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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第16回
ホーチミン日本商工会議所(JCCH)

会員企業が1000社を超えたホーチミン日本商工会議所( JCCH )。今年4月に第24代の会頭に就任したのが、「一体感」と「誇り」をスローガンとする岡田英之氏だ。自身を「町内会長」と語る真意を聞いた。

同じ志の仲間が得られる場所

―― 会頭になってからどのような活動を?

岡田 ホーチミン市、ドンナイ省、ビンズン省などの人民委員会へ表敬訪問し、JCCHの活動をアピールしてきました。また、各省で開催している税務などの問題に関する対話集会にも参加し、各部局の責任者などとの意見交換にも努めています。

 ベトナム当局と接する場面では、日系企業によるベトナム国内での投資実績、ベトナムの経済や社会への貢献、各産業での雇用創出効果など、JCCHと会員企業の果たしてきた役割を具体的に説明するように心がけています。会員が1000社を超えたことの意義はとても大きく、人民委員長等との対話の場においても、彼らは1人の会頭の背後に1000社の日系企業の存在を見ています。だからこそ、JCCHの代表者としての会頭の発言に耳を傾けてくれていると実感しています。

 こうしたことの積み重ねが、個別の会員企業の困りごとを少しでも減らせると信じています。先日、税務・通関委員長の小野瀬貴久さんが、「全てはできなくても、全力でサポートしていく」と語っていました。まさにその思いです。

―― 会員間の交流活動にも積極的です。

岡田 ベトナム側との対話集会もそうですが、会頭の役目とは「つなげること」です。会員同士、部会同士、またJCCHと当局といったJCCHを取り巻く様々な場面で、点と点を結び、接点を広げ、つないだ線をさらに太くしていくことです。今年度、従来の中小企業支援委員会を企業交流委員会に改称し、役割を広げたのにも同じ思いがあります。

 企業規模にかかわらず、お互いに垣根を感じることなく、会員同士の自由な交流を活発にしたい。ただ、私もそうですが、日本のおじさんたちはシャイなのです(笑)。知らない会社に急には訪ねられないですが、やはりそこは企業人であり、盛り上がるのは商売の話です。その要望が近年増えてきたため、複数の部会による合同部会の開催を促し、ビジネス交流会「ふらっとJCCH」の充実にも、企業交流委員会を中心に毎回工夫をいただいています。

 これまではJCCHでのビジネス交流は控えめでしたが、こうした機会を利用して、互いのビジネスの関係を深めてほしいですし、助け合ってもほしい。交流会や部会の懇親会で「あの人と話したい」などと個別に要望をいただくことも増え、活用いただけるようになってきていると思います。

―― 総会の挨拶で、「一体感と誇りを感じられるJCCH」と語りました。

岡田 まず「一体感」ですが、JCCHの組織率は6割程度と、他の多くの在外日本商工会議所と比べても非常に高いのです。会員数が1000社を超える大組織となっても同様で、全会員が自ら参加する一体感を持っていると思います。

 「誇り」とは、志を持った企業と人間が集まった組織という意味です。だからこそ外部の方々から信頼に足る組織だと見られているのです。会員であることに誇りを持たれるJCCHであり続けたいと思います。

 ビジネスでの実利も大変重要ですが、私は「共通する志を持った仲間が得られる」ことこそが、入会した最大の意義だと考えています。そこには私の個人的な思いも込められています。

―― どのようなことでしょうか?

岡田 2011年にベトナムに来た当時、私は事務所の設立を任されていたのですが、1人きりで何もわからず右往左往していました。事務所はどこにする、備品や機材の発注はどうする、人材はどう採用する、ベトナムに「しきたり」はあるのか……。

 大手企業なら進出ノウハウや、駐在員が複数の場合もありますが、特に中小企業は1人の赴任が多くてノウハウにも乏しい。また、製造業であれば同じ工業団地内での集まりがあるでしょうが、弊社のようなサービス業は、近くに日系企業があってもそのドアをノックできないのです。私もシャイなおじさんですから(笑)。

 しかし、利害関係のない立場の人からのアドバイスが切実にほしかった。そのときに精神的に支えてくれたのがJBAH(当時)であり、そこに集う仲間でした。その時の「助かった!」という思いを会員の皆さんに返したい、そのためのお手伝いをしたい気持ちがとても強いのです。

町内を支えているのは皆さん

―― 岡田さんは長い間JCCHをサポートしてきました。その間の変化とは何でしょうか?

岡田 やはり会員企業の増加です。私は以前、サービス業種が加入する第一サービス部会の部会長をしていましたが、当時は部会に参加いただける会員も少なく、どうやったら会合に集まってもらえるか、JCCHの活動に関心を持ってもらえるかを仲間と相談していました。それが現在、サービス業に携わる会員企業の数も第一サービス部会、第二サービス部会を合わせて約200社以上になり、定期に開かれる部会にも毎回多数の会員に参加いただけるようになりました。

 会員数が増えて各委員会の活動も大型化しているため、過剰な負担は減らしたいと考えています。例えば、「JCCHチャリティーマラソン」は昨年は約1600人が参加した大型イベントになりました。安全性を含めて適切に運営したく、各方面の外部専門家にもサポートをお願いしています。大型化により手弁当での運営には限度が見え始め、将来のJCCHに引き継ぐためにも整備を進めたいと思います。

 ホーチミン市と事業環境などを話し合う「ラウンドテーブル」も変化してきました。今年は9月に要望書を提出し、今後は事前交渉、12月に本番を迎える予定です。今回は一方的に要望を伝えるのではなく、ホーチミン市側に課題への改善提案をすることの対話を重視しています。これにより信頼関係を一層強化させる狙いもあります。

―― 改めてJCCHに入る意味とは何でしょうか?

岡田 まさに毎日考えているのが、「JCCHに入る意味」なのです。収益を目的とした組織でなく、むしろ有志による手作りの組織。言わば町内会で、私は町内会長です。だから偉いわけではなく、町内の人たちの協力が不可欠。皆さんの意見や要望を自治体(ベトナム側)に伝えたり、皆さんが協力し、助け合える機会を作ることが役目です。

 町内を支えているのは会員企業の皆さんです。年会費を払ってサービスを受けるだけでなく、全員がそれぞれお金、労力、意見を出して作り上げています。会頭として、この場をお借りして、理事、部会長、役員をはじめ、委員会に参加しご尽力いただいている委員の皆様、また部会その他のJCCHの諸活動に参加し、応援し、またボランティアとしてサポートいただいているすべての会員の皆様のご協力に感謝を申し上げたく存じます。

 ベトナムは新しいステージに移りつつあり、日系企業による新しい多様な産業分野への進出が増え、様々な場面で難易度が上がっています。私は今年度会頭として任期後半の責務をしっかりと果たし、次の会頭に良き伝統を引き継いでいく決意です。

ホーチミン日本商工会議所
岡田英之 Hideyuki Okada
大学卒業後、日本国弁護士資格を取得して弁護士に。2011年にベトナムに赴任。JCCHの前身であるJBAHで第一サービス部会長、監事、副会頭兼組織規約委員長などを歴任。2019年4月にサービス業として初のJCCH会頭となる。