COVID-19の感染が拡大していく中、多くの専門家は、これまでのようなアナログ方式の感染対策は限界を迎えていると指摘する。その代わりに全面的にワクチン接種を拡大するような『ワクチン戦略』が必用になる。
現在、ベトナムではバクザン省とバクニン省以外に、ハノイとホーチミン市という2大都市で感染が拡大しており、特にホーチミン市の状況は深刻だ。
感染防止対策の強化を進めるファン・ミン・チン首相は、「ワクチン購入資金にあらゆる資金源を動員する」と何度も繰り返し強調している。首相は、この重要なミッションを成功させるため、各副首相に対して具体的な任務を割り当てた。
現場ごとの「指揮官」に責任を割り当てる
チン首相の指示により、ブー・ドゥック・ダム副首相が国家指導委員会の議長に就任し、COVID-19感染対策の最前線に対して、感染対策の一般的な方向性を示すことになった。
ホーチミン市の”ウイルス戦争最前線”においてチン首相は、チューン・ホア・ビン常任副首相に対して、通常の業務に加えて、ホーチミン市の幹部と協力して感染防止対策に関して直接監督・指示をおこなうように要請した。
またチン首相は、バクニン省とバクザン省という工業地域については、レ・バン・タン副首相に対して、感染拡大防止対策を直接指揮し、製造業の事業活動を回復させるように要請した。
ハノイについては、ディン・ティエン・ズン党委員会書記に対して直接指揮を執るよう指示し、各省庁に対しても、感染防止対策においてハノイ市と緊密に連携するよう指示した。
全国的な大きな問題については、チューン・ホア・ビン常任副首相とレ・バン・タン副首相が協議を行い、ブー・ドゥック・ダム副首相の合意を得るようにする。
政府指導部の感染防止対策における指示と政策を分析して、国会事務局の元副事務局長であるグエン・シー・ズン博士は、具体的かつ明確な責任分担の指示は、首相の現実的かつ、抜本的な方向性を示すものだと述べた。
「ウイルスとの戦争における最前線が複数ある場合、1人の指揮官が全てを指揮することは出来ないので、複数の指揮官を任命する必要があります。現在の流行状況はこれまでと異なり、感染が広範囲に広がっており、非常に危険な状態です」とズン博士は指摘する。ズン博士によると、これは首相がこれまで何度も言及してきた地方分権化と自己責任化に向けた一つの具体策であると指摘する。
ズン博士は、チン首相の感染防止対策は、戦略レベルでみて非常に正当なものだと評価する。「重要なのは明らかにワクチンで、ワクチン接種によって集団免疫を獲得する必要があります。いつまでも追跡調査や隔離作業を続けることは出来ません。これまでの1年半は、追跡調査に重点を置いてきましたがこれ以上、エンドレスにこの方針を継続することは出来ません」とズン博士は話す。
これまでの世界各国の経験から、ズン博士は、「ワクチン接種こそが違いを生み出す」と説明する。この戦略において、首相の提案する『社会化』という方向性は、国に充分な資源が無い場合、非常に正しい戦略といえる。
ズン博士によると、もし国民全体に接種するワクチンの購入資金が不足していれば、国全体として集団免疫を獲得することができず、通常の生活を取り戻すことも経済発展を回復させることも難しくなるため、ワクチンの大量確保のために社会資源を動員する必要がある。
ズン博士は、『ワクチンの購入と大規模接種のために社会資源を動員すること』こそが感染防止措置における戦略的ブレークスルーになると評価する。またこれによってCOVID-19と戦う新たな武器を手に入れることができるだけでなく、社会全体の結束と責任感を高め、社会全体としてこの戦争を戦う覚悟を共有するという2つの目的も達成することができる。
「ワクチン戦略によって初めて、私たちはCOVID-19との戦争を防衛一辺倒の状況から積極的な攻撃態勢に変化させることができるのです」とズン博士は話す。感染者の追跡、封鎖、隔離などの対策は、以前の感染状況では有効であったが、『周辺が洪水なのに堤防は築けない』のと同じで、完全な問題解決にはならない。だからこそ、今後は感染対策を抜本的に変更するタイミングに来ていると指摘する。
アナログな方法で感染症と戦うことは出来ない。
同じく現段階での感染防止対策変更を支持するルー・ビン・ニュオン国会議員は、各副首相をそれぞれの現場の指揮官に任命することは、政府の直接的な責任を明確にする効果があると述べた。各副首相は首相の代理として、それぞれの現場で、感染防止対策を直接指揮することができる。
「首相は、任務の性質と各地方の事情に基づいて、適切な指示が出来る副首相をそれぞれ配置することで、効果的なリーダーシップと明確な方向性を示すことができます」とニュオン議員は述べ、この方針は、現場における各リーダーの具体的な責任を明確にすることにもつながると強調した。
ニュオン議員は、この方針は、これまでの方向性とは異なるものであると強調し、これによって感染防止対策における違反行為への責任追及が難しいという状況を改善することができると述べた。
さらに、もし政府に直接指揮できる指揮官がいなければ、地方が混乱する可能性があるとニュオン議員は見ている。「これは政府、中でも首相のリーダーシップ、指導力、実行力を革新する方法の一つであり、非常に注目に値する」とニュオン議員は自身の見解を述べた。
ウイルスの感染対策は戦争と同じであり、ベトナムは、ウイルスとの戦争における戦略を転換する時期に来ている。いつまでも追跡、ゾーニング、隔離、ディスタンスといったアナログな手法で進むことは出来ないとニュオン氏は指摘する。
「これまでの対応方法は、感染が小規模な場合には有効ですが、感染拡大は新たなステージに入っており、新たな変異ウイルスは非常に強力で、広範囲に拡散し、これまで以上に危険なウイルスとなって経済エリアや工業団地に直接の影響を与えています。そのため、我々は従来の方針に基づく感染対策では、この状況に対応できないでしょう」とニュオン議員は述べた。
ニュオン議員によれば、今後の感染対策はワクチンをベースとしたものにしなければならず、そのためには、国の力だけでなく、社会全体並びに、市民と企業の力を結集して感染防止対策に立ち向かう必要がある。
「国民の70%以上がワクチンを接種して初めて、集団免疫を獲得することができ、経済が回復し、社会は心理的にも実務的にも安定した状態を取り戻すことができます。ウイルスといつまでも闘っていたのでは、経済を発展させることは出来ません」とニュオン議員は話し、この問題は、政府全体、特に政権指導部にとって非常に困難な問題であり、多大なプレッシャーを与えていると述べた。
出典:31/05/2021 VNEXPRESS
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