過去10年間にベトナムは世界の家具サプライチェーンにおいて目覚ましい躍進を遂げ、2023年には世界第6位の家具製造国となった。
これは、ホーチミン市で開催された展示会Hawa Expo 2024の中で開催された”木製家具とインテリアフォーラム”において、イタリアに本部を置く木製家具業界の研究・コンサルティング機関であるCSILが発表した内容だ。
それによれば、ベトナムは世界の家具製造産業界において目覚ましい成長を遂げており、業界の規模は2014年の13位から2023年には6位にまで躍進した。現在、世界の家具製造国トップ5は、中国、アメリカ、イタリア、ドイツ、インドとなっている。このうち中国とアメリカは過去10年を通じて常に1位と2位の座を維持している。
CSILの家具研究チームの責任者であるジョバーナ・カステリーナ氏は、ベトナムの家具産業は非常に柔軟であり、過去10年においては世界のどの国よりも高い成長率を記録していると評価した。「以前、ベトナムは主に屋外向けの木製品を製造していましたが、現在は内装家具の分野で急速に成長しています。例えば布張り家具は、家具製造の25%を占めており、この数量はアジア太平洋地域の布張り家具製造量の10%を占めています」とカステリーナ氏は話す。
CSILによればベトナムは、年間平均で家具の製造が10%、輸出が11%伸びており、アジア第2位の成長率を記録している。「輸出がベトナムの家具業界の成長の原動力になっており、製造量の93%が輸出されています」とカステリーナ氏は話す。
林業総局のデータによれば、2023年の木材及び、木材製品の輸出総額のうち家具が約840億USDで全体の82.9%を占めている。林業総局のチャン・クアン・バオ局長は、ベトナム製の家具は世界各国で信頼を獲得していると評価している。
チャン・ドゥックグループのチャン・ドゥック・ヒウ副社長は、毎月の製造能力が200コンテナに達していると話す。このグループの子会社であるタン・ドゥック・ホームズは、最近、プレハブ木造住宅をアメリカに販売した。同社はビンズン省に1万20000㎡の工場を2軒所有しており、東南アジアで初となる鉄筋コンクリート構造に変わるCLT構造材料の製造ラインに投資したばかりだ。
林業総局の専門家であるグエン・トゥアン・フン博士は、家具業界の世界市場には4050億USDの潜在能力があると評価している。その中でベトナムは少なくとも20年の経験があり、年間3000万㎥を超える原材料が開拓され、需要の75%を満たしている。「木材は環境にやさしい素材であり、合法的に伐採すればリサイクルが可能で廃棄物量も削減可能です。林業総局は森林認証と植林地域コードの促進もおこなっています」とフン博士は話す。
2024年2月までに木材と木製品の輸出額は24億USDに達し、前年同期比で44%近く増加した。ホーチミン市手工芸品・木材加工品協会(HAWA)は、会員企業の多くが4~5月ごろまでの注文を受けているとしている。状況は2023年に比べて明るいが、専門家はまだ油断はできないと指摘する。
ビンズン省木材加工協会(BIFA)のグエン・リエム会長は、最近の受注傾向として短納期を上げる。「最近のインフレと利上げによって1年や6か月単位の注文は減少し、数か月単位、場合によっては月単位の発注が増えています。今年の輸出額は昨年に比べて良好で、世界情勢が好転すればさらに伸びる可能性があります」とリエム会長は話す。現在、ビンズン省の木材加工製品輸出額は、全国の40%以上を占めている。
カステリーナ氏は、世界情勢が不安定な状況であるため、2024年の家具の需要を正確に予測することは難しいと話す。「2024年の世界市場は全体的に横ばいとなり、2025年に再度成長が進むと予測しています」とカステリーナ氏は述べた。
長期的に見れば、ベトナムの家具産業も顧客構造、デザイン能力から貿易詐欺対策まで様々な課題を抱えている。
CSILは、ベトナムの年間家具輸出額の50%以上をアメリカが占めている状況は非常に危険だと指摘している。「昨年、インフレと利上げによってアメリカの購買力が低下したことで輸出が低迷したことがその一例です。今年はアメリカ大統領選挙があるため、誰もが息をひそめて成り行きを見守っています」とカステリーナ氏は述べた。
従って、カステリーナ氏はベトナムがヨーロッパ市場を開拓するなど輸出先を多様化させる必要があると指摘する。また、価格帯を上げてより多くのハイエンドユーザーを獲得するために、ベトナム企業は速やかに独自ブランドを確立する必要があるとも指摘する。
グエン・トゥアン・フン博士によれば、ベトナムの木製家具産業は長年成長を続けてきたが、それは安価な原材料と人件費に依存していたため、付加価値の高い製品が製造できていない。「これまでのベトナムのこうした強みは、徐々に失われていくでしょう」とフン博士は話す。
その一方で、欧州森林破壊防止法、EU木材規則(EUTR)、アメリカの違法木材取引に関するレイシー法などの法規制により、市場環境はますます厳しくなっている。炭素国境要請措置(CBAM)はまだ、この業界に適用されていないが、2027年には適用が予定されている。
グエン・リエム会長は、多くのBIFA会員企業はデザイン能力を積極的に向上させようとしてきたが、貿易詐欺については依然として懸念を示していると話す。家具業界は、正当なビジネスをおこなっていることを世界に証明する方法を探し出さなければならない。
「我々は、原産地に関する貿易詐欺の問題に直面しています。最近、我々は自治体、税関、税務署、経済警察などと協力して原産地に関する貿易詐欺を防ぐ取り組みに力を入れています」とリエム会長は述べた。
出典:2024/03/07 VNEXPRESS提供
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