各企業と専門家は、ビールや酒類の特別消費税を今後数年間は引き上げず、現行の税率計算方法に代わる方法を検討する必要があると指摘する。
2022年1月の臨時国会で、政府は特別消費税法を含めた8つの法律の改正案を提出した。政府が承認した2030年までの税制改革戦略によると、政府はタバコとビール、酒類の特別消費税引き上げに向けたロードマップを作成するよう関係省庁に指示している。
現在、特別消費税率はビールが65%、酒類がアルコール度数が20度以上か以下かに応じて35~65%となっている。
5月6日に開催された『将来的なベトナム飲料産業の回復と発展』と題したセミナーで、各企業と専門家は、企業が新型コロナの影響を受け、ロシアとウクライナの紛争問題によるサプライチェーンの混乱や製造原価の上昇といった様々な問題に直面している状況下で特別消費税を引きげるのは適切ではないとの意見を表明した。
ベトナムビール・酒類・飲料協会(VBA)のグエン・バン・ビエット会長は、2年間の新型コロナの影響によって飲料業界の生産量は20%減少しており、これはビール10億リットル分に相当すると述べた。
ベトナム中央経済研究所(CIEM)の調査によると、飲料メーカーの約半数が新型コロナの影響によって2020年と2021年に減収減益となった。調査では、79%の企業がコスト削減策を講じる必要があり、58%以上の企業が、新型コロナの影響によって生産規模の拡大を取りやめ人員を削減したと回答している。
新型コロナの影響によってベトナムの飲料業界は4~7%の労働力を削減し、労働者の平均収入は感染拡大前から7~10%減少している。
2022年に入って感染防止対策が緩和され、観光業や飲食業が再開されたことで状況は好転しつつあるが、原材料費やガソリン価格が大幅に上昇しているため、飲料業界の各企業の利益はそれほど改善しないとみられている。
ハイネケン・ベトナム渉外担当のホリー・ボストック部長は、特別消費税の増税は、飲料業界や観光業界に更に多くの負担と困難をもたらすと指摘する。現在、飲料業界が必要としているのは、新型コロナが事業活動に与えた影響を軽減させる支援政策と安定である。
一方で、専門家のゴー・チー・ロン氏は、政府が増税すれば、まっとうな会社ほど疲弊すると指摘する。「増税すれば製品価格が上昇しますが、これは、消費者の購買意欲を減退させます。これが増税によるマイナスの効果です。」とロン氏は話す。
同様の意見で、経済専門家のレ・ダン・ゾアイン博士は、アルコール飲料の乱用を制限するためには、非正規のアルコール飲料の流通管理を強化し、増税以外の様々な対策を組み合わせる必要があると指摘する。
VBAのベトナム飲料研究グループに所属する弁護士のファム・トゥアン・カイ氏によると政府は、税収をあげるために増税するのではなく、増税政策、ビールや酒類の消費制限政策及び、COVID-19の感染防止対策がアルコール飲料業界に短期的および、長期的に与える影響を評価し、全体的な税制改革を検討する必要がある。
「税制改革は税収を増やすことを目的とするのではなく、企業の成長を目的とすべきです。企業が成長すれば売上や利益は増加し、納税額も上昇します。」とカイ氏は説明する。
ビールと酒類に対する特別消費税法は、過去7年間で4回修正されているが、専門家のゴー・チー・ロン氏によると、これまでの修正はロードマップに従った相対的な税率の引き上げであった。これらの税率改定では、製品のアルコール度数を考慮していないという欠点があった。
ロン氏によると、アルコール度数に応じた税率の分類は、経済に関する各製品の異なる役割を適切に反映し、責任ある消費を促進することに繋がる。
「アルコール度数による税率の分類は公平で透明性が高く、価格ベースの税率計算よりも安定的に税収を増やすことにつながります。アルコール度数に基づいて税率を設定した方が、経済競争力が向上し、ビールや酒類の乱用を防ぐことにも繋がるでしょう。」とロン氏は話す。
ハイネケン・ベトナムのホリー・ボストック部長も工場出荷価格に対する課税方式は長年にわたって特別消費税の枠組み内に存在しているが、アルコール度数やアルコールによる弊害を抜きにして消費者がより安い商品を選択する方向に導いてしまい、社会的なコストを返って上昇させてしまうことに繋がっていると指摘する。
アルコール度数による税率分類は、シンガポールやEUなど様々な国で適用されている。最近では、2017年にスリランカがアルコール度数による税率分類方式に切り替えた。これによって南アジアのビール業界の経営環境が改善され税収が増加するとともに、違法なアルコール消費の削減にも貢献したとされている。
出典:06/05/2022 VNEXPRESS
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