アメリカにある薬物・毒物管理センターが、COVID-19簡易検査キットによるアジ化ナトリウム中毒が発生していると警告している。一方で、ベトナムの専門家は、検査キット内の化学物質は非常に微量であり、それほど心配する必要はないとしている。
COVID-19簡易検査キットでは、サンプル採取綿棒、チューブ、検査試薬、滴下キャップ、検査キットが一式になっている。検査試薬の溶液には、アメリカが毒物として警告した無色で無味無臭のアジ化ナトリウムが含まれている。
2月末、アメリカのシンシナティ州小児病院の薬物・毒物情報センターは、COVID-19簡易検査キットの検査試薬を誤って接種する子供のケースが増加していると報告した。その原因として、検査薬の入ったチューブが点眼薬のように見えることがあげられる。一部の人が間違えて目や鼻に入れたことで、炎症や火傷といった被害がでている。小さな子供が誤飲するケースもあるが、幸い重篤な被害は出ていない。
シンシナティ州薬物・毒物情報センターのシェイラ・ゴーテモエラー医師は、アメリカ全土で簡易検査キットの試薬によるアジ化ナトリウム中毒が200件以上発生していると推測する。実際、ゴーテモエラー医師の働く施設でも、これまでに38件のアジ化ナトリウム中毒が報告されており、特にオミクロン株の急速な感染拡大によって検査需要が増加した1月以降に患者が増えている。その中には、検査試薬を点眼薬と間違えた女性のケースもあった。この女性は、目が赤くなり痛みを感じたが、10分ほど目を水で洗い続けると症状が改善した。別の夫婦のケースでは、取扱説明書を読み間違えて、最初に綿棒を検査試薬につけてから鼻の中に綿棒を入れた。このケースでは、軽い炎症が出たが生理食塩水で洗浄すると、症状が緩和した。
この問題について、ハノイ消防大学のクアット・クアン・ソン博士は、COVID-19簡易検査キットの試薬には様々な化学物質が含まれており、中でもアジ化ナトリウムは、強い毒性があるため注目を集めていると説明する。
アジ化ナトリウム(NaN3)は、アジ化ソジウム、ナトリウムアジドとも呼ばれ、自動車のエアバッグや船舶用の救命胴衣にも使用されている。病院や研究所では、NaN3は殺菌剤や防腐剤として使用されている。この物質は非常に毒性が強く、特に心臓や脳など多量の酸素を必要とする器官に深刻なダメージを与える。
アメリカの疾病予防管理センター(CDC)によると、微量のアジ化ナトリウムを接種すると、低血圧、めまい、頭痛、激しい動機などの症状を引き起こす可能性がある。大量のアジ化ナトリウムを吸収した場合、痙攣、意識障害、呼吸不全などの症状が表れ、時には死に至ることもある。
しかし、「簡易検査キットの試薬に含まれるNaN3は非常に微量です。」とソン博士は博士は説明する。ソン博士によると、大人の場合、間違って目にいれたとしてもすぐに水で洗い流せば、軽度の痛みと充血のみで済む。検査用の綿棒に試薬が付着していた場合も、水で洗ってから生理食塩水ですすげば、すぐに症状は治まる。
ベトナム感染症協会のグエン・ホン・ハー副会長も、検査試薬は密封された容器の中に少量入っているだけで、直接アジ化ナトリウムに触れることは非常に稀であると指摘した。簡易検査をおこなう際には、正しいプロセスで検査をおこなえば、それほど心配する必要はないとしている。実際、ベトナムでは、これまでに検査薬との接触による中毒症例は報告されていない。
「簡易検査をおこなう場合、大人が直接実施し、試薬を子供の手の届かないところに保管してください。検査後は正しく処分すれば安全で、それほど心配する必要はありません。」とハー副会長は話す。
アジ化ナトリウム中毒を避けるために、専門家は簡易検査キットを子供の手の届かない、鍵のかかったキャビネットに保管することを推奨している。また、検査キットの使用説明書は、予めよく読んでおく必要がある。
検査後は、検査キット一式を密封できる袋に入れて通常の家庭ごみとは別のごみ箱に廃棄する。全ての使用済み検査キットの廃棄袋には、「nCoVを含む可能性のある廃棄物」と表記し、一般ごみとは分けて、決められた場所に集めておく必要がある。
検査試薬が皮膚に付着した場合は、最低15分は流水で洗った方が良い。目に入った場合は、流水で15~20分洗い流し、生理食塩水で目を洗う。鼻に入った場合は、生理食塩水で数回すすぐ必要がある。飲み込んでしまった場合は、115に電話して、解毒センターで初期治療を受ける必要がある。
出典:21/03/2022 VNEXPRESS
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