年々増えるベトナムでの展示会や見本市。ファッションやフードなど幅が広がる中、やはり主役は製造業だ。来場している人は多いが、今年は思い切って「出展」してはどうだろう。プロたちがアドバイスを送る。
展示会出展のフローとポイント 準備7割、当日3割
JETROホーチミン事務所
次長
安池久美氏
コストと手間を考える 成功の源は準備にあり
大規模な展示会や見本市で、「ジャパンパビリオン」として日本企業の出展を支援しているJETRO(日本貿易振興機構)。ここでは初出展する中小企業を想定して、その流れと注意点を安池久美氏に語ってもらう。第1段階は「出展の目的を明確にし、展示会を決める」だ。
目的は販路開拓、テストマーケティング、企業・ブランドのPR、代理店探しなどが挙げられる。展示会はベトナムでも消費者向けとバイヤー向け、総合展示会と業界展示会、国際展示会と国内展示会などがあり、目的に合うものを探す。来場者として足を運び、実際を体験するのも有効な手だ。
展示会が決まれば「出展スペースを決めて申し込む」。一般的に最小単位は3m×3m。この「基礎小間」か、複数の基礎小間を合わせた「土間」になる。前者は小さなブースが横並びするような出展が多く、後者ではオリジナルブースも設営できる。
ただ、基礎小間であっても出展料金以外に装飾、輸送、通訳・アシスタント、広報資料作成、盗難や輸送の保険、日本から人を呼ぶなら出張経費など、思った以上にコストと手間がかかる。これらも考慮して出展スペースを決める(以降は基礎小間での出展を想定)。
「JETROでは、日本企業のニーズが見込まれる国際展示会を選び、20~30社で出展することが多いです。ジャパンパビリオンとしての集客効果もありますし、出展料の一部はJETROが負担します。同等の装飾を施して単独で出展する場合に比べて、出展費用を抑えることができます。費用にはスペース費だけでなく、ブース共通の装飾、カタログ作成、来場者の誘致、情報提供なども含まれます。初めての出展ならおすすめですね」
費用はアジアの展示会であれば基礎小間で30万円ほど、総コストは中小企業であれば1社単独の2/3程度になるという。基本的に日本の企業が対象だが、現地企業が出展可能な展示会もある。JETRO以外にも自治体など支援団体があるので、ぜひ調べてみたい。
出展が決まれば「準備を始める」。この準備段階がとても大切で、「出展の成功は準備7割、当日3割」と安池氏は語る。準備期間は基礎小間であっても5ヶ月程度を見よう。まずは出展する商品選び。商品を数多く並べるより、ニーズを調査して絞り込んだほうがベター。商品が決まれば配送や輸送を手配する。また、独自のブース装飾は業者に頼む必要があり、展示会によって指定業者もある。
「1日の商談数、出展後の企業訪問数、最終的な成約数や成約金額など、目標とする数字も決めましょう。それと、事前の広報は非常に重要です」
当日の来場者用にベトナム語か英語のチラシを作成し、事前広報にも使う。そして、顧客候補にメールや郵送で来場案内を送る。忘れてはいけないのが自社Webサイト。案内をもらった企業はその会社のHPを調べるものなので、会社概要や商品情報などを、案内開始前にベトナム語や英語でも載せておこう。
来場者を呼ぶ集客のコツ 商談は最初の5分がカギ
展示会当日は人を集めたい。ただ、基礎小間はスペースが小さく、個性も出しにくい。ならば五感に訴えてはどうかと安池氏。機械であれば動きを見せ、実際に触ってもらう。動画を流したり、カタログ等は手前に置いて、手に取りやすくする。遠くから見えるようにポスターも作る。
細かな文字で多くの情報を書き込むより、「何ができるか」や「どんな商品か」がひと目でわかる言葉や写真で目を引かせ、近づいてきたらポイントを絞って説明するのが効果的だ。
「目的を絞るなら、『代理店募集中!』などのプレートを掲げてもいいと思います。目的が伝わり、関心を持つ人が集まります」
ブースでうつむいていては人は集まらない。来場者が訪問しやすいようにカタログを配ったり、商品を動かしたりする。他のブースに営業に行くのも効果的だ。同じ立場なので声がかけやすいし、市場調査や他社の動向も把握できる。
人が来たら「商談を始める」。1社との商談は最初の5分がポイント。挨拶をして、何に関心があるのか感触を探り、脈がなければ早々に切り上げてもいい。相手が関心を持ったら何を解決できる商品か、他社との比較、日本や海外での実績、価格、保守などをコンパクトに伝える。これで5分。通訳を入れると10分程度だ。
「丁寧に、細かく説明する人もいますが、ポイントを絞ったほうが伝わりやすいもの。求めているのが販売店か代理店かなど、出展の目的を伝えてもいいですね。必ず用意してほしいのは『商談記録シート』です」
商談の内容、条件、見積送付の有無、印象、成約の可能性といった項目を作り、商談直後にシートに情報を書き込む。3~4日の展示会であれば、20~30社分は集まるのではないか。展示会終了後、このシートを集計、分析して、A(最有力顧客)、B(有力顧客)、C(見込みなし)などと分け、Aから順番にコンタクトしていく。
「この後でもうひと押し。出展の効果、成約数、見積もりの数、終了後の主催者発表のデータも含めて分析し、次回に備えましょう。いわゆるPDCAサイクルを回すのです」
安池氏は3回は同じ展示会への継続出展を勧める。来場者が重複するので知名度が上がるし、他の企業の様子やトレンドの動向などがつかめるようになるからだ。
展示会で注意すべきこと 市場調査目的の出展も効果的
AAB VIETNAM
CEO
平櫛開三氏
基礎小間でも工夫次第 日の丸とハッピで目立つ
大型展示会、有名歌手のコンサート、各種フェスティバル、セレモニーなどを幅広く手がけるイベント会社のAABベトナム。製造業の出展もサポートしており、平櫛開三氏がプロのイベンターから見たアドバイスを送る。
出展スペースには一般的に基礎小間(3m×3m)サイズをベースに、パネルなども主催者にオーダーしてサイズを決めるタイプと、スペースだけをレンタルして出展者がすべてを用意する土間(フリースペース)タイプがある。
最小単位の基礎小間はパネルの設置、商品の展示はできるが、サイズが小さいので制約がある。一方の土間は、広さの分だけブースやステージも作ることが可能。前者を使うのは中小企業、後者は圧倒的に大手企業が多いそうだ、
「展示会の料金はベトナムだからと極端に安くはありません。大きな展示会だと基礎小間の9㎡で2000USD以上するイベントや、4つを使った6m×6mで1万USD以上する展示会もあります。加えて土間タイプではブースの設営費用や相応の人材も必要なので、どうしても大手企業が中心です」
企画から業務を請ける平櫛氏はまず、会場内でのブースの位置を確認するという。来場者の動線を考えて、どの方向に商品を置くかを決める。例えばモニターはブースの奥に置くことが多いが、前に出してもいい。仮に知名度がない会社なら、あえて商品を強調せずに日の丸と浴衣で「日本品質」を強調するのも手だ。
「特にB to B型の製造業なら、対象の来場者には製品の内容はわかるもの。ならば細かな説明は除いて、新商品だけを前面に出す方法もあります」
ベトナムに進出して間もない日系パーツメーカーをサポートしたときの話。まずは、知名度を上げて、ブランディングをしたいと相談を受けた。基礎小間での出展だ。当初その企業は商品名を、「◯◯くん」などの愛嬌のあるものにしようと考えていた。しかし、平櫛氏は会社名をPRすべきと感じた。「平櫛パーツ」のような社名を入れたネーミングだ。
なぜならその会社は日本のニッチトップ企業で、業界ではシェアが高く、品質の評判も良い。ならば、ホンダがバイク、ゼロックスがコピーの代名詞になったように、社名をその業界のパーツの代名詞にしようと考えたのだ。
そこで展示会では社名の看板の横に日の丸を付け、プロモーションガールに浴衣を着せ、スタッフはハッピを羽織った。「日本からの進出」を印象づけるためだ。後にその企業は生産工場を竣工し、事業は順調に伸びているそうだ。
「一方の土間は、ブースの高さや上から物を吊れるかなどのレギュレーションがあるので、それを元にアイデアを出します。特に点数が多く、かつ機能、ブランド、サイズ、用途などに種類が分かれる部品などの展示は難しいですね。部品メーカーの分厚いカタログを作るのと似ています」
展示会の思わぬリスク 事前の確認が大切
展示会出展では注意すべきこともある。まずは主催者からの出展案内、注意事項を必ず読むこと。例えば、ブースがパッケージになっていても、大抵は照明機器は付いていない。つまり、照明を用意しないとブースが暗くなり、出展の効果が出せなくなる。
商品の搬入には指定業者に依頼するルールや、電気代は別料金などもある。英文で細かく書かれているので、面倒くさいと思う気持ちはわかるものの、しっかりと目を通すことが大切だ。
「出展企業が集まらないなどの理由でブース数が減った展示会では、予定していたブースの位置が変更されたこともありました」
ブースの両サイドに工夫をしていたが、角の位置に変更になったため、片側が見せられなくなった。当座の処置で乗り越えたが、顧客に聞いても事前に連絡があったかどうかがわからない。ベトナムの展示会は専門的になりつつあり、特定の業界向けにセグメントされると、市場が成熟しておらず、出展企業や来場者が少ない展示会もある。出展者から連絡があるはずなので、見逃さないようにしたい。
他には、思っていたより狭かったという感想も聞くそうだ。やはり、前年度の同じ展示会を視察しておくか、いくつかの同業種の展示会を見ておくほうがよい。
初めて展示会に出展する日系企業の中には、既に香港やバンコクでの展示会で成功して、代理店経由で出展する場合もある。駐在員事務所や現地法人がベトナムにないからだが、マーケティングやコミュニケーションを誤って現地のローカル会社に依頼されると、伝えたい展示内容にならないケースもあるという。
「日本の親会社が失望して、弊社に依頼が来るケースもありました」
また、10年程前まではよくあったケースで、日系企業がシンガポールや香港のイベント会社に依頼し、これら企業がベトナムの子会社やローカル企業と提携して、当地でブースを設営する。イベント会社はアイデアやノウハウを提供し、現地企業が手を動かすという方法だ。ただ、ローカルのイベント会社が育ってきたため、ベトナム企業に直接依頼するケースも増えてきた。
そもそも出展する目的とは何か。市場動向を調べるだけなら、コンサルタントに調査を依頼するよりも、同額を払ってとりあえずでも出展したほうがよいと平櫛氏。そして展示会の成功とは、タイミングよく出展ができたことだと語る。
「知名度がない状態で、来場者の反応を肌で感じて、同業他社を知り、業界に関わる人たちと一同に会える。このタイミングで出展できたら成功ではないでしょうか。極端に言えば、自社よりも安くて高品質の企業が多ければ、撤退するという判断もあるはずです」
何より大事なのはベトナムを知ること。それゆえ、「ベトナムでカタログが英語版だけなのは0点です」。
準備に半年かけ、1日200人の情報 展示会は先端技術のイベントだ
YAMAZAKI MAZAK VIETNAM
General Director
大津高人氏
市場にマッチしたインパクト アイデアを凝らす出展内容
日本、中国、シンガポールなどの拠点から工作機械を輸入販売する、ヤマザキマザックベトナム。2007年にアジアを統括するシンガポール支社の駐在員事務所として進出し、2013年に現地法人化した。業績は右肩上がりで、2017年のベトナムの工作機械の輸入金額ではトップだったという。
ヤマザキマザックはグループとして展示会への出展に積極的で、拠点がある世界各国はもちろん、拠点がない国でも出展。ローカル企業の顧客が7~8割というベトナムでは、製造業最大級の展示会であるMTA VIETNAMに2008年から連続出展している。
「MTAは規模が大きく、ダナンやハノイからも人が来ますから。出展の理由は自社の技術や製品を幅広く、きちんと知ってもらうこと。知名度が上がるに連れて、商談数や細かな説明の機会も増えました」
MTAは毎年7月上旬に開催するので、準備は1月からスタート。まずは前提となるコンセプトを考える。昨年はIoTやインダストリー4.0を意識して、シンガポールの工場とネットワークをつなぎ、稼働する状況を見せた。ネットワークシステムに関心の高い来場者が多く、数多くの質問を受けたという。
そして、出展する機械を決める。近隣の拠点から借りることもあるが、最新型は日本やシンガポールから輸入するので、納期は早くて3ヶ月、遅いと5ヶ月以上もある。
機械が決まると4月くらいからブースのデザイン。マーケティング部門を中心にアイデアを出し、設営するイベント会社とすり合わせていく。デザイン決定は開催の1ヶ月ほど前で、ブース制作に入る。
5月くらいからは告知も始める。顧客や過去の来場者などにメールで展示会や出展機械などを通知し、制作したパンフレットを郵送したり、訪問して届ける。
展示会での同社は、人目を引く仕掛けが多い。毎年のように130㎡程度の大型スペースに加えて、立地も会場中央付近なので余計に目立つ。展示では看板製品である切削機械などを稼働させているが、大切なのは「何を削るか」だという。
「市場にマッチし、インパクトがあって、お客様に興味深いもの。市場に合っているだけでは興味は引かないですし、機械の動き、形、派手さも考慮します」
以前にはアルミを削って「骸骨」を作った。見た目でも人を集めたが、その形状から金型メーカーには機能としてのインパクトを与えたそうだ。アプリケーション部門が考え、必要となるドリルや刃物はサプライヤーと相談した。
機械の展示と一緒に、顧客の製品も展示している。ベトナムで実際に作ってもらった部品などを展示することで、信頼感とリアリティを持ってもらいたい気持ちからだ。実際に評判が良く、サンプル展示は恒例になりつつある。
「展示会はお祭りでもあります。東京で昨年11月に行われたJIMTOF2018では、日本本社が昔のイギリスのテレビ番組『サンダーバード』とコラボしました。出展内容では毎回頭を悩ませています」
期間中の受注目標を達成 終了後には直接訪問
集まった来場者に対しては、展示会スタッフが用意した商談用紙を元に質問していく。相手の業種、ニーズ、コスト、希望納期などで、納期なら「すぐにでも」、「1ヶ月後」、「3ヶ月後」、「6ヶ月後」、「1年後」などに分かれる。1日約200人の情報が集まるという。会話をする人はもっと多いが、集まった情報が200人分ということだ。
展示会後にデータベース化し、商談の内容が濃い企業を中心にアポイントを取り、直接訪問する。機械の据え付けとセットダウンのサービスエンジニアなどを含めて、展示会用のスタッフは総勢で約20人。このうち商談用紙でヒアリングするのは大津氏を含めて7人程度だ。
「来場者はベトナム人が7~8割。他には日本、シンガポール、韓国、マレーシア、欧米などから様々です。業種は製造業で、バイク部品、金型製造、機械部品、農業機械、オイルやガスの機器など幅広いですね」
展示会で目標とするのは受注金額。展示会期間中と終了後に分かれ、上記のようにデータベースから動くのが中心だが、口頭での約束や見積もりへのサインを含めた、開催4日間の受注目標もある。昨年はその目標額を超えたという。
決断が早いのはベトナム人だ。既にプランを考えて来場する人が多いようで、展示してある機械を買う場合もあり、1日1台はその場で売れるそうだ。こうした顧客は機械そのものの品質と、機械を使って出来上がる製品の品質の、両方を評価していると大津氏は見ている。
「だから金額が高くても買っていただける。特に日系などの外資系企業から受注しているローカル企業は、所有する機械のブランドが大切で、弊社製品は広告材料にもなるようです」
大津氏はタイにも駐在していたが、ベトナムには独自で何かを作ろうとする、気概のあるメーカーが多いと感じている。ビンファースト、Zalo、Aberなどの独自商品の開発力もある。だからこそこの国で、特に今年は、ベトナムにはない技術を展示したいと計画している。
工作機械の展示会は日本、アメリカ、中国、ヨーロッパがメインで、東南アジアで最新技術を見る機会はまずない。日本に行かなくても見せたいと、アイデアを練っている最中だ。
「東南アジアで注目されるベトナムでは、国内外から展示会にやってきます。ビジネスチャンスをつかむと同時に、日本企業の最先端技術をシェアしたいと思います」
大型から専門まで毎年3回の出展 高品質で国内市場を切り開く
TAKIGAWA CORPORATION VIETNAM
General Director
瀧川 雄氏
印刷力をアピールするライト スーパーの陳列棚を再現
食品や日用品向けの幅広い高品質パッケージフィルムの、成膜・印刷から製袋までを行うタキガワ・コーポレーション・ベトナム。親会社と同品質の商品を製造・販売している。2010年頃から欧米への販売が急増し、海外進出でASEAN諸国を模索。最終的にタイとベトナムが候補となったが、タイには既に多くの製袋業者が進出済みであり、ベトナムの今後の経済発展と市場拡大を見込んで同地に決めた。現在では14ヶ国以上にベトナムから輸出している。
基本的にはEPE企業だが国内販売もしており、ビジネスチャンスの拡大やポテンシャル顧客の開拓を目的に、毎年3つの展示会に出展している。 パッケージや印刷の大型展示会PROPAK VIETNAM、Vietnam Print Pack FoodTech、コーヒーの専門展示会だ。最後はコーヒー豆等のパッケージが対象で、業種を絞ったもの。中でも一番重視しているのが、規模が大きく知名度も高いPROPAK VIETNAM。この展示会を例に同社の戦略を見ていこう。
同社製品の特徴は印刷から自社で始める高精度と高品質。そのためローカル企業のものより少々高価ではあるが、それでもパッケージでの差別化を望む企業が発注する。これが北米や欧州の顧客が多い理由でもあり、逆にベトナムでその感覚を持つブランドオーナーは少数派という。
代表例がペットフードや農薬のパッケージだ。ペットフードは市場が成熟して商品が多様になったことで、パッケージデザインのニーズが生まれた。農薬は農業用ではなくガーデニングなど個人ユーザー向け。どちらもベトナムに限らず新興国でのニーズは難しい。
「出展スペースは18㎡で、オリジナルのブースを設営しています。何より重視するのはライトの光で、商品の見え方が全然違ってくるからです」
同社の強みの一つは印刷技術であり、それを表現するのが商品展示の目的でもある。しかし、ライトの色や光の当て方でパッケージの色は微妙に変化するので、その調整に気を配っているのだ。近年ではスーパーマーケットの陳列棚を模した棚をブース内に設置し、来場者に対してその自社製品が並べられた状態を見せるようにした。
「商品の見え方をイメージさせることは、ブランドオーナーにはとても大切です。また、ブースの絨毯を二重にして、来場者の足の負担を軽減しています」
ブースのデザインには開催2ヶ月ほど前から動き、1ヶ月半前にはデザインを完成させて制作に入る。同社グループはドイツ、イタリア、アメリカ、日本、タイなどの展示会にも出展しており、最も力を入れているのがドイツ。グループ全体のコンセプトとしてブースのデザインを決めている。また、出展前には顧客やポテンシャル企業に展示会への招待状を送り、必ず事前告知を行っている。
価値を生むヒアリングで 出展後にフォローアップ
出展前には会場で名刺交換した「訪問者数」、ブースで話した「商談数」、相談されたり見積もりを送るなどの「引合い数」、最終的な「売上高」を考える。ただ、売上高には目標の数字があるが、ほかは特に定めていない。
注力しているのは展示会スタッフの教育だ。営業職以外の従業員もスタッフになるので、毎月1回1時間のレクチャーを実施し、開催1ヶ月前からは毎週となる。商品の特徴、他社と比較した優位性、サポート体制などの説明と同時に、来場者へのヒアリングもトレーニングで教え込む。質問項目はある程度決まっており、相手の商品や内容物、パッケージに求める品質や機能性、見積もりを送るためのサイズや個数などだ。
「国内向けか海外向けかも重要です。輸出品であれば相手国の品質基準が高い場合が多いため、弊社製品が採用される確率が上がります」
最初の商品説明で自社製品の特徴を印象づけて、その後で上記の情報を集める。特に、「以前に不良品で困った」、「新プロジェクトが始まる」、「パッケージをアップグレードしたい」などが聞ければ、ソリューション営業の可能性が広がる
同社では出展後のフォローアップが重要ととらえており、集めた情報からクライアントリストを作成して、担当者を決めてアポイントを取る。情報によってA、B、Cと分け、Aは最重要として早めにアポ取り、Bはお礼メールと見積もりなどのメール、Cはお礼メールのみ。Cは化学薬品用のパッケージなど、取り扱っていないニーズの企業などだ。コンタクトを取った後は、PDCAミーティングによりフォローアップしていく。
同社は顧客が困っている問題を解決するソリューション型の営業をしており、詳細なヒアリングで得た情報がここで活きてくる。昨年3月のPROPAK VIETNAMでは3日間で約150人と名刺交換し、優先順位を付けてアプローチした。目標売上には届かなかったものの、瀧川氏が来越して4回目の出展であり、この間に品質重視のブランドオーナーが増えてきたと実感している。
「スーパーなどでの商品陳列の差別化のために、パッケージに予算を割く企業が増えてきたようです。『どうにかならない?』といった引き合いも多くなってきました」
過去の出展の評価を元にして、翌年度の展示会を選定する。例えば、前回のコーヒーの展示会は効果が薄かったため、同種の別の展示会に変更した。新しい展示会には、まず営業活動を目的に来場し、ポテンシャルを感じ取れれば、出展を決定することもあるそうだ。今年3月のPROPAK VIETNAMには出展を決め、現在(取材時)は商品のサンプルを選定中だ。
「新商品はプロモーションのためにも展示したいのですが、他社に知られてお客様を取られる可能性もあるので悩んでいます。最近では日系以外の外資系企業も脅威になってきました」