不完全なインフラ、車検登録の過負荷、多発する交通事故、欠点の多い運転免許試験の4つがベトナムの課題だ。
交通インフラ建設資金が需要に追い付かない
近年の様々な交通インフラの改修工事や建設への投資によって、ベトナムの交通インフラは、市民のニーズに応じて大幅に改善した。
現在、ベトナム国内には29本の高速道路があり、総延長は1729㎞で、過去3年間だけで、その前の20年間の約半分に相当する566㎞が整備され、幹線道路の輸送能力を向上させた。現在も約1071㎞の高速道路が建設中で、ハノイの環状4号線とホーチミン市の環状3号線の着工手続きも急ピッチで進められている。
鉄道、空港、港湾業界では、ハノイ-ホーチミン市統一鉄道改修工事、鉄道運行時間短縮、ノイバイ空港とタンソンニャット国際空港の滑走路改修などのプロジェクトが実施されている。また各港湾は、基本的には国内の輸出入需要を満たせている。
しかし、交通インフラは依然として国内の社会経済発展需要を完全には満たせておらず、各地方の連携も悪く、メコンデルタ地域では依然として多くの高速道路建設計画が進んでいない。さらに、投資手続きは複雑で長期にわたり、投資資金は十分でないため、交通インフラの整備は十分に進んでいない。
2025年までに全国で3000㎞の高速道路を建設し、南北高速道路を開通させることが目標とされている。2030年までには国内の高速道路の総延長を5000㎞とし、クアンニン省からカマウ省までの1700㎞以上の海岸沿いルートを完成させることを目指す。またドンナイ省ではロンタイン国際空港(第1フェーズ)を完成させ、ノイバイ空港を拡張し、南北高速鉄道への投資を勧める予定だ。
運輸省は交通インフラを開発するためのソリューションを徐々に連動させモデルチェンジしてきた。また、各地方に資本を合理的に配分し、重要な地域への投資を進めてきた。運輸省はさらに国内外の投資を動員して交通インフラを整備し、各自治体に投資を分散させている。
車検登録の過負荷
2022年10月から2023年5月にかけて、公安省が車検登録センターの幹部、職員など600人近くを逮捕、起訴したことで、全国にある車検登録センター281ヶ所のうち106ヶ所が捜査のために活動を停止しなければならなくなった。
車検登録センターの活動停止と職員の不足によって車検登録作業が停滞し、車検登録手続き全体がパニック状態になった。現在でも国内で32か所の車検登録センターが、未だに活動再開条件を満たせていない。ハノイ市の場合は31ヶ所中26ヶ所が稼働しているが需要の51%しか満たせておらず、ホーチミン市19ヶ所中16ヶ所が稼働しているが、市民と企業の需要の52%しか満たせていない。
運輸省は車検登録センターに対して土日祝日を含めた時間外労働を要請しており、市民に車検手続き前に自分でメンテナンスと修理をおこない、車検手続き日程をアプリで登録するよう推奨している。各地方自治体は、市民と車両の安全と秩序を維持し、車検登録手続きの需要が高いことを利用して個人的な利益を得たり公共の秩序を乱す行為が発生することを防止しなければならない。
運輸省は車検登録サービス事業を規定する議定139/2018号の一部の条項について修正、追加の草案を作成している。この草案が承認されれば、車検登録の管理を国から地方に分散させ、自動車メーカーの正規メンテナンス・修理施設が車検サービスを提供できるようになる。この規定によって、今度の自動車登録台数の増加と現行の車検登録センターの過負荷状態に対応することが期待されている。
同時に運輸省は、通達16/2021号の修正・追加をおこない、運送業務に使用しない9シート以下の車両の車検期間を自動延長できることにした。これによって、該当車両のオーナーは再車検を受ける必要がなくなり、今後数ヶ月以内に車検登録手続きの混雑が解消されると期待されている。
これに伴い、車検登録センターは、高いセキュリティを備えた車検管理ソフトを完成させ、センターからベトナム車検局のデータ管理システムにオンラインで同期させて、記録の透明性を確保し、外部からの記録や検査結果の改ざんを防止する。
運転免許訓練における違反行為
2023年初めに運輸省は、全国にある各自治体の運輸局における運転免許の教習、試験、発行に関する全面的な検査チームを発足させた。
この検査チームは、各省の運輸局において運転免許教習の管理におけるDATデータ(学習時間と進捗管理)の活用が不十分であり、受験者の情報を事前に確認したり、試験中の監督も不十分であるなどの問題点を確認した。
それに加えて、検査チームは多くの地方では、受験者同士や試験官と受験生との交流が頻繁にみられることも分かった。運輸省の検査官は、多くの自動車教習所において疑惑の兆候が見られるとして、これらの情報を地元の警察に報告している。
運輸省は、不適切な問題を摘発するために、自動車運転免許の教習、試験、発行に関する法令、基準、規格を見直す必要があるとしている。さらに、運輸省は、運転免許の教習と試験の質を見直して改善し、運転免許教習施設の設備に関する基準と条件を見直し、薬物中毒者、運転免許不適合者、素行や健康状態に問題のある人に対して運転免許証を発行することが無いように厳格な管理システムを構築させる。
多発する交通事故
2011年から現在までに交通安全状況は、事故件数、死亡者数、負傷者数の3つの指標全てが減少している。2011年の交通事故死亡者数は1万1400人だったが、2020年には6700人まで減少した。一方で交通車両数は3580万台から7200万台に増加し、人口も2010年の8700万人から2020年には9700万人まで増加している。
しかしながら、交通事故件数、死傷者数は依然として高く、トラックなどの輸送車両による重大な事故も多発している。多くの地域で過積載車両が横行しているが摘発や処分がおこなわれておらず、一部の地域では改造車両による過積載が再び増加傾向を示している。
公共交通に参加していながら、法律を無視したり違反する市民が後を絶たない。2009年から2023年1月までに当局は約6600万件の交通違反を検挙しており、その中には飲酒運転や薬物使用など重大な交通事故につながる可能性のある違反が含まれている。
運輸省ではさらに、交通車両の安全技術と環境保護の質を向上させ、交通車両の技術基準を完全なものにすることを目指している。
交通に関する国会質疑は、6月6日から開始され、2日半をかけて上記の4つの問題について議論が行われる。運輸省のグエン・バン・タン大臣の回答には交通インフラシステムを改善し、交通事故を抑制し、大都市での交通渋滞を解消させるための解決案が含まれており、車検手続きの問題を解消し、品質を向上させるとしている。
タン大臣は輸送活動と車両の品質、並びに運転免許の教習、試験、発行、没収と管理についても回答する予定だ。
国会の答弁にはチャン・ホン・ハー副首相の他に計画投資省、財務省、建設省、科学技術省、公安省、国防省の各大臣も参加するとされている。
出典:05/06/2023 VNEXPRESS
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