150年前に建設されたフランス建築の庁舎
ホーチミン市中心部のレズアン通りにある「サイゴン街区人民委員会庁舎」(旧1区人民委員会庁舎)は、建設からおよそ150年が経過する歴史的建造物である。
ホーチミン市当局がまとめた「2016〜2020年ホーチミン市内の歴史文化遺産・景観リスト」によると、この建物は1876年に建設され、当初はフランス軍将校のクラブとして使用されていた。
1954年以降、1975年4月までの間はサイゴン政権の司法省庁舎として利用され、1975年4月30日以降から2025年7月1日まではホーチミン市1区人民委員会の庁舎として使用されてきた。
聖母マリア教会よりも古い歴史
注目すべきは、このサイゴン街区人民委員会庁舎が、ホーチミン市の象徴とも言える聖母マリア教会よりも古い点である。
聖母マリア教会は1877年に着工し、1880年に完成した。一方、この庁舎はそれよりも1年前の1876年に建設されており、当時のフランス植民地建築の中でも初期の部類に入る。
当時の意匠を残すフランス様式の建物
現在の敷地には塀、庭、樹木、2つの建物があり、正面の建物が古いフランス建築である。1階建てと2階建てからなり、レズアン通りに面して広い回廊と前方に突き出た玄関ホールを備える。屋根の上にはベトナム国旗が掲げられている。
内部は改修を重ねているものの、建物の外観は当時の姿を保っている。特に中央に位置する木製の階段は、左右対称に分かれた優美なデザインで、空間の開放感を演出している。
このような構造は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのフランス建築様式の特徴であり、2024年末にはホーチミン市人民委員会により「建築芸術遺産」に指定された。
歴史を刻む行政建築としての価値
建物の奥には1960年代に増築された部分もあり、1975年以降に補修・補強され、現在は地上2階建ての構造となっている。
約150年の歴史をもつこの庁舎は、単なる行政機関ではなく、ホーチミン市の都市史を物語る貴重な存在である。
今後、この建物の保存と活用を通じて、都市の記憶を後世に伝えるとともに、ホーチミン市の文化的アイデンティティをより豊かにすることが期待されている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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