ベトナムビジネスならLAI VIENにお任せください!入国許可、労働許可証、法人設立、現地調査、工業団地紹介などあらゆる業務に対応します!お気軽にご相談ください!

ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第15回
オリンパスベトナム

2007年に進出、2008年に工場稼働。デジタルカメラや内視鏡処置具の生産工場として、東南アジアの中核拠点に成長したオリンパスベトナム。3代目社長の丸山洋行氏は、規模拡大後の安定運営とさらなる事業展開を目指す。

デジカメと医療機器の主力工場

―― なぜベトナムに進出したのですか?

丸山 その頃既に中国に工場がありましたが、中国リスクを考えたチャイナ・プラス・ワンとして、さらにコストダウンを進められる国を探していました。アジア各国の調査を行いましたが、映像・医療の事業拡大に対応できるだけのスペースの確保とインフラ整備の実現性を考慮し、最終的にベトナムを選びました。

―― 御社の事業内容を教えてください。

丸山 デジタル一眼カメラ、交換レンズ、ICレコーダー(映像事業)と、内視鏡用処置具(医療事業)を生産しています。割合は前者が約7割、後者が約3割です。当社はEPE(輸出加工企業)ですので、部品や材料を輸入して製品に仕上げ、それを輸出してワールドワイドに販売しています。

 デジカメはエントリーモデルからフラグシップモデルまでのカメラ本体の全て、交換レンズはほぼ全てをベトナム工場で生産しています。また、医療機器はオリンパスの主力事業の一つですが、内視鏡用処置具はベトナムが初めての海外の大規模生産拠点です。

―― 内視鏡用処置具とは何でしょうか?

丸山 内視鏡に挿入して先端から出し、患部を処置するための器具です。体内の組織などを挟み取る生検鉗子、止血クリップ、注射針、ナイフなど多くの種類があり、ベトナムで生産しているのは主要な9種類です。

 デジカメや処置具の生産には精密な作業が必要です。個人的な感覚で恐縮ですが、細かな手元作業は女性の方が得意という印象があります。現在、生産ラインを担う方々の約90%が女性。平均年齢は約28歳で、生産体制は2シフト勤務(一部は3シフト)です。当社の事業および生産を支える皆さんの働きには心から感謝しています。

 おかげさまで生産ラインを担う社員の離職率は約3%です。10%を超える会社もあると聞きますが、弊社の離職率は周囲の工場の中では低い方だと思います。

―― 3%はかなりの数字です。どうしているのですか?

丸山 中国工場からのノウハウもあり、いくつかの施策を実施しています。そのひとつが、「長くても1分程度で終わる作業にすること」です。例えば、カメラは精密な調整作業が多く、組み立ても難しい。集中力が必要になりますから、長時間続く作業だと作業自体が嫌になってしまうことも……。そのために1回当たりの作業時間を短くしています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 また、新人をラインに投入する前には、2~3週間の育成期間を設けています。製造担当者の上に班長やライン長がおり、こうしたベテランが先生となって技能をしっかり教えています。教え方も上手ですので、問題なく新しい現場に入っています。

 また、企業内転勤制度の活用や試作業務の対応で、年間100人以上のベトナム人スタッフが日本へ行っています。

―― 日本ではどのような仕事を?

丸山 まずスタッフですが、内視鏡処置具のマザー工場に2~3年駐在し、実務を学びます。製造担当者は新製品検討時の試作を行うタイミングで、組立作業などを2~3週間行います。彼らが新製品に触れることはベトナムでの生産トレーニングになりますし、日本側にもラインでの作業内容がわかるメリットがあります。

 ベトナム人は自分の経験や能力向上に非常に熱心という印象です。本人の技術や技能の成長はもちろん、日本とのコミュニケーションが円滑になるなどの効果もあります。

 また、社内行事は社員旅行やテトパーティー、寮のクリスマスパティーのほか、昨年からは社長賞表彰を、今年からは社内認定制度が始まりました。

 ベトナムは技術や技能の認定制度が少ないため、会社内で独自の認定制度を作り、試験に合格すれば資格手当てを支給します。現在は採用が難しいIT分野で試行していますが、賃金の競争力を高めて、優秀な人にできるだけ長く働いていただきたいと考えています。

「生活の質」の市場に期待

―― 採用が難しくなってきたと。

丸山 特に今年に入ってから、人材獲得に変化が起きていると感じています。弊社のあるドンナイ省は人口が多い地域ですが、新規の工業団地や大型工場の建設があり、求人が増えています。

 スタッフ採用も同様です。ITエンジニア等の特定職種で賃金が高騰し、日本語人材の採用も厳しくなり、若い世代の転職が加速しているように思います。今後も生産規模の拡大を考えていますので、製造担当者やスタッフの採用は課題のひとつです。

―― 丸山さんは3代目の社長ですね。

丸山 はい。1代目は創業と売上をブレークイーブンにすることに必死の時代。2代目の時代には生産高を6倍と飛躍させました。3代目の私の役割は、規模の大きくなった会社を安定運営し、今後も拡大させていく基礎体力を作ることです。

 そのためには教育を充実させたいですし、新規の投資も検討しています。ベトナムの労働力に期待しながらも、賃金の上昇を見据えた生産の自動化と効率化も進めていきます。そして、もうひとつ注目しているのがベトナム市場です。

 ベトナムの経済発展は著しく、人々はますます裕福になって生活の質が向上しています。そこに当社グループのチャンスがあると考えています。デジタル一眼カメラは現在は一部の富裕層しか購入できないかもしれませんが、ベトナムの皆さんは写真が大好きなので、市場拡大が期待できます。

 また、健康や医療への需要も増えて、内視鏡など医療機器の販売増が見込めます。オリンパスメディカルシステムズベトナムという医療機器の販売会社があるのですが、実際に内視鏡や処置具の売り上げが伸びています。

―― 他に考えていることはありますか?

丸山 お客様に対する製造の訴求力を強化するため、「見て、感動してもらえる工場」を目指します。当社は生活の質を豊かにする製品を作っています。東南アジアのプロの写真家や医療従事者など多様な方々に工場に訪問していただければ、良い製品を作っていることをアピールできるのではないかと思っています。

 また、ベトナムで先端のものづくりの現状が理解されれば、ベトナム市場や東南アジア市場への訴求力が高まります。これは市場と弊社がWin-Winの関係になれるということ。さらに製造力を強化していくつもりです。

OLYMPUS VIETNAM CO.,LTD.
丸山洋行 Hiroyuki Maruyama
大学卒業後、オリンパス光学工業株式会社(現オリンパス株式会社)に入社。日本と中国で生産技術開発を20年、製造戦略策定を10年担当し、グループ全体の製造統括を推進。2017年にベトナムへ赴任し、2019年4月より現職。