METALEX Vietnam 2019
ベトナム最大級の工作機械や金属加工の展示会「METALEX Vietnam 2019」が今年も開催された。10月10日~12日にホーチミン市7区のSECCに、25の国と地域から500ブランド以上が集結。3日間の来場者は1万5945人だった。
「パートナー国」はインド
毎年恒例のMETALEX Vietnamに、今年は開催内容で変化があった。その一つはインドを「パートナー国」としたこと。ポスターなどに載るMETALEXのロゴの下に青字で「INDIA」と入れて一体感をアピール。オープニングセレモニーでもホーチミン市インド総領事と、同国技術の貿易と投資を促進するEEPC Indiaのダイレクターが揃ってスピーチした。
A1ホールの入口前には工具、小型部品、材料などインド企業のブースのみが連なり、会場内のインドパビリオンと合わて数十社が出展。ベトナム内でインドの製造業はマイナーだが、大展示会と連携して大々的にアピールする手法は斬新と感じた。
会場内の海外パビリオンで出展数が多かったのはやはり中国系企業。常連国である台湾、シンガポール、韓国は少なめに感じ、その分も含めて中国の存在感があった。ただ、大ブースでの展示は多くなく基礎ブースがほとんどで、特に壁際に近いブースは場所の問題もあるのか来場者はあまりいなかった。
その中でジャパンパビリオンはかなり検討していた。中小企業を連れた自治体も東京都、大阪府、石川県、神奈川県、名古屋市、相模原市など数多くあり、多彩な業種が各社の製品を並べていた。覗いていく来場者もあり、もっと呼込みが多ければ来てくれるのではと思った。 もうひとつの変化は、溶接機器を集めた「Welding Vietnam 2019」が初めて併催されたこと。出展企業はさほど多くなかったが、新しいジャンルはやはり人目を引く。来場者のニーズとマッチするかは終わってみないとわからないが、ここでは珍しくベトナム企業が注目を集めていた。
ベトナム企業の技術を出展
その企業はTAN THANH WELDINGで、出展は2回め。溶接機器の製造と販売を行い、日系企業など外資系企業にも納入実績があるという。出展したのはCNC溶接機が多く、来場者が興味を持っていたのはスポット溶接機。スタッフが実演していた。
「溶接機は輸入品が多いですが、ベトナム人でも大型マシンが作れることを紹介したくて出展しました。外国人はベトナム製の溶接機を知りませんから」
スポット溶接機は中国製と同じ価格帯だが品質はこちらが上と、社長のNguyen Duc Tien氏は語る。彼によると、ベトナム企業の出展は同社だけだそうだ。
香港の大手モールドベースメーカーの龍記集団(LKMグループ)は昨年に続いて2回めの出展。大手メーカーの進出が多いハノイのほうが業績が良いが、中小企業が集まるホーチミン市で顧客を開拓するのが目的だ。
「お客様は金型メーカーですが、日本の大手メーカーで注文を聞いています。特に新しい自動車やOA機器などを作る動きがあると、優秀な金型メーカーを聞かれます」
ただ、日系金型メーカーの情報があまりなく、本社から中国、台湾、香港などの金型メーカーに連絡して、そこのベトナム法人を紹介してもらっているという。日系金型メーカーにとってはチャンスかもしれない。
「中国、台湾、香港のメーカーの金型の品質は悪くありません。ケースバイケースですが、優れた工作機械と材料があれば、『匠の世界』ではなくなっているのではないでしょうか」
東京と大阪の中小製造業
日本の自治体からは東京都と大阪府に話を聞いた。東京都中小企業振興公社は昨年に続いて2回めで、「TOKYO SME」として14社が出展した。このうち、代理店を探す企業が9社、生産委託先を探すのが5社。代理店探しではメカトロ系の業種が多いそうだ。
「皆さん中小企業ですから、進出ではなくベトナム企業に生産を委託して、現地や近隣諸国での販路拡大を考えているようです」
主催者のReedTradexの他、ベトナム商工会議所やホーチミン市商工局と連携してベトナムの製造業を紹介してもらうという。事前に出展企業の資料を渡して、興味を持った現地企業とマッチングさせる試みだ。
「タイでもMETALEXに参加しています。タイに比べるとベトナムの規模は小さいものの、市場の伸びを感じており、ビジネスチャンスを探したいですね」
大阪産業局はベトナムでの展示会に8年連続出展しており、ほとんどがMETALEX Vietnam 。今回出展したのは6社で、委託先や代理店などパートナー企業を探すのと同時に、ベトナム進出の可能性調査が目的の企業もあるそうだ。
「毎年7~8社が出展し、そのうちの2社がその後進出するような割合です。2012年は出展8社中、結果的に4社が進出しました。中小企業なのでホーチミン市が多いですね」
前日の9日には「大阪企業とのホーチミン商談会&情報交換会2019」をホーチミン市内で開催した。ベトナム企業との個別商談や情報交換が目的だ。
工場設立から委託生産に転換
生産委託を考える中小製造業の成功例と呼べるのが、金属加工の吉本製作所だ。ベトナムのサプライヤーに生産を任せて低コストを実現し、最終的な品質管理は日本で行う。2014年にホーチミン市に事務所を設立した。
「東南アジアへの進出を考えてタイやミャンマーなども視察しましたが、相性がいいとベトナムに決めました。当初は生産拠点を設立する予定でしたが、弊社の社長がローカル企業のベトナム人社長と出会い、考えを変えました」
その会社は品質や納期などが優秀で、ベトナムで生産できるのなら、コストが掛からない商社的なスタイルにしようと判断した。100社以上の現地工場を視察し、品質、納期、コスト、対応力で納得できる会社を見つけて、現在は常時15社程度のサプライヤーに委託している。
産業用機械部品の金属加工が多く、数十から100程度の小ロットが中心。こうして出来上がった部品を展示しており、興味を持った日本人来場者と話し込むなどのシーンも見られた。
「弊社も工場を45年やっています。社長は、『古い機械を使って油にまみれて働く姿は、まるで昔の日本だな』と言ってますね」
ちょっと珍しい気化性防錆紙を展示していたのがアドコート。現地代理店との共同出展で、ベトナムの展示会には初出展とのこと。金属部品のサビを防ぐシートで、日本では大手の自動車メーカーや機械部品メーカーに納入している。ベトナムでも日系大手メーカーが顧客で、彼らが南北アメリカやヨーロッパなどに輸出する際に使われているという。
「資料を入れた袋を渡す数で換算すると、初日の午前中で150人ほどでした。1日で300人、3日間で1000人の方にアピールできればいいですね」
顧客はハノイの日系大手メーカーが多いが、中小企業が多い南部ではまだ開拓できておらず、気化性防錆紙を広く提案していく。
展示会に出て気づいたこと
LIXIL GLOBAL MANUFACTURING VIETNAMの出展は7回目ほどだが、当初は歴史の長いタイの姉妹工場から出展しており、3年ほど前からベトナム現法での出展に変わった。展示会に出てみて、建材メーカーとしてのLIXILは知られていても、産業用アルミ形材のOEM事業は知名度がなかったと振り返る。
「来場者の反応は二極化していて、まずベトナム企業は弊社を知らない。日系企業はOEM事業を知らないか、日本向け輸出のみだと思っている人が多い。それが初出展でわかりました」
そこで2回めからはブースを大きくして、アルミ製部品のサンプルを展示した。来場者からは「去年も見たよ」などの声がかかり、徐々に知名度は上がっているようだ。前回は米中貿易戦争のためかアメリカ企業の来場者が増えたので、今年も様子を見たいという。
「業種によって求める品質やレベルがかなり違うので、この場での受注は難しい。展示会は種まきだと思っています」
ポンプなどの耐蝕機器を製造するセイコー化工機は2回めの出展。代理店探しがメインだが、ベトナム現法を知らない日系企業が多いため、自社アピールも目的だ。展示したのは主力製品の耐蝕ポンプや耐蝕送風機、腐食性ガスを除去する湿式スクラバー。販売先は半導体工場、化学工場、メッキ工場などだそうだ。
「新しい来場者と知り合えて、新規顧客の可能性が広がっています。ただ、昨年よりも小さなブースが増えた気がします。お客さんが来てくれる理由は様々ですが、結局は来場者の総数がお客さんの数に影響すると思います」