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【社会】ベトナム人の結婚生活に潜む毒薬

(C) VNEXPRESS

同窓会の後、高校自体の親友の夫が会社の社長や部長に昇進していることを知って、家に帰ったトゥー・クエンさんは、夫が万年平社員であると詰って怒りをぶつけた。

その日の夜、妻は長い溜息をついた。夫のホアン・バン・フンさんは、妻を抱き寄せて何があったのか聞いた。するとトゥー・クエンさんは「昔は私の方が彼女たちより可愛かったのに、今では彼女たちには家も車もあってブランド品で着飾っている。なのに私ときたら何もない。まさに女の運命は夫次第ね。」と言った。

その日のことを思い出すと未だにしこりを感じるとフンさんは話す。反論すればより大きな喧嘩になると知っているフンさんは、その日黙って壁に顔を向けたまま朝まで眠れなかった。

ハノイ出身のトゥー・クエンさん(33歳)が自分の結婚や夫を他人と比べるのはこれが初めてのことではない。誰に会ってもどこに行ってもトゥー・クエンさんは、いつも夫のフンさんとの比較を探し出す。友達が子供を抱いている写真をアップして子供が生まれたときに夫がどんな世話をしてくれたかを投稿すると、トゥー・クエンさんは、「やっぱりうちの旦那とは違うわ」と批判する。同郷の男友達が海外出張の写真を投稿しているのを見てトゥークエンさんは「彼は昔私に気があったけどふっちゃったのよ。あの時、付き合っていればもっと幸せになれたのに。」と悪びれることもなく話す。

「彼女の言葉だけを聞いた人は、私がお金もなければ仕事もないうえに妻も子供も大事にしない男だと思うでしょうね。」と35歳のフンさんは話す。

ホーチミン市7区に住むタイン・フーンさんも夫に対してフンさんと同じような気持ちを持っている。毎日夫はフーンさんに対して「お前がうちのお母さんの半分でも注意深ければ良かったのに」、「ホアおばさんは、子供にきちんとした格好をさせているのに、うちの子供達ときたらみすぼらしい恰好じゃないか。」「隣のクック夫人に服の選び方を教えてもらいなさい。彼女は部屋着のままでもおめかししたお前より綺麗じゃないか。」と言った言葉を浴びせる。

フーンさんは夫のドゥックさんと1年の恋愛の末に結婚した。結婚してすぐに妊娠し、上の子が生まれて1年もしないうちに2人目を妊娠して将来の予定が狂った。この2年間、フーンさんは家で子供の面倒を見ることしかしていない。家で不平不満を述べる夫の態度にフーンさんは戸惑い、徐々に疲れていった。

「誰だって、美しくなりたいし、幸せになりたいです。しかし、お金もなくて、両親の助けもなく一人で子供たちの面倒を見て、更にパートの仕事にも行かなければなりません。髪をとかしたり、鏡を見る時間もないのに、綺麗にしろとか言わないでほしいです。」とフーンさんはため息をつきながら話す。ドゥックさんは、工場で働いており残業も入れて1日14時間も働き、家に帰ると食事してシャワーを浴びたら、ベッドに横になって寝てしまう。

ジャーナリストのホアン・アイン・トゥ氏によると、人間はより高いステージを目指すもので、ドゥックさんやトゥー・クエンさんのように好んで他人と比較したがる傾向は一般社会でよくあることだという。愛するがゆえに、パートナーにより良い人間になってもらいたくて、このような発言をするのだ。しかし、トゥ氏は常に誰かと比較して相手を傷つける行為は精神的な暴力の一種でもあると指摘する。

「他人と比較する行為は、パートナーに対して自分が上位に立ちたいという気持ちの表れです。そして、多くの場合、繰り返し配偶者を他人と比較する人は、自分の行為が相手への虐待だとは夢にも思っていません。」とトゥ氏は話す。

妻を他人と比較するのは、一種の虐待行為に当たると聞かされたドゥックさんは大笑いした。ドゥックさんによれば、妻を悲しませる気は全くなく、自分自身を向上させてもらいたい気持ちからの発言だという。「私は、妻が自分を向上させるための参考になると思って言っているのであって、皮肉や傷つけるつもりは全くありません。」とドゥックさんは釈明した。

ドゥックさんの考えとは違い、家庭内暴力防止法の改正草案についての5月31日の国会の議論の場においてファン・ティ・ミー・ズン議員は、認識が難しい精神的な暴力行為の例として、夫が仕事から帰ってきても一言も口をきかなかったり、近所の人を一日中美人だと褒めたり、大した理由もなく一日中イライラした態度をとるといった行為を挙げた。

文化・スポーツ・観光省のグエン・バン・フン大臣は、身体的暴力と経済的暴力は特定が容易であるが、精神的暴力は特定することが困難だとの認識を示した。法案の草案を審査機関に報告した際には、審査委員の一人から、最近の風潮としてフンさんのように妻からもっと出世したりもっと稼ぐように圧力を受けることが家庭内暴力にあたるかという質問が出た。。

アメリカの心理学者であるロバート・パフ博士は、最近ではSNSの発展によって人々がお互いの生活にアクセスすることが容易になったため、他人との比較は避けることが出来ないものになっていると指摘する

どんな時でも携帯を開けば、他人の人生の一部が垣間見られ、比較の対象になる。「SNSは人生のほんの一部を反映しているにすぎず、SNS上の他人の人生と自分を比較することはエネルギーの無駄遣いです。」とパフ博士は話す。

同じく心理学者のチャン・キム・タイン博士は、他人と比較して相手を評価することは、その人の成長には全く寄与せず、単に相手を悲しませ、敵対的な感情を呼び起こすだけだと指摘する。

「他人と比較されればされるほど、人は自分が尊重されていないと感じるので、相手を軽蔑したり、憎んだりするようになります。そして最終的には結婚生活自体が崩壊する可能性があるのです。」とタイン博士は話す。

300人以上の読者が協力してくれたVnExpressの調査では、約90%の人が、パートナーが自分を誰かと比較した場合に不愉快になると回答した。

ホアン・アイン・トゥ氏は、結婚相手を他人と比較する行為は、結婚を破滅させる毒薬だという。

「自分たちが社会の中でどの位置にいるかを知るために、周囲の人たちを見渡すことは一般的なことです。そして、人生をより良くするために毎日努力を重ねることも普通のことです。しかし、他の誰かを基準として自分のパートナーを比較評価することは大きな間違いであり、大変な侮辱です。」とトゥさんは話す。

フンさんは、これほどまでに自分の妻を失望させている自分とは一体何なのか?と自問自答を繰り返すようになった。お互いが愛し合っていたとき、フンさんはトゥー・クエンさんを幸せにすると約束した。妻が自営業が好きなのを知っていたので、IT企業で働いていたフンさんは、故郷のハロン市で妻とレストランを経営することを計画し、管理者を採用した。

レストラン経営による収入で、妻と子供達は快適に生活できるようになり、フンさんの生活も安定してきた。しかし、COVID-19が計画を狂わせた。1年も経たずにフンさんのレストランは閉店に追い込まれ、多くの財産が失われた。長期間にわたる心労から、フンさんは睡眠薬をのまなければ寝れなくなってしまった。

フンさんには妻の支えが感じられなかった。妻のトゥー・クエンさんは、ただ他の家族と比較して悲嘆にくれるだけだった。愛する妻と自分自身のためにフンさんは、すぐにお金を稼ぐ方法を探した。フンさんは、株式投資のための資金を借りたが、焦り過ぎたために失敗し、借金がさらに増えてしまった。

フンさんは、家族思いのやさしい夫から気難しい無気力な男になってしまった。フンさん夫妻は損失を補填するためにハノイのアパートを売却しなければならなくなり、毎日些細なことで喧嘩が絶えないようになった。

結婚生活が破綻しかけたときに、トゥー・クエンさんはそのことにようやく気づいた。妻は、夫を他の人と比べるべきではないとわかっていたが、夫の成功を望んでいるがゆえに言葉を選ぶことが出来なかった。何度も他人と比べてきたことが、彼女自身をも苦しめていたことにトゥー・クエンさんは気づき、後悔した。

トゥー・クエンさんは、夫婦問題のカウンセラーに相談し夫婦で話し合うことにした。トゥー・クエンさんが座って夫と話をすると、自分の間違いがわかるようになった。トゥー・クエンさんは、家で子供の世話をしたり、友達のSNSの写真を見たりする代わりに、仕事に出るためにお手伝いさんを探し、夫と一緒に借金を返すことを決めた。仕事をすることで、トゥー・クエンさんは、お金を稼ぐことは簡単ではなく、SNSにあるのは人生のほんの一部にすぎないことを理解した。

「自分の夫は部長だと自慢した友人の夫には愛人がいるのに彼女は離婚できずにいました。また、社長の妻だと自慢した別の友人は、スカートを1枚買うにも夫の許可が必要でした。」とトゥー・クエンさんは穏やかな表情で話した。

トゥー・クエンさんは、自分の夫はまだ成功してはいないものの、いつも妻のことを考え、妻に化粧品を買うために自分はバーゲンセールの服を買う人だということに気付いた。

多くの専門家がトゥー・クエンさんの解決策が適切であったことに同意する。キム・タイン博士は、夫婦は、相手を他人と比較するのではなく、率直かつユーモラスに相手の弱点について話し合うことを勧める。

同時に、状況を改善するためのアドバイスも付け加える方が良い。「そのとき、あなたのパートナーは、あなたが自分の味方であり、自分を軽蔑したり嘲笑したりするのではなく、結婚生活をより良いものにするために応援してくれているのだと感じるでしょう。」とキム・タイン博士は話す。

フンさんとトゥークエンさん夫妻は、お互いの答えを見つけた。一方で、フーンさんは、辛抱強く夫のドゥックさんが変わるのを待っているが、ドゥックさんは変わりそうもない。「つまり、変わらなければいけないのは、私であり、この結婚生活であり、彼ではないのでしょう。」とフーンさんは小さな声でつぶやいた。

出典:14/06/2022 VNEXPRESS
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