾に続いて3ヶ国目
スキンケア商品が充実

 2020年10月、ドラッグストア「マツモトキヨシ」のベトナム1号店が、ホーチミン市1区のVincom Center Dong Khoi内にオープンした。日本と同じ華やかな売場に、化粧品、健康食品、衛生用品、日用品などが並び、若い女性客でいっぱいだ。

 運営するのは同年7月に設立されたマツモトキヨシベトナムで、日本のマツモトキヨシホールディングスと、地場企業で数多くの著名な日系企業を誘致してきたロータス・フード・グループが出資。ホーチミン市を中心に、今後5年で10~15店舗を展開する計画だ。

「アジアの国の方々はインバウンドでマツモトキヨシ(マツキヨ)を良く利用されます。ベトナムの方はご購入金額の単価が高く、美容と健康の意識も高まっており、将来の有望市場としてタイ、台湾に続いて進出しました」(宮岡氏)

「ベトナムの女性をさらに美しくするために、日本旅行に行くと必ず立ち寄るマツキヨをベトナムで紹介したかった。私もポイントカードを持っているんですよ(笑)」(May氏)

 ターゲット層は20代前半から40代前半の女性。1人当たりの購入単価は予想を上回る金額で、売上も予想以上とか。理由は美や健康への意識の高さと考えており、コラーゲン・スピルリナなどの健康食品が好調なのもそれを裏付けているようだ。

 取扱い商品には化粧品などの品揃えが多く、日本製に加えてニーズの高い韓国製や欧米製の化粧品もある。日本ブランドの商品数は継続的に増やしていきたいと語る。

 日本の店舗と比べて多いのがスキンケア商品だ。これはベトナムを意識した展開で、洗顔料、美白、ニキビケアといったスキンケア市場が大きいためである。

「忙しい女性が多いので、時短の商品が好まれます。最近では化粧水、乳液、美容液などの機能が1つになった、オールインワン化粧品も人気です」(May氏)

化粧品のコーナー

知らない女性に正しい知識
店作りはマツキヨスタイル

ポップが目立つ陳列棚

 実際にスキンケア商品の売行きは良く、プライベートブランド(PB)である美白ケアの「BLANC WHITE」やオーガニック化粧品の「ARGELAN」も同様だ。価格は前者が30万~50万VND、後者は150万VNDの商品もあるため、PBであっても決して安くはない。

「安いから売れる、高いから売れないではなく、ベトナム人は質と価格のバランスで購入します。大切なのは原料や効用などの特徴や、使用方法を伝えること。化粧品はきちんと使ってほしいですから」(May氏)

 マツキヨはFacebookや店内のカウンセリングなどで化粧品の使い方を教えている。日本では大学生や社会人になるきっかけで覚えたり、母親など家族からも教えてもらうが、ベトナムでは母親や上の世代に化粧をしない人も多い。使用方法や自分に合った商品の選び方を知らない、若い女性も結構いるのだ。

「ベトナムの方は日本人よりも興味を持って、情報の吸収に貪欲です。店内のアドバイザーにもフレンドリーに接してくれますので、正しい情報を多く伝えていきたいです」(宮岡氏)

マツキヨの女性スタッフ

 商品には日本からの輸入品もあるが、多くは当地の代理店経由で調達。ベトナム人に人気のある日本の商品はまだ少なく、今後は調達先をさらに増やして、豊富な品揃えにしたいそうだ。

「日本で取引のあるメーカー様に声をかけて、ベトナムでの販売を始めた商品もあります。ベトナムに一緒に進出しようと誘ったわけですね(笑)」(宮岡氏)

 商品は一般的に日本の販売価格に比べて割高なので、マツキヨが得意とするセールやプロモーションを実施している。まずは試してほしい、色々と使ってほしいという気持ちも強い。

 陳列方法にもこだわりがある。例えば、陳列棚の上部にはひな壇を作り、段差を付けて商品を並べて、立体的に目に入るようにする。割引率は大きく描き、「日本製」や「マツキヨのイチオシ」などのポップを付ける。デジタルサイネージを並べて動画で情報を伝えるのは、日本でも珍しい特別仕様だそうだ。

棚の上部にあるデジタルサイネージ

「ベトナムではこうした工夫をほとんど見ませんが、お客様に欲しい商品や情報があっても、見つからなければ買っていただけません。そのための仕掛けです」(宮岡氏)

競合と共に市場を作る
ベトナム女性をますます美しく

 高級ブランドも扱う外資系ビューティチェーンは、マツキヨの他に香港のGuardianやWatsons、韓国のBeauty Boxなどがベトナムで展開中だが、必ずしも競合店ではないという。

「日本のようにお客様を奪い合う相手とは思っていません。こうした小売店はまだ少ないため、一緒に市場を作っていく時期だと感じます。色々なお店でお客様に商品を選んでいただければ、市場が拡大すると思います」(宮岡氏)

 化粧品と健康の分野は必ず伸びると感じている。健康と美に対する意識がさらに上がるからで、健康食品などのヘルスケア商品にも、さらに注力していく。

「4~5年前に比べて今の女性ははるかに化粧をしています。海外からのトレンドが入ってきていることや、ブランド品の手頃な価格での発売も理由でしょう。ベトナムの女性はもっともっと美しくなりますよ」(May氏)

Rohto-Mentholatum Vietnam
General Director  白松浩文氏

実は少ない化粧品ユーザー
参入企業は大幅に増加

 今年で進出25周年を迎えたロートメンソレータムベトナム。スキンケア、化粧品、目薬などで多くのヒット商品を生み出し、特にスキンケアシリーズの「肌ラボ」、ニキビ予防の「Acnes」、日焼け止めの「Sunplay」などは、ベトナムのスキンケア市場の成長と共にロングセラーとなっている。

 ただし、化粧品やスキンケア商品の普及率はまだ低いと、白松氏は語る。

「ハノイとホーチミン市の女性の使用率は、化粧品では口紅が87%。多いようですが所有の割合で、毎日使っているとは限りません。洗顔料は61%、日焼け止めは40%、化粧水などのモイスチャライザーは23%と、使う人はまだ少ないのです」

 つまり、パーティなどでは別だが、普段は口紅程度しか化粧をしない。また、試して違和感があった、若いからまだ使わないでも大丈夫などの理由で、スキンケアに抵抗を持つ人も少なくないそうだ。化粧品への興味や意識は毎年のように上がっていても、日常的に使用している人は限定的だ。

「一方、5年前と比べて参入企業は増えました。化粧品の輸入規制の緩和、EC販売の拡大、Guardian、マツキヨ、HASAKIなどビューティチェーン店の増加も理由でしょう。競争は激しくなりましたが、市場の発展には良い傾向です」

SNSで売上2倍のUV製品
コラボが生んだレトロデザイン

 どのような商品が支持されているのかを、同社の最近のヒットブランドから見てみたい。最初は日焼け止めSunplayの「Skin Aqua Tone Up UV」で、2019年にラベンダー、2020年にはミントグリーンが発売された。

肌のトーンを変える「Skin Aqua Tone Up UV」

 日本のヒット商品で、日焼け止め効果と同時に肌色のトーンを変えるのが特徴。肌に塗ることでラベンダーは褐色の肌をピンクに、ミントグリーンはニキビなどの赤い肌を白く「補正」する。現地生産の強みを活かして、ミントグリーンは日本での発売1ヶ月後に販売した。

 社会的隔離期間終了後の昨年5月から、FacebookやYouTubeを中心にキャンペーンを開始。塞いだ気持ちを明るくする演出を心掛けた。外出の減少で日焼け止めのニーズも減ったが、SNSに写真をアップする人が増え、インスタ映えすると話題に。女子大生や20代前半のOLを中心に購入されて、1年間で売上が2.3倍となった。。

「若手女性歌手のAmeeをアンバサダーにして、Watsonsなどの店舗でタイアップキャンペーンを行い、インフルエンサーにも依頼しました。民間企業による昨年5~6月のベトナムのデジタルキャンペーンの成功例ランキングで、1位にもなりました(笑)」

「Skin Aqua Tone Up UV」のInstagram

 白松氏によれば、化粧品にも流行に乗った「トレンディ商品」と長く愛される「ベーシック商品」があり、同社は長い時間をかけて後者を育てる戦略だ。例えば肌ラボは、化粧水、洗顔料、美白、アンチエイジング、プレミアムなどとシリーズを増やし、毎年のように品質を改善し、時代に合わせてパッケージや広告を変えてきた。その結果、11年連続の増収となっている。

「今後は消費者が様々な情報を集める中で、1本はベーシック、もう1本はトレンディなどと、両方を持つようになると思います。弊社も昨年11月発売の口紅で、トレンディ商品に挑戦しました」

 その商品が全6色の「FLAWSOME」、組んだのは口紅のインフルエンサーChangmakeup(チャン・メイクアップ)だ。以前にもコラボの実績があり、その後彼女はOFELIA Cosmeticという自社ブランドを立ち上げた。

 デザインやコンセプト作り、デジタルマーケティングはOFELIAが、生産と販売、小売店での店頭マーケティングは同社が担当した。何より目を引くのは昔の「ラジカセ」と「カセットテープ」を模したパッケージだ。実物に触れたことのない若者たちが、レトロで可愛いと話題にした。

 口紅はカセットの中に入り、カセットはラジカセの中に仕舞える。セット商品を詰めた大きなラジカセパッケージを作り、著名なブロガーにプレゼント。使った感想をブログに書いてもらう作戦だ。Facebookは何度も更新し、飽きられないアピールを続けた。

「ラジカセやカセットのパッケージなんて、我々には全く出てこないアイデアです。デジタルマーケティングを含めてとても勉強になりました」

パッケージがユニークな「FLAWSOME」

 OFELIAは他の商品も販売しているが、素材、生産、パッケージ作りもOEMであり、品質保証に課題があった。その部分をロートメンソレータムベトナムが担保する形となり、相乗効果が生まれた。

企画から生産までできる強み
今後もトレンディ商品を開発

「今後のコスメ業界は着実に成長します。まだ使用頻度は低く、購入金額も少ない。地下鉄が開通して通勤スタイルが変わり、メイクやケアに気を使い始めるなど、急拡大はせずとも長期で伸びると思います」

 同社の強みはベトナムに生産工場、R&D拠点、企画、販売、マーケティングチームまでを持っていることだ。品質を改良し、ラインナップを増やし、時代に沿ったマーケティングを続けられるのは、輸入品の企業では難しい。

「ニーズの拡大が見込めるベーシック商品に加えて、経験の少ないトレンディ商品は外部のプロと協業する。FLAWSOMEはかなり話題になっており、生産は予定通りに進んでいます」

「肌ラボ」のアンチエイジングシリーズ

 ロートメンソレータムベトナムは当初、FLAWSOMEの発売日を11月11日と考えていた。中国発祥の「独身の日」であり、中国同様にEC販売が活況となるからだ。しかし、OFELIAは反対した。安物買いが集まる日なので、新商品アピールの効果は薄いという理由からだ。
 同社が納得したのは言うまでもない。

1月から「Lazada」で販売
ほとんどがスキンケア商品

 「越境EC」という言葉をご存じだろうか。国境を超えたECでの販売で、ECサイトを使って日本の商品をベトナムで販売するなどを意味する。

 ただし、日本から国際郵便で商品を送って購入者がネットで入金するなどの直接取引ではなく、越境ECの運営会社を通じた取引が主流になりつつある。顧客が手数料を支払って運営会社がベトナムで販売し、売れた分の利益が還元されるような仕組みだ。

 ベトナムに現地法人を持つピーエイは2019年7月、中国向け越境ECに強いキレイコムなどとPAエンタープライズを設立した。事業は日本からベトナムに向けた越境ECで、ベトナム現法のPAベトナムが申請手続き、販売、プロモーションなどを担当している。

EC販売している商品(他も同様)

「PAエンタープライズが日本で、ベトナム進出に興味がある企業様に提案をします。取引が決まったら弊社が、化粧品の輸入販売に必要な『商品開示手続き』を行います。開示証明書を取得してからの販売となります」(佐々木氏)

 現在(取材時)は6社が契約、約30商品の開示手続きが終了しており、今年1月からEC販売をスタートさせた。ECサイトは当初Shopeeを予定していたがLazadaに変更。Lazadaのほうが化粧品販売に向いており、購買者に中間層が多いと判断したからだ。

 商品のほとんどが洗顔料、化粧水、クリームなどのスキンケア商品で、販売単価は3000~1万円程度。高価格帯なので、ターゲットは外資系企業などに勤める中間層以上の女性だ。

「最近のベトナムでは、色々な国の商品を使うスキンケア世代が増えています。肌がきれいじゃないと美しいメイクにならないので、肌を良くしてからメイクする順番だと思います」(Xuan氏)

 スキンケア商品は洗顔材、化粧水、乳液、ニキビケアなどが人気。まずは肌荒れなどの問題を解決して、その後もスキンケアを続けるという。Xuanさんは毎日2回、朝と晩にスキンケアをしている。

イベントや展示会が大切
ベトナムで知名度を高める

 現在は専用のWebサイトで商品をアピールし、日本の美をテーマにブログで情報を発信中。4月末には、ホーチミン市のホテルでイベントを開催する予定だ。日本の顧客企業が大型プロジェクターを使ってオンラインで説明し、各企業のブースでは商品を展示。インフルエンサーなども招待する。

 イベントは土曜日に開催し、実際の商品を知ってもらって販路を広げる戦略。5月上旬からは小売店、チェーン店、エステサロン、ショッピングモールなどで店舗販売を始める計画だ。

「昨年、ベトナム最大級の美容展示会『vietbeauty 2020』に出展予定でした。新型コロナの影響で延期されたのですが、本来はこの展示会を契機に大きく展開させたかったのです」(佐々木氏)

 ECサイトに載せただけでは売れないと、佐々木氏は断言する。特に越境ECで販売される商品は大手企業の有名ブランドではなく、中小企業の製品が多い。ベトナムでの知名度はないに等しいので、いかにして知ってもらうかが大きなカギ。そのためのイベント開催であり、展示会への出展なのだ。

「化粧品は極端な差別化がなく、スキンケアならしばらく使わないと効果が出ません。大切なのは効用や価格を消費者に伝えてのブランディングであり、実際に手に取っていただくことが欠かせません」(佐々木氏)

「ベトナムでは韓国コスメが一番人気で、スキンケアより口紅などのメイク系が強いと思います。日本製品より安くて、種類も多いです。何より韓国ブランドはFacebookをうまく使ったり、韓国ドラマの女優をインフルエンサーしたり、マーケティングが上手なんです」(Xuan氏)

増え続けるオンライン購入
使用後にECへの誘導も

 ECで販売する商品単価はほぼ日本と同じで、高くても1.1~1.2倍程度としている。なぜなら、日本に40万人以上のベトナム人が住む現在、彼らに頼んで個人で輸入する方法もあるからだ。販売価格が高ければ、こうした友人ルートで買われてしまう。

 では、なぜ価格が抑えられるのか。最終的な価格は、顧客企業から仕入れる卸値に、物流費などの経費と利益を加えて決める。日本で1万円の商品なら仮に4000円で仕入れ、経費を加えて7000円となれば、販売価格を同じ1万円にして、利益の3000円を顧客と調整するような形だ。

 他には別途、商品開示手続きの費用、商品のプロモーション費用、イベント等への参加費用などが必要になる。しかし、日本の化粧品市場は縮小が予想されており、成長を続けるアジア市場に目を向ける企業は多い。

 特にベトナムへの化粧品の越境ECはまだ始まったばかりで、女性の収入が増え、化粧品や肌への関心が高まっている今がチャンスだという。

「オンライン販売が主流になりつつあるベトナムで、越境ECは増えると思います。ベトナムのECにはキャンセル率の高さやクレジットカード利用率の低さなど問題はありますが、一度使ってもらえばECに誘導できると思います」(佐々木氏)

「私もそう思います。同じブランドを使いたいと思ったら、ショップに行くのはめんどくさいからです。私はずっと日本人と働いていて、日本に良い商品がたくさんあることを知っています。もっと多くのメーカーやブランドに来てほしいです」(Xuan氏)