無利子融資や輸入税免除など大胆な優遇措置
ベトナム政府は、ベトナム全土を縦断する高速鉄道プロジェクト(南北高速鉄道)の実現に向け、国家が総投資額の最大80%を年利0%で30年間融資するなど、特別な支援策を盛り込んだ政策案を検討している。
これは建設省が作成した「南北高速鉄道プロジェクトに適用される特別メカニズムと政策に関する決議草案」に基づくもので、現在司法省で審議中である。
同案によれば、事業者は鉱物採掘権の競売を経ずに建設資材の採掘権を得ることができ、また、TOD(公共交通指向型開発)区域では省レベルの人民委員会が投資家を優先的に指名できるとしている。
国内銀行の融資枠除外・税優遇も
金融面では、国家が融資する場合の利率は0%、返済期間は30年とし、国内商業銀行については投資家向け融資を行う際、与信限度規制の適用を免除する方針が示されている。
また、投資家は、建設・改修・保守に必要な鉄道設備・部品・資材・車両などの輸入税を免除されるほか、研究・技術開発や高度人材育成に関与する組織・個人にはハイテク企業並みの優遇が与えられる。
さらに、投資家には国内で調達可能な資材やサービスの優先使用も求められる。
専門家「技術移転やリスク共有の条件明確化が必要」
制作分析の独立専門家であるトー・バン・チューン博士は、こうした政策は「用地取得を独立プロジェクトとして分離」、「投資・経営型(事業投資型)方式の導入」、「TODによる駅開発の推進」など、前向きな内容を含んでいると評価する。
一方で「行政色が強く、真に“特別なメカニズム”としての柔軟性が不足している」と指摘もしている。
特に、80%融資・0%金利・30年返済という極めて大きな優遇に対しては、国内技術の導入進捗に応じた段階的な融資条件を設けるべきだと主張。
また、最低収入保証や為替保証の仕組みを設け、特に初期10年間はリスク共有を拡大することを提言した。
さらに、TOD開発を鉄道インフラと一体的に進めること、海外企業に対して核心技術(信号制御・運行安全)の移転を義務化することも求めている。
鉄道産業に国内企業優先策 「発注型」政策の是非
鉄道産業の国内化を狙うリスト案
建設省はまた、鉄道産業の発展を目的に、国内企業が政府発注を受けられる「鉄道産業製品・サービスリスト」を首相に提出した。
このリストには、国内企業が国家から発注・委託を受ける可能性がある15分野の製品・サービスが含まれており、今後5〜10年間で総市場規模15〜20億USDに達する見込みだという。
同省はさらに、国内企業に業務を割り当てる際の資本要件・売上基準・選定基準を定める政令案も準備中である。
具体的には、3年以上の活動実績がある企業は直近3年間の平均売上が8兆VND(約480億円)以上、設立3年未満の企業は最低資本金3兆VND(180億円)を条件とする。
専門家「優先よりも“自主性確保”を」
チューン博士は、「国内企業への発注を国家が主導する方式は、一見すると国産品優先に見えるが、投資家の商業的自律性を損なう恐れがある」と懸念を示した。
PPPや事業投資型プロジェクトでは、資材調達・サプライヤー選定は投資家の判断に委ねるべきであり、国家が直接発注者となれば契約関係が歪み、投資家がリスクを回避する可能性があると指摘する。
また、国内供給企業の売上基準(8兆VND)や資本金基準(3兆VND)も「規模が小さく、技術的・財務的に大型鉄道案件を担うには不十分」とした。
そのうえで、国内優先の精神を維持しつつ、義務ではなくインセンティブ方式に転換すべきだと提案。
例えば「契約額の30〜40%を国内調達とする」など、現実的な内製化比率の義務化や国内企業と外国企業の技術提携促進を挙げた。
ホーチミン市経済大学のボー・スアン・ビン教授も、「国内資材の使用は望ましいが、価格・品質・技術力の要素を考慮し、強制にすべきではない」と述べ、投資家に十分な自主権を与える必要性を強調した。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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