いつもと違う日常では、いつもと違う失敗が起こるものです。昨年私が日本に帰国したのは、ホーチミン市の社会的隔離が最も厳しくなっていた8月後半。外出すらできなくなっていました。それでも一時帰国を決意したのは、到着空港でのワクチン接種と医師の診療です。2年近くも代理診察では薬の処方もできないと、妻が主治医から言われていました。
日常が崩壊した中での帰国は大変でした。搭乗前72時間以内のPCR検査と陰性証明書が必要なので、検査の予約表を提示して外出を許可してもらいました。空港へのタクシー移動が難しかったので、SACOという政府系レンタカー会社の車を手配しました。隔離ホテルへの移動に使われる車両で、運転席は完全に遮蔽され、運転手は見えません。
空港に着いて運転手が降りたのがわかり、急いで車を降りました。スーツケースを2つ受け取って空港内に入った瞬間、パソコンを入れたバッグがないことに気が付きました。手荷物用のバッグには特に重要な物を入れてあり、それを車の座席に置き忘れたのです。頭が真っ白になりました。
ただ、スマホは持っていたので、車の手配をしてくれた自社のスタッフに連絡。彼女が運転手に電話すると、20分ほどで戻れるとの返事です。本当に来てくれるのかと心配でしたが、まさに20分後に車が見えたのです! ベトナム人運転手への感謝の気持ちでいっぱいになり、自然と目頭が熱くなりました。日越の往復が自由になる日も近いようですが、私は貴重な経験をしたのかもしれません。