困難な経済状況の中で、完全に安定しているわけではないもののサービス業が回復すれば、ベトナム経済にとって暗いトンネルの中の明るい光になりえるかもしれない。
ベトナム経済は、依然として非常に厳しい状況に直面しており、4月の輸出額は前年同期比11.2%減少し、輸入も13%減少した。「貿易に関してまだ明るい兆しは見えていない」と計画投資省が先月発表した経済指標についてHSBCはコメントしている。鉱工業生産指数も14%減と低調だ。
計画投資省のグエン・チー・ズン大臣によれば、現在の経済状況は、世界的なインフレ圧力、多くの国の金融引き締め政策によって依然として様々なリスクに直面している。
しかし、計画投資省とHSBCの専門家たちは消費サービスと旅行分野(経済成長の柱の一つで第1四半期の44%近くに貢献した)が成長していることは明るい材料だと判断している。小売売上高は、国内の活発な消費動向を反映して、前年同期比で11.5%増加している。
ホーチミン市商工局によれば、4月30日の祝日に卸売市場の取扱高は、昨年と比べて5.7%増加している。スーパーマーケット、ショッピングモールでの購買力も市民の娯楽とショッピングによって大幅に増加している。
旅行業やそれに関連する飲食業、宿泊施設なども好調だ。ベトナムは、4月に約98万4000人の海外観光客を受け入れており、2019年と比べて62%まで回復している。この結果は主に中国人観光客が回復したことに依存している。
ベトナム観光局によれば、先日の5連休には30万人以上の海外観光客と700万人の国内旅行者が旅行し、2022年同時期から40%増加した。昨年の連休時と比べて、観光収入は9%増の24兆VNDに達している。
5月22日に開会する国会では、ベトナムにおける外国人の出入国と居住に関する法律が提出され、審議と承認がおこなわれる見込みだ。それによって、政府は電子ビザの期限を30日から3ヶ月に延ばし、マルチまたは、シングルの電子ビザを全ての国を対象に発行できるようにする見込みだ。ノービザによる入国滞在期間も15日から45日への拡大が予定されている。このような開放政策によってベトナムはより多くの外国人観光客を誘致できると考えられている。
サービス業はどの程度回復できるか?
サービス業にとって追い風となるのは、物価上昇率が鈍化していることだ。4月の物価上昇率は3月に比べて0.3%低下しており、前年比のインフレ率が3%を下回った。
しかし、サービス業の回復も完全には安定しておらず、消費には明と暗が混在している。決済プラットフォームのPayooは、消費者はそれほど必要ではない商品の購入を減らし、必需品についてもより低価格な商品を選択する傾向があると分析している。
2023年第1四半期と2022年第4四半期の売上高比較ではスーパーマーケットとコンビニのグループが5~10%減少し、ファッションやインテリアの店舗が集まるショッピングモールでは10%の減少となった。スマートフォンや家電製品の買い控えも顕著でこれらの販売店では、30~50%の売上減となっている。
大手家電量販店幹部による電化製品市場への悲観的な見通しを受けて、市場では消費喚起のための熾烈な価格競争が繰り広げられている。ある家電量販店が”大特価”としてテレビ、洗濯機、冷蔵庫を販売すると、すぐに別のライバルチェーンが”大特価よりさらに安い”というキャッチコピーを打ち出したりしている。
一方で高収入の顧客層も依然として存在しており、自動車や高級な食事への支出が増加している。中古車販売市場では、2023年1月から4月にかけて急速に成長の勢いを取り戻している。中古車購入に関する連絡は11%増加し、販売額も7%上昇している。
特に4月30日の連休中には、自動車の購入需要が昨年同時期に比べて26%も増加した。毎年この時期になると多くの人が買い物や車の買い替えをおこなうからだ。「これはマクロ経済が様々な変化を起こしている中で前向きなシグナルと捉えることができる」と中古車販売会社は分析している。
決済プラットフォームのPayooによれば、一人あたりの客単価が100万VND以上の高級レストランも、依然として成長を続けている。第1四半期の注文額は、前四半期と比較して7%増加している。
さらに、今後2023年末にむけて付加価値税(VAT)を2%引き下げることで、消費が活性化する可能性が高い。ホーチミン市経済・法律大学のファン・ティ・タイン・スアン博士は、減税政策が最大限の効果を発揮するタイミングで実施されるとは言えないものの、経済にとって少なくない効果をもたらすことは間違いないと指摘する。
「2%の減税は国民の実質所得に影響するため意義があります。現在、インフレ率の上昇によって実質所得は低下しており、これに対して2%の減税は効果的です」とスアン博士は述べた。
観光に関しては、コロナ前は海外からの観光客の30%を占めていた中国人がまだ2019年と比べて25%しか回復していない。「旅行業に明るい兆しがあるとしても、回復スピードは依然として遅く、今年の経済状況を埋め合わせるには不十分だ」とHSBCはコメントしている。
サービス業は、暗いトンネルの中で明るい兆しを見せているが、貿易が低迷し信用の伸びが鈍化している状況では、経済成長の未来は依然として多くの問題を抱えている。
信用成長目標が14~15%に対して、国家銀行が3月に基本金利を2回にわたって引き下げたため、4月の信用成長率は、前年同期の約半分である約2%に留まっている。これについてHSBCは経済成長に対する市場の懸念が反映された結果だと分析している。
出典:19/05/2023 VNEXPRESS
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