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ベトナムビジネス特集Vol113|
ベトナム企業が生み出す“JAPAN”の伝統

 製法が難しく、市場がニッチな、日本の「伝統文化」はベトナムで売れるのか。こうした商品を制作・販売しているベトナム企業に取材した。なぜこのビジネスを始めた? 商品の評価は? 誰が買っている?


美しい日本庭園をベトナムに 信、心、人、合で事業展開

JGARDEN Co., Ltd.

Chairman

Mr. Nguyen Van Cuong

 

個人客は富裕層が中心 日本の造園会社が協力

近年のベトナムでは、植木、庭石、鯉などが人気だ。JETROの「ベトナムにおける造園周辺産業に関する調査」        (2018年3月)によれば、2011年から2015年の輸入額は植木が2倍、庭石を加工した石碑用や石製品などが1.5倍、鯉については2012年から2015年が約3倍で、鯉の稚魚は元の数が少ないものの278倍と驚異的な数字だ。

現在ならばより輸入量が増加しているはずのこれらを用いて造園するのが、日本庭園だ。ホーチミン市のRin Rin Parkはベトナム初の日本庭園として知られるが、企業や個人で所有することがブームになりつつある。2013年設立のJGARDENはこうした造園を請け負っている。

創業者のCuong氏は日本の鯉の輸入販売をしていたが、日本で見た日本庭園に心を奪われ、この美しさをベトナムに紹介したいと会社を立ち上げた。しかし、造園に関しては素人だった。

「ベトナム人の友人に日本の造園会社を紹介してもらいました。京都市にある『いのはな夢創園』で、協力関係を結んでいます。現在は3人の日本人造園エンジニアが働いています」

顧客は法人と個人。法人では高級コンドミニアムなどレジデンスの敷地内に造園するなどで、より多い個人客は約8割がベトナム人の富裕層、残りの2割が在越の日本人。ベトナム人の年齢は40歳以上が多く、職業は様々。ある程度の面積の庭を持つ戸建ての住人がメインだ。

「この6年間で65以上の日本庭園を作りました。場所は弊社があるホーチミン市内で、1年に10~12の案件を進めています」

アイデアを出して設計へ 庭木や庭石は輸入品も

造園はおよそ以下のスケジュールで行われる。顧客からの問合せなどから始まり、打合せでどんな庭園にしたいかの要望と予算をヒアリングする。その後、現地調査として庭園を作る予定の庭を訪問する。実際の土地を調べて、庭園の設計などのアイデアを出す。内容がある程度具体化したら、スケジュールを作り、見積もりを出して、ビジネスが始まる。

それからは施工段階。図面や完成予想図など作り、必要となる材料、例えば庭木などの植物や庭石などの石材を注文する。これらは顧客の希望に合わせて選び、ベトナム産を使う場合もあれば、日本など海外からの輸入品もある。日本の場合は、提携しているいのはな夢創園から紹介してもらったり、自社で探すこともある。JGARDENは造園業の他に植木や鯉の輸入販売も行っており、材料を輸入するノウハウやネットワークを持っている。

施工は日本人の造園エンジニアを中心に、約20人のベトナム人スタッフが行う。日本人は彼らに指示を出すと共に、自らも手を動かして日本庭園を作っていく。必要があればいのはな夢創園に依頼して、日本からスタッフを派遣してもらうこともある。そして完成後は引き渡して終了ではなく、庭木の手入れなどのアフターメンテナンスも行う。

「打合せから完成まで一般的に3ヶ月ほどで、施工の期間は100㎡の土地に5人で作業をして2週間ほどです。ただ、庭石などに特殊な材料を使う場合は探す時間も必要なので、完成までに1~2年かかる場合もあります」

顧客の要望はそれぞれ違うので一つとして同じ庭はないが、およその価格は100㎡で7万5000USDほど。これは池を作ってそこに鯉を放す、いわば鯉付きの価格で、鯉がない場合は6万USDほどになる。

設立当初はインターネットや雑誌、テレビなどで広告を打ったが、今はしてない。満足した顧客が他の客を紹介してくれたり、知名度が上がったことで注文が来るからだ。日本庭園を作る同業他社は増えているが、これだけの造園エンジニアがいて、要望に沿った庭石や植木を用意できるのは同社だけだろうと語る。

日本庭園には意味がある 今後はハノイやダナンにも

顧客がJGARDENを信用する理由は、同社の4つのモットーによるとCuong氏。最初は「信」で、顧客の信用を大切にして、約束やルールを守る。次は「心」で、仕事に思いやる心を持ち、気持ちを入れて、顧客の希望に対応する。3つ目は「人」で、技術力の高い人材を育てる。日本人もベトナム人も一生懸命仕事に励む。最後は「合」で、ベトナムと日本の文化を合わせる。ベトナム人と日本人が力を合わせる。

事業は成功しているが苦労もある。最近のベトナム人富裕層はヨーロッパ風のマンションや戸建てを好むので、それと日本庭園を合わせるバランスが難しいそうだ。また、日本庭園の意味を多くの顧客が理解していないこと。日本庭園では庭木や庭石を置く位置には意味があるが、顧客が求めるのは「きれいな庭」。設計段階でエンジニアがその意味を説明しても、わかってもらえないことがある。

「見た目の美しさだけでなく、こうした知見も入れて作るのが日本庭園であり、そのこだわりが弊社の特徴です」

ホーチミン市7区のショールームには2つの日本庭園があり、ひとつは日本の庭木や庭石を使ったもの。小さな滝が流れて池に注いでおり、池では大きな錦鯉が何匹も泳ぐ。もうひとつはベトナム産の材料で作った庭園で、完成後に小鳥や蝶が集まるようになったとか。

「今後は公園の中に庭園を作る計画がありますし、より自然な庭園を作りたいと思っています。現在はホーチミン市が中心ですが、ハノイやダナンに支社を作りたいです」


ベトナムで珍しい畳専門メーカー ニーズをとらえて海外展開も

T.C Thao Co., Ltd.

Director

Mr. Le Thanh Long

ここ3年で注文が増加 和食店の内装からスタート

畳の部屋に住んでいる読者は稀だろうが、ベトナムでも目にする場所がある。あなたもよく行く和食レストランだ。ベトナムに日本人が増えてきたことから畳のニーズを見込み、T.C Thaoが畳の生産と販売を始めたのが2005年。やはり当初の主な顧客は和食店だった。

「畳を生産している会社はベトナムには弊社だけだと思います。そのためか、地元の南部だけでなく北部の会社からも依頼が来ました。最近は高級マンションに住む、日本文化が好きなベトナム人からも注文があります」

経験なしの一からのスタート。畳の作り方を知らないので、タイで畳を作っている日本人に相談して、スタッフを派遣してもらった。現在は機械化が進んでいるが、最初は職人の手縫いから教わったという。より良い品質の商品を作りたいと、日本に畳の技術を勉強しにも行った。

その後は工場を作って機械を入れ、2017年には現在の工場に移転して大型機械を導入し、ショールームも完成させた。機械もそうだが、材料のほとんどが日本からの輸入。日本と同じ品質であることが自慢で、近隣諸国に輸出もしている。

この3年くらいで、問合せが急増しているという。現在の顧客は法人が約7割で主に和食レストラン、リゾート地や日系工業団地のスタッフ休憩室などにも使われている。企業の場合は専門の内装業者が入るので、畳はそこに卸すことが多い。

残りの3割は個人の顧客。マンションなどの部屋で使用するので発注の枚数は4~6枚、畳のベッドで2枚、少ないと座布団用など1枚もある。日本に興味を持った富裕層が多く、メインは40代以下の若い人とか。注文は会社のあるホーチミン市が約7割と多く、ハノイが2割、ダナンが1割程度。

「留学などで日本の文化に触れた方だと思います。また、日本庭園を持ったり、鯉を飼っていて、室内も和風にする人もいますね」

サイズ、素材、縁の有無… 顧客に合わせた畳生産

畳は180×90cm、高さは35mmと標準的な日本の大きさ。ただ、ベトナムの建物や部屋のスタイルに合わせて、様々なサイズと高さ(20、35、55mm)に対応可能で、顧客が希望するサイズにカスタマイズすることもある。

工場の生産能力は最大で1日40枚、月産で1000枚。完成後は行ける範囲であれば無料でセッティングを行う。顧客が遠方の場合はサイズをもらって作り、畳を配送する。サイズが合わないと作り直すこともあるそうだ。

現在販売している畳の種類の中で一番多いのは、東南アジアから輸入している「うず繊」という素材から作られる天然の畳表を使ったもの。色合いが自然のイエローで、良い香りがあるため、ベトナム市場で一番売れているという。

「日本から輸入している畳表もあります。一つは和紙、もうひとつはハイブリッドブラスチック製です」

これらのメリットは様々な色の種類があり、色が落ちにくく、肌にも優しい点。また、ブラスチックの畳表はカビやシロアリに強く、表面防水が95~100%ということで洗浄もしやすい。

畳には縁ありと縁なしがあるが、どちらにも対応している。最近は縁なし畳が現代的なスタイルと人気が高く、高級マンションなどに置かれているそうだ。ただ、こちらのほうが高価。縁あり畳は日本で古来からある一般的なスタイルで、畳を裁断してから機械で縁を付けるが、縁なし畳は職人の手作業で畳を折って作るからだ。また、畳表の織る幅が縁なし畳は縁あり畳より狭く、材料を多く使うことも価格上昇の理由だ。

同社では畳以外にも輸入した紙でふすまや障子、床の間なども作っている。畳とセットで購入する顧客もいるが、主力商品は畳で、売上の約8割を占めている。

東南アジア各国に進出 苦労は多いが今後も続ける

海外展開にも積極的だ。カンボジア、インドネシア、マレーシアに輸出しており、日系の建材会社などが代理店となって現地の和食レストランなどに卸している。現地展示会での出展をきっかけに顧客を獲得したそうで、今後も別の国の展示会などに出展する計画を立てている。

「海外のお客様は品質やサイズに厳しい方がいますから、こちらも気を使います。もう一つの難しい点は遠隔地への輸送と、問題が起こった際の迅速な対応です」

会社のPRは主にWebサイトで行っている。サイトは2つあり、ひとつはカンパニーサイトの「tcthao.com」、もうひとつは企業紹介とともに畳について説明したサイトで、URLはわかりやすい「tatami.vn」。畳に興味を持つベトナム人がアクセスしているようだ。

「売上は右肩上がりですが、機械の設備投資と展示会出展の費用が負担になっています。特に海外の展示会は参加費や渡航費の他に畳などを送る輸送費もかかりますから。それでも、畳の良さを多くの人たちに知ってほしい。これからも続けます」


日本品質の豆腐でシェア2位 父子で作る日越の味

Vi Nguyen Co., Ltd.

Vice Director

Mr. Cao Minh Kien

東芝の元研究者が起業 生「でも」食べられる豆腐

スーパーで購入したことのある人、あるいは和食店で知らずに食べたことのある人も多いはず。それがVi Nguyen社の豆腐だ。社長は国費留学で東京工業大学に学び、博士課程終了後は東芝でリニアモーターカーの基礎研究に携わったCao Minh Thai氏。

「ベトナムに戻って仕事を始めたいと考えていた父が目を付けたのが、日本の豆腐でした」

Thai氏の次男で副社長のKien氏が語る。ちなみに長男は、111号までACCESSで法律コラムを担当していた弁護士のCao Minh Thi氏である。

豆腐ならベトナム人も毎日のように食べるので市場は大きい。一方、ベトナムの豆腐は衛生的でなく、生では危険と食べない。安全・安心かつ美味しい日本の豆腐なら勝機があるし、少ない設備投資で始められることも魅力だった。

役職退職をしてホーチミン市に戻り、退職金で2007年にVi Nguyenを設立。クチに工場を作って生で食べられる 「HIYAKO」を販売した。在越日本人には良く売れたが、豆腐は揚げるか鍋料理にするベトナム人にはまったく売れなかったという。「生」への需要がなかったのだ。

こうした状態が5年ほど続いた後に転機が訪れる。ベトナムの鍋料理チェーン店からの、料理に合う豆腐開発の依頼があったのだ。内容を細かく指示され、何度もダメ出しされながらも、元研究者の熱心さでThai氏は要望に応えた。その完成した豆腐をベースに2013年に発売したのが、絹豆腐の「Non」。爆発的に売れた。

「加熱処理が前提の鍋用の豆腐で、生でも食べられるほど安全という品質が話題になりました。その後、木綿豆腐や厚揚げ豆腐、こんにゃくやしらたきなどラインナップを増やしましたが、今でも一番売れているのが『Non』です」

安くて美味しい日本品質 「世界初の快挙」を実現

日本で生まれ育ったKien氏は大学卒業後に日本のメーカーに勤務。2015年にVi Nguyenに入社し、今では事業と現場を取り仕切る実質的なリーダーとなった。同社の2015年から現在までの成長率は、販売個数ベースで毎年40~50%と伸び続け、従業員は工場と事務所を合わせて70人ほどに増えた。

「大きいのはスーパマーケットとそこで買う人の増加です。主にスーパーと飲食店に卸していますが、以前は半々だった割合が、今ではスーパーが7~8割を占めます」

Aeon、Co.opmart、Big Cといったスーパーマーケットと、ミニスーパーのVinmart+が主な顧客。これらの数をKien氏が以前に数えたところ、ホーチミン市内に合計約1300店舗あり、うち約900店舗に卸しているという。

小売チェーンが新規出店すると従来の店舗と似た品揃えになるため、Vi Nguyenのような取引のある企業に発注することが多い。こうした市場の成長に加えて、好んでスーパーを使うベトナム人が増えていることも追い風だ。同社のボリュームゾーンはまさにこうした人たちで、月収300~400USDの一般家庭がターゲット。そこで豆腐の価格を他社と比べても安い、1丁1万VND前後に抑えている。

一方、品質にはこだわる。日本の多くの豆腐と同様に、原料の大豆はアメリカから輸入。現地に行って、農家で現物を確かめ、豆腐を作って選んだ。ベトナムの豆腐はほとんどが遺伝子組み換え(GMO)の大豆を使うようだが、Vi Nguyenの大豆はNON-GMO。農家と年間契約を結んで、コンテナで輸入している。

豆腐の凝固剤にはにがりを使う。日本では当たり前だが実は作業が難しく、世界的には一般的でない。同社はにがりを基本に他の凝固剤も組み合わせている。

「その配合は企業秘密なので言えませんが、味や柔らかさ、香りまで違ってきます。これが日本人にもベトナム人にも美味しいと言ってもらえる豆腐で、世界初の快挙だと思っています」

大手外資に挟まれシェア2位 将来は売上1兆ドンも?

なぜ「世界初」なのか。Kien氏によれば、ほとんどの国で豆腐は現地向けと日本人向けに分けて売られており、タイ、シンガポール、韓国などで実際に目にしているという。そして、日本人向けは現地向けの2~3倍高い。

その理由をベトナムを例にすれば、豆腐は揚げるか鍋やスープで食べるもので、冷奴など生でも食べる日本人の習慣が特殊。そのため日本人を基準に作ると、地場の豆腐とはどうしても味が異なり、購入者が少ないので価格も上がってしまう。

「弊社の豆腐は『いいとこ取り』をしているので、どちらからも人気です。現在、ベトナムの豆腐市場でシェア2位だと思います」

シェア1位の企業はタイの財閥TCCグループ、3位は韓国の大手食品メーカーのCJグループという。どちらも巨大企業であり、ベンチャー企業とも呼べるVi Nguyenの健闘が際立つ。ただ、最近は特にTCCがベトナム市場に注力しており、気が抜けないそうだ。

「今はスーパーがすごい勢いで増えているので、出遅れないようにしたいです。Co.opmartのプライベートブランドでも販売していますが、利益よりも販路を広げたかったから。工場の設備投資も考えています」

事業計画を立てて遂行していくことは得意だが、苦労するのは人材の管理とか。工場のスタッフが数少ない女性を巡って口論になるなどの仲裁は、苦手なようだ。

「孫正義氏が、『豆腐を1丁、2丁と数えるように売上を1兆、2兆と数えられるようになりたい』と語っています。豆腐の市場は1兆円もないので、1兆ドンを目指したいですね(笑)」