ホーチミン市では2月に入ってオフィスビルの需要が減少し始めており、2023年の上半期にはオフィス賃貸市場の値下げ圧力が徐々に強まると予測されている。
2023年1月から2月にかけて1区、3区、タンビン区のオフィスビル賃貸業者からは、景気が低迷していることを受けて昨年の同時期に比べてオフィス賃貸需要が大幅に下落しているとの声が出ている。
ホーチミン市内で1㎡あたり15~20USDの14軒の賃貸オフィスビルの投資、管理、運営をおこなっているVNOグループのグエン・ホン・ハイ会長は、2023年1月から2月にかけてのオフィス需要が昨年同期よりも下がっていることを認めた。
VNOでは、契約により賃貸料の値上げが可能であったにもかかわらず、今回の契約更新時に賃貸料の引き上げをおこなわなかった。新規の顧客に対しては、同社は昨年と同様の賃貸料を提示し、管理費を無料とし、オフィス完成工事までの期間についても柔軟にサポートすることにしている。
「新規の顧客には、値上げせずに昨年と同じ価格を提示し、既存の借主には管理費の無償化などのインセンティブを提示して、顧客と困難を共有するために間接的な値引きを実施しています。」とハイ会長は話す。
ハイ会長の分析によれば、1㎡あたりの賃貸価格が15USD未満の手ごろな価格帯のオフィスは、過去2年間以上にわたって賃貸料を値上していないので、これ以上の賃貸料の値下げはほぼ不可能な状況となっている。一方で、利益率の高いハイエンドとミドルエンドのオフィスビルは、更なる値下げをおこなう余地が残されている。
ミドルからハイエンドのオフィスビルが賃料の値下げを実施しない場合、困難な経済状況を背景に今後12か月間でオフィス需要に大きな変動が起こり、空室率が予想よりも速いペースで上昇する可能性がある。
ホーチミン市1区中心部のオフィスビル関係者によれば、2022年末からテナントによるオフィス賃貸費用の支払い遅延傾向が加速しており、新型コロナ下の2年間よりも増えている。オフィスを引き払う可能性のあるテナントの数も今後3~6か月でさらに増加する見込みだ。経営環境の悪化が、オフィスビルに入居している企業のキャッシュフローに影響を与えている。
CBREベトナムの2023年オフィス市場予測レポートによれば、2022年の第1四半期から第3四半期にかけて市場は回復傾向を見せていたが、第4四半期から減速の傾向がみられ、今後1年間のオフィス需要に多くの問題が生じると予測されている。
CBREベトナムのリサーチ&コンサルティング部門のタイン・ファン部長は、2022年第4四半期以降、ベトナムのオフィス市場は、マクロ経済低迷の影響を受け始めたと分析する。新規参入オフィス面積も2022年第3四半期の4万4000㎡から第4四半期には8000㎡まで落ち込んだ。そのため、2022年に新たに提供された新規参入オフィス面積は7万5000㎡となり、新型コロナ前の2019年の69%に留まった。
タイン部長は、企業の売上がマクロ経済低迷の影響を受けるため、賃貸オフィス市場の需要は、2023年上半期は停滞すると予測している。多くのテナントが新しいオフィスへの移転や既存スペースの拡張方針を延期する傾向にあり、代わりに短期の契約期間延長契約を締結している。将来的に賃貸オフィススペースがさらに増加し、景気の先行きが不透明なため、2023年中にAグレードオフィスの賃貸料は約4%下落し、空室率が21.5%に達するとみられている。
イギリスの不動産コンサルティング企業のナイトフランクとの合弁企業であるナイトフランク・ベトナムも、ホーチミン市のAグレードオフィスビルの賃貸価格が㎡上がり2USD下落すると予測している。現在ホーチミン市中心部のAグレードオフィスの賃貸料は、1㎡あたり平均57.73USDとなっており、空室率は約5%だ。
ナイトフランク・ベトナムは2024年末までにこのクラスの賃貸価格が55.5USD/㎡まで下がり、空室率も20%台と大幅に上昇するとみている。Bグレードオフィスでは、現在の平均賃貸価格は33.68USD/㎡となっているが、2023年中には27USD/㎡程度まで下落する可能性がある。
ナイトフランク・ベトナムは、もし2023年にテナントを集客したいのであれば、既存のオフィスビルはテナントに対して新規オフィスビルの提示価格よりも低い賃貸料で契約を更新できるように提案する必要があると指摘している。
出典:26/02/2022 VNEXPRESS
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