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商品開発と新市場の創造
メーカーの醍醐味はここにある

1995年にドンナイ省に生産工場を設立し、事業を拡大し続けてきた文具大手のプラス。今後はベトナムでの商品開発を強化し、M&Aを進めて世界展開を図る予定という。来越した今泉嘉久会長に緊急取材した。

今泉 弊社グループの事業には大きな柱が4つあります。文具とオフィス家具の製造、流通、そして文具や家具を支えるために新しく始めた物流です。そのグループ全体の年間売上が約2200億円で、従業員数は約8200人。そのうち25%強がベトナムで働く約2200人です。

 弊社がメーカーとして世界的な規模になりつつある原動力はベトナムにあり、ここに工場を持たなかったら、今のプラスの成長はなかったかもしれません。

 進出当時は多くの日本企業が中国に工場を設立していましたが、皆が行くから自社も行くという発想はとても危険だと感じました。そこは既にレッドオーシャンであり、皆が行かない、始めていないことをするのがビジネスだと思っています。

 ベトナム以外の選択肢がなかったのは、ベトナム人が非常に優秀で誠実、そして勤勉だからです。しかし、当時それに気づいた日本企業はまだ少なかった。弊社はベトナムに進出した4番目の日本企業でした。

今泉 生産の自動化比率が大きくなり、1人当たりの生産性が飛躍的に伸びていることです。10年ほど前、ベトナムの給料が徐々に上昇する中で、ベトナム人の従業員たちが自発的に自動化に取り組みました。賃金だけ高くなると競争力がなくなりベトナム生産の価値が薄れるから、1人の生産量を2倍、3倍にしようと考えたのです。

 具体的には成形機から部品の取り出しや部品を組み付けるアセンブリなどの機械化が多く、設計から製造まで完結しています。自動化の専門チームは約100人で、半数がエンジニアです。

 日本の文具業界では、自社のメイン工場は持っても外注比率が高い傾向がありますが、プラスの商品内製率は高く、コスト競争力を求めて自社生産にこだわり続けてきました。その行き着いた先が自動化ですし、約30年の間に技術も蓄積してきました。次のステップはベトナムでの商品開発です。

 弊社は東南アジアでも文具を販売しており、主にベトナムからの輸出です。せっかく当地に工場があるのですから、ベトナム国内市場やタイなど近隣諸国に適した商品も開発していく。そんな自己完結型の工場にするのが今の課題です。

 これは社員の生きがいにもつながります。本社が起こした図面通りに作るより、自分たちでアイデアを出して生産したほうがきっと楽しいでしょう。商品開発は既に始まっていて、紙製品にベトナム人が好むデザインやイラストを使うなどですが、今後は弊社の主力商品である修正テープの色彩、形状、デザインなどをベトナム仕様にすべく、研究段階に入っています。

今泉 プラスの文具部門の海外売上高比率は35%程度。元は問屋で日本国内の流通網が強固なので、国内市場への依存率が未だに高いのです。

 ただ、グループ企業のぺんてるは海外売上高比率が約70%と高く、特に南北アメリカとヨーロッパの販路を持ちます。プラスはベトナムを中心にアジアに強いので、互いの販売ルートを使い合う試みが始まっています。これまでなかったルートで海外販売できるわけですから、できるだけ早い時期に、ベトナムの生産量を2倍にしたいと考えています。

 例えば、弊社のベトナム工場でぺんてるのサインペンを作り、ぺんてるのフランス工場でプラスの修正テープを作ってもらうなども、自動化が進めばさほど困難ではありません。熟練の職人でなく機械が作るわけですから。

 こうした連携が進むと、両社の間で重複している顧客に行く営業スタッフが1人、トラックも1台で済むようになって、世界中で営業効率と物流効率が物凄く上がります。

 日本では少子高齢化とペーパーレス化で文具市場は縮小しており、競争も激しくなるため、従来の経営手法では利益が出にくくなりました。業界の再編が必要で、M&Aで文具メーカーをグループ化するのが大切な経営戦略になります。

 プラスのグループにはぺんてるをはじめ文具の6ブランドがあり、なるべく早く10ブランドまで広げるつもりです。日本には高度成長期の名残から会社は別々に事業すべきと考える人もいるでしょうが、こうした効率化をいち早く理解した企業が市場の勝者になると思っています。

今泉 得た利益を2つの方向に投資します。商品開発とそれを販売する市場の創造です。私は日本経済の30年間の停滞は、新しい市場を作ってこなかったことが大きな原因だと思っています。

 高度成長期に日本がやってきたのは、誰かが作ったマーケットを追いかけて、品質の高さと価格の安さでひっくり返すこと。ひとつの戦略ではあるが他国でもできる。実際に韓国、台湾、中国などが実践し、いずれはインドが始めると思います。

 誰もやっていない世の中にないものを作れば、市場は手付かずです。そのためにどれだけの資金を投入できるか。プラスでは鉛筆削りの「ハシレ!エンピツケズリ!」、個人情報保護スタンプの「ケシポン」などが商品としてユニークだと思います。しかし、飛ぶように売れているわけではない。作ることよりもそれを世の中に広めていく作業にエネルギーが必要で、これが市場を作る視点なのです。

今泉 日本の下請け的な立場を超えた商品開発、そして市場創造にも期待しています。先ほど海外売上高比率が約35%と伝えましたが、今後の成長余地が大きいわけですから、比率を2倍に引き上げることも夢ではありません。

 同じ志を持った文具メーカーたちと手を携えて、営業や物流を一本化して、投資のための原資を作る。このベトナムでも新しい商品と市場を生み出すことが重要です。

 ある大手家電メーカーが40年以上前、画期的な大ヒット商品を世に出した時、社内で「あれは俺が作ったんだ」と語る人が140人いたそうです。自宅で家族に自慢したハッピーな人が140人もいたということですよね、素晴らしいことです。

 モノづくりは売上が上がって利益が出るだけではもったいない。自分で考えて自分の商品、そして市場を作る。これがメーカーの醍醐味でしょう。

PLUS Corporation
代表取締役会長 今泉嘉久氏
慶應義塾大学卒業後、アメリカ・ニューヨーク州イサカ大学商科卒業。1966年にプラス株式会社入社し、1983年に代表取締役社長に就任。2008年より現職。全日本文具協会と日本オフィス家具協会の副会長を務める。