全国のCOVID-19の感染者数は、先週から12%増加し、重症者数は73%増加した。再感染する患者も多数出ているが、専門家は新たな感染の波が起きることは考えにくいと分析している。
保健省は、過去1週間の1日あたりの平均感染者数が970人を超え、その前の週から12%増加したと発表した。このうち7月22日の感染者数は1142人、23日の感染者数は1071人となっている。これで5日連続で感染者数が1000人を超えた。過去1週間の重症者数は329人で前の週から73%増加したが、死者はゼロだった。
COVID-19の治療にあたる各病院では、過去2週間で重症者数が急速に増加している。例えば、北部のCOVID-19の重症患者対応病院である中央熱帯病院では、重症者数が先月から4~5倍増加した。2週間前には週に数人しか入院していなかったが、現在この病院では25人が入院治療中で、殆どの患者が人工呼吸器と高濃度酸素を必要としている。またこの病院では再感染した患者も数多くいる。
集中治療室の副部長であるファン・バン・フック医師は、通常医療の患者に半分のベッド数を分割しているため、重症患者用のベッドは、ほぼ満床状態だと話す。
入院している重症患者の殆どが、慢性閉そく性肺疾患、喘息、心疾患、HIVなどの免疫不全疾患、血液疾患などの基礎疾患を抱えている。重症患者は、人工呼吸器や高流量鼻カニュラ(HFNC)、酸素マスクを必要としている。患者が高齢で基礎疾患が多いほど治療は難しくなる。
一方、ハノイ医科大学付属病院では、中等症から重症の患者21人を受け入れており、そのうち2人が人工呼吸器を装着し、3人が酸素吸入器を装着している。入院患者数は以前と比べて1日あたり5人程度増加している。この病院の医師は、来週以降も入院患者数は増加するが3月のような医療ひっ迫には陥らないと予測している。
以前、オミクロン株の感染拡大がピークに達したとき、保健省の診察治療局は、国内で140万人近くがF0として隔離され、9万2000人以上が病院で治療を受け、そのうち3846人が重症患者だったと発表した。
フック医師によれば現在感染者数が増加している原因は、各地方自治体のCOVID-19治療病棟が閉鎖され、重症化した患者が直接中央熱帯病院に搬送されていることにあるのではないかと指摘する。また、ワクチン接種から6か月以上が経過したために抗体レベルが下がり、再感染が拡大した可能性もあるとしている。
ハノイ医科大学附属病院の副院長であるグエン・チュン・カップ医師は、「COVID-19つまり所謂コロナウイルスでは、ワクチン接種や感染によって得られる免疫は長期間持続しません。これまで、私たちが一般的なコロナウイルスに感染した場合、今年感染したウイルスに翌年再度感染したり、年初に感染したウイルスに年末に再度感染することがあります。COVID-19もこれと同じです。」と説明した。
また、一部のワクチンを接種していない患者は、通常より重症化しやすい。そのため、カップ医師は、ワクチン接種の重要性を強調し、免疫を確保するために、期限が来たらワクチンを接種するように呼びかけている。
一方、保健省の予防医療局の元局長であるチャン・ダック・フー准教授は、感染者が再び増加しているのはオミクロン株のBA4とBA5系統の蔓延と市民が日常生活が戻るにつれて感染防止対策をおろそかにしている点にあると指摘する。最近では、多くの市民がマスクを着用せず、COVID-19に感染しても隔離しなかったり、検査すら受けなかったりする。
フー准教授によると保健省は、感染が拡大して制御不能な状況になり社会経済活動に影響が出ることを避けるために、感染リスクを正しく評価し、迅速に対応する必要がある。より正確な感染状況の基準として、病院の診察患者数、入院患者数を適用し、各地域ごとに感染リスクを評価して予防策を講じる必要がある。さらに、ワクチンを接種済みでも重症化するリスクのある感染リスクの高いグループ(高齢者、基礎疾患のある患者、ワクチン未接種者、免疫不全患者など)を保護し、病院の負荷を軽減させる必要がある。
一方で、市民は閉鎖された空間や人が密集している場所では、殺菌、手洗い、マスクの着用などの個人的な感染防止対策を引き続き徹底しなければならない。また、感染者数や重症者数を抑えるためにワクチンのブースター接種も促進する必要がある。
ヨーロッパ、アメリカ、日本、韓国のようにベトナムでもCOVID-19が再度感染拡大するかについて、昨年の感染拡大時にホーチミン市で多くの病院をサポートしたクアン・テー・ザン医師は、「2021年9月に起きたような社会全体に危機をもたらす致命的な大流行はもう二度と起こらないでしょう。」と話し、市民に平静を保ち、心配し過ぎないよう呼び掛けた。
nCoVは、変異を繰り替えずが、重症化や死亡を引き起こすような毒性は低下する。さらに、ワクチンの感染防止効果が低下しても重症化や死亡のリスクを下げる効果は依然として高い。また、医療現場も重症のCOVID-19感染患者の治療経験が蓄積されている。ベトナムは、抗ウイルス薬、モノクローナル抗体を使用した治療法によって、死亡率を低下させることに成功している。
「過去の経験と科学的知見に基づけば、COVID-19ウイルスは変異を繰り返すため、将来的には新たな感染拡大の波が発生する可能性はあります。しかし、この病気の毒性は徐々に低下し、いずれは季節性インフルエンザのような存在となるでしょう。」とザン医師は話す。
出典:27/07/2022 VNEXPRESS
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