地方競争力指数(PCI)の低下、食糧安全保障の負担義務、労働者の質の低さ、交通インフラの脆弱さが、メコンデルタ地方の経済発展にとってボトルネックとなっている。
2022年8月1日に開催された第2回メコンデルタ年次経済報告会でこれらの4つ課題がメコンデルタ地域の経済発展と投資誘致にとってボトルネックとなっていると専門家から指摘がでた。
フルブライト公共政策管理大学院のブー・タイン・トゥ・アイン博士は、メコンデルタ地域は2017年から2018年にかけて、地方競争力指数(PCI)において国内で最高のスコアを記録し、2019年から2020年にかけても紅河デルタ地域に次いで2位の成績を収めていたと指摘する。しかし、2021年のこの地域のPCIは、他の地域に後れを取ることになった。現在メコンデルタ地域は、国内6地域の4番目で、その下には、中部高原地域と北部山岳地域しかない。
PCIの構成要素の中で、メコンデルタ地方は地域アクセス、時間コスト、非公式費用、平等な競争環境、ダイナミックさの5つにおいて他の地方よりも優れている。しかし、これらの要素はPCI全体の30%しか占めておらず、残された要素については、メコンデルタ地域は他の地方よりも劣っている。中でも、PCIの45%を占める市場参入、透明性、労働者育成の分野が特に弱い。
「ビジネス環境が整っているかどうかわからなければ、投資家を誘致することは出来ないので、PCIの結果は非常に重要です。現時点でのビジネス環境が良くないと判断されれれば投資家は投資をしないでしょう。」とアイン博士は話し、メコンデルタの各省の幹部はこの問題をよく理解する必要があると指摘した。
次いで、アイン博士は、食糧安全保障がメコンデルタ地域の大きな課題になっていると指摘する。長年かけてベトナムは、米の輸出大国となったが、食糧安全保障上の問題からメコンデルタ地域は、稲作地がまだ多く残されている。しかし、例えば0.3ヘクタール程度の小さな水田では、機械化が難しく、生産性を高めて農家を豊かにすることは非常に難しい。
「世界中で稲作と農業だけで豊かになった国など見たことがありません。」とアイン博士は述べ、稲作面積の制限が緩和されても、ベトナムは食料安全保障の条件を満たすことができ、より効率の高い農作物に転換することで、農家の収入を向上させることが出来ると指摘する。
3番目の課題は、メコンデルタ地域で教育訓練を受けていない労働者の割合が90%と国内で最も高いことだ。過去4年間、この地域は、労働者の教育訓練指数が国内で最も低かった。そのため、今後メコンデルタ地域は、人材の数、質、知識、態度の向上に務める必要がある。
4つ目の物流インフラに関して、ベトナム商工会議所カントー支部のグエン・フーン・ラム支部長は、長年にわたり道路の未整備がこの地域の経済発展を妨げてきたと指摘する。メコンデルタ地方は、国内の7つの経済地域の中で2番目に国道の比率が低く、国道の距離は2562㎞で全体の11%弱しかない。この比率は、メコンデルタ地域が国内で占める面積、人口、GDPへの貢献率からみて非常に低いものとなっている。
メコンデルタ地域の高速道路の距離は、国内の僅か6.7%しか占めていない。また、この地域には真の意味での港湾と物流センターも存在しない。そのため、輸出入製品の70%以上がホーチミン市と南東部の各港で積み替える必要があり、物流コストが10~40%高くなり、製品の競争力を低下させている。
「メコンデルタ地方の最優先課題は、今後10年、20年先を見据えて物流インフラを早急に整備し、輸送コストを削減し、投資家を誘致することです。」とラム支部長は話す。
第2回メコンデルタ地方年次経済報告によると、2021年にベトナム南部の地方はCOVID-19感染拡大による深刻な打撃を受けた。2021年のこの地域の経済成長率は0.43%となっている。昨年メコンデルタの9省のうち、マイナス成長となったのは6省だった。
メコンデルタ地方は、メコン川の下流域に位置し、面積は約400万㎢(全国の約13%)あり、人口1800万人(全国の約19%)を抱えている。この地域には250万ヘクタール以上の農地と70万ヘクタールの水産養殖場があり、65%の雇用を担っている。この地域の米の生産量は全国の生産量の54%を占めており、輸出される米の90%、水産品の70%、果物の60%を占めている。
出典:01/08/2022 VNEXPRESS
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