ベトナム共産党政治局が発表した決議「09-NQ/TW」により、ホーチミン市は2030年までに約200kmの都市鉄道(メトロ)を整備し、2045年までに都市鉄道網全体を完成させる目標を掲げた。
同決議は、トー・ラム書記長兼国家主席が政治局を代表して署名したもの。現在進行中および計画中の各路線が予定通り進めば、目標達成は現実味を帯びてきている。
一気に動き出した大型メトロ計画
2030年までに約200kmのメトロ整備を完了するには、残り約4年で180km超を開通させる必要がある。
ホーチミン市メトロ1号線が全長19.7kmの完成まで約20年を要した経緯を考えれば、かつては非現実的ともみられていた目標である。
しかし、この1年ほどで複数の大型案件が急速に動き始めたことで、状況は大きく変わりつつある。
ベンタイン―カンゾー線、異例のスピード進行
象徴的なのが、民間企業ビンスピード(Vinspeed)が投資主体となるベンタイン―カンゾー線である。
同路線は、ベトナム初となる民間企業主体の都市鉄道プロジェクトでありながら、計画立案から投資承認、2025年12月19日の着工まで、わずか1年未満という異例のスピードで進行した。
これはホーチミン市メトロ1号線の準備期間の約6分の1、同2号線の約16分の1、ハノイのカットリン―ハドン線の約3分の1に相当する。
当初約48.7kmだった路線は、市人民委員会によるルート調整後、総延長約53.8kmへ拡大された。
現在、ビンスピードは駅舎や鉄道橋などの建築デザイン選定を進めている。市当局は2026年第4四半期までの用地引き渡し完了を要求しており、関連インフラ移設も急ピッチで進められている。
計画通り進めば、2028年には時速350km級の高速メトロがホーチミン市中心部とカンゾー海岸地区を直結する見通しだ。
トゥーティエム―ロンタイン接続も加速
民間企業THACOが投資するベンタイン―トゥーティエム線も、優先案件として急速に進められている。
同路線は、将来的にロンタイン国際空港への接続を担う重要インフラとして位置付けられており、2026年4月29日に正式着工した。
全長約6kmで、ベトナム初となる河川地下通過型メトロとなる予定で、2030年完成を目指している。
さらに、トゥーティエム―ロンタイン線(47.7km)も並行して進行中で、市当局は7月2日以前の着工を要求している。
メトロ2号線や6号線も進展
2026年1月に着工したメトロ2号線(ベンタイン―タムルオン間、11.3km)でも工事が本格化している。
ホーチミン市当局によれば、用地収用や資金確保が完了しているほか、特別政策適用により投資手続きや設計基準、入札問題など長年の障害が解消されたという。
このほか、2026年中には以下の案件も着工予定となっている。
- メトロ6号線第1期(タンソンニャット空港―フーヒュー間、22km)
- メトロ1号線延伸(スオイティエン―新ビンズオン市間、31km超)
いずれも約4年間で建設し、2030年の運行開始を予定している。
TOD開発で資金調達へ
ホーチミン市は、これら巨大インフラ整備を支えるため、「TOD(公共交通指向型開発)」を中核とする新たな資金調達モデルを打ち出している。
市は2026~2030年の投資誘致計画として、総延長374km超、総投資額約981兆VND規模となる9路線の投資募集を公表した。
TODモデルでは、メトロ駅周辺や沿線地域の土地利用権を開発・競売し、インフラ整備によって上昇した地価利益を回収する。
得られた収益を次のメトロ建設へ再投資することで、公的債務への依存を抑えながら都市鉄道網を拡大する狙いだ。
「計画」から「実行段階」へ
ホーチミン市は現在、
- 用地回収の前倒し
- 技術規格の統一
- 駅舎デザインコンペ実施
- 民間資本誘致
などを並行して進めている。
従来の「構想段階」にとどまっていた都市鉄道網を、実際の都市成長エンジンへ転換する局面に入りつつある。
もし現在のスケジュールが維持されれば、2030年までに約190km、2035年には14路線・462km、2045年には19路線・総延長約700kmの巨大メトロ網が形成される見通しである。



















