ベトナムにおいて、家庭用浄水器が注目を浴び始めている。米調査会社Research and Marketsによると、ベトナムの浄水器市場規模は、2017年1億8664万USDから2021年2億6377万USDと1.4倍になった。2023年から2027年までの成長率は年9.9%、市場規模は4億4821万USDで、今後4年間で1.7倍に達する見込みだ。
ベトナムでは水道水は飲用に適していない。一旦沸かすか、19Lのボトルウォーターを購入するのが一般的であるが、ボトルの保管スペースがかさばるのが難点だ。2021年、厳格な社会隔離措置(ロックダウン)中は、ボトルウォーターの購入や配達すらも困難になったため、都市部の富裕層を中心に「自宅で清潔で安全な飲用水を手軽に確保できる」浄水器への関心が高まった。浄水器市場売上高のうち43.7%を北部市場が占めている。
エリア別で分析してみると、北部ではRO(逆浸透膜)式フィルターの需要が高そうだ。以前より地下水汚染が指摘されていることに加え、2019年にハノイへの給水源である浄水場に廃油が不法投棄された事件で、水道水に対する不安が生まれた。「汚染物質を除去できる高性能浄水器=RO式」ととらえられ、富裕層家庭を中心に普及している。
一方、南部では「沸かせば料理や飲用も可能」と考える人も多いため、北部ほど高性能な浄水器の需要は高くないようだ。
今後、北部では「安全な水」、南部では「保管スペース不要で手軽に清潔な水」の確保が浄水器設置で可能であると、エリア別で異なったアピールをすれば、浄水器市場はさらに成長していくかもしれない。