多くの運送業者やトラックドライバーは、過積載が違法であることを理解しているが、様々な経費が増加する中で燃料代も上昇しているため、”やむを得ず”違反行為をおこなっていると説明する。
ハナム省出身のグエン・バン・タインさん(38歳)は、2か月以上前にホアビン省の企業で土砂を運ぶトラックドライバーの仕事に就いた。仕事の初日に提供されたトラックを一目見て、タインさんは荷台が大きすぎることに気付いた。しかし、雇われの身であるタインさんは、会社に対して特に何も言わなかった。採石場に入るといつも、掘削機のオペレーターがトラックの荷台に積み込んだ土砂を、指定された場所まで運んだ。タインさんは、過積載をしなければ会社に利益が無く、給料も出ないことを暗黙の内に理解し、余計な詮索はしないことに決めた。
しかし一方で、タインさんはトラックを運転中に警察に停められて、過積載をチェックされることを常に恐れてもいた。これは、タインさんが以前、規定通りの積み荷で冷凍トラックを運転していた時とは全く異なる状況であった。「基本的に過積載は危険ではありません。交通事故は、過積載が原因ではなく、主にドライバーの技量不足か不注意によって起こるのです。」とタインさんは話す。
6月中旬にタインさんが運転するトラックは、ホアビン省の交通警察の検問を受けた。タインさんのトラックの荷台の高さは150㎝もあり、検査証明書に記載された数値より22㎝も高くなっていた。運送会社は1400万VNDの罰金とされ、ドライバーのタインさんも250万VNDの罰金を受けた。罰金額を聞いたタインさんは、会社がドライバーの罰金まで負担してくれるのか、もし負担してくれなければ子供へのミルク代にも事欠くだろうと心配した。
タインさんと同様にホアン・バン・クイさん(35歳)も、ハノイの採石場のトラック運転書として5年以上に渡って月給1500万VNDで働いてきた。6月に交通警察にトラックを停められたとき、クイさんは必要書類を警察に提示できず、会社に電話をかけて支援を求めた。2時間後会社からは、罰金の半分を負担するとの連絡があった。
ドライバーは、道路を走るだけでも危険だが、積載基準を超えているトラックの運転は、更に危険だとクイさんは指摘する。「しかし、生活する必要があるので受け入れるしかありません。私がやらなければ他の誰かがやるだけです。」とクイさんは話す。
ハティン市で7トンから10トンのトラック10台を所有する運送会社を経営するチャン・ハイさん(40歳)は、物価が上昇しており、正規の運送料金では、表に出ないコストを賄うことはできないと説明する。このような状況で、ハイさんは、他の企業も同じことをしているとして、従業員に過積載を指示している。
ハイさんによると、固定費は、15人のドライバーの給与や食事代、トラックメンテナンス費用、銀行への利息支払いなどで毎月数億VNDに達する。運送会社はさらに、スムーズに事業をおこなうために”暗黙のルール”に支払った経費も確保しておかなければならない。
過去数年間は、ガソリン代が安かったので一つのプロジェクトでハイさんは数百万VNDから数千万VNDの利益を上げており、様々な費用の支払いができていた。しかし、2022年初旬ごろから現在まで、ガソリン代が大きく値上がりし、ハイさんの会社は”積み荷を水増ししないと成り立たなく”なっている。
ハイさんは、以前に取引先と鉱山で発生する土砂を1トンあたり5万VNDで仕入れ、道路建設現場に1トンあたり10~12万VNDで販売する契約を締結していた。一つのプロジェクトは短ければ1ヶ月、長ければ4~5か月かかる。しかし、この仕事を始めてから現在までにガソリン価格は1リットルあたり2万VNDから3万VND以上に上昇した。土砂の販売元も販売価格を1トンあたり6万VND以上に引き上げた。しかし、ハイさんの会社は販売先とすでに契約していたため販売価格を上げることが出来ず、ガソリン代による損失を被らざるを得なくなった。もし、この取引を破棄した場合、損失を補填する必要があるうえに、すぐに他の業者に仕事をとられてしまう。
「ガソリン価格が上がるたびに驚いています。毎日が不安でたまりません。」とハイさんは話す。そこで、10トントラックで13トンを運ぶようになった。大量に運べばその分売上も増える。例えば、1トンあたり6万ドンで仕入れた土砂を20㎞先まで10トン運ぶと60万VNDの利益が出るが、13トン運べば18万VND余計に稼ぐことができる。
ハイさんによると1万トンの土砂が必要なプロジェクトであれば、約1ヶ月で完了して1500万VND程度の利益が出る。昨年はCOVID-19の影響でトラックの稼働が少なかった。今年は、天候不良によって一時期、トラックの稼働が下がった。運送業は天候にも左右される。天気が良ければ快適に走行できるが、雨が降れば土砂が弛むので4日間も稼働が停止することもある。トラックが稼働しなくても、ハイさんはトラックのメンテナンス費用とドライバーの給料を支払わなければならない。
「荷台を拡張して過積載にすることは違法行為だと誰でもわかっています。でもそうでもしないと会社がつぶれてしまうんです。」とハイさんは話す。
企業以外に、自分のトラックを省有している一部のドライバーも過積載は、ガソリン価格の上昇への対抗手段だと説明する。
1年前にクアンチ省在住のグエン・バン・ナムさん(41歳)は、銀行から10億VNDを借りて、土砂の輸送事業をおこなうためのトラックを2台購入した。登録書によればこのトラックは8.5㎥の資材を運ぶことが可能とされていたが荷台を改造して、更に2㎥の輸送を可能にした。ナムさんによると、これは、取引先に運送費用の値上げが受け入れられなかったための苦肉の策だという。
ナムさんによれば、1㎥の荷物につき1㎞あたり3300VNDが取引先から支払われる。トラックの荷台を先述のように改造すると10㎞の輸送で33万VNDが支払われる。このうち燃料代金は22万VNDで、ドライバーの手当が3万VNDとなり、ナムさんには8万ドンが残る計算になる。
「利益は、資産の減価償却、債務の返済、銀行の利息と保険などへの支払いに充てています。雨の日と冬の時期は、ほとんどが休みになるので、積載量を水増ししなければ事業が成り立ちませんよ。」とナムさんは話す。
ナムさんは、車両と荷物の総重量は依然として国道の耐荷重を満たしており、省道や村道に入る時だけ橋や道路の耐荷重に制限があると主張する。しかし、このような車両が継続的に国道を走れば、道路が破損したり沈下する可能性がある。ナムさんは、「事故には様々な原因があって、過積載だけが原因ではありません。ドライバーが運転技術があり、速度制限を守っていれば危険な状況にも対応できます。」と話す。
過積載を無くすためには、輸送運賃を上げる必要があるが、既に相場が出来上がっているため、運送会社は取引先と交渉出来ずにいる。
過積載車両が、道路を損傷したり、市民生活に影響を与える状況は、何年も続いており、改善する兆しが見られない。6月4日には、ホアビン省で積載量の2.5倍の荷物を積んだトラックが横転し、横を走っていた乗用車に乗っていた3人が死亡するという事故が起きている。
交通運輸省のグエン・バン・テー大臣は、6月9日に積載量を10%以上オーバーしている車両に厳罰を与え、20%を越えていた場合は、車両をボッシュするという法案を準備していると述べた。
出典:20/06/2022 VNEXPRESS
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