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ベトナムビジネス情報Vol102|
環境型の工業団地、新たに始動 Long Hau industrial park

南部ロンアン省にあるロンハウ工業団地は、緑の多い環境型の工業団地だ。現在は第3期にあり、今後は新型の工業団地やロジスティックスエリアの建設、新しいサービスが始まり、ダナンへも進出する。そのプロジェクトを紹介しよう。

第3期を新規分譲中

ロンアン省で2006年5月に会社設立された後、ロンハウ工業団地は、2007年からプロジェクトをスタートさせた。第1期は137.2haの規模で入居企業を募集し、2009年には第2期の108.48haが始まった。この2つのエリアで既に90%以上が埋まっている。
 ロンハウ工業団地が選ばれる理由の一つは立地だろう。ホーチミン市中心部から19km、新都市フー・ミー・フンエリアから12km、ニャーベ郡のサイゴン・ヒエップフオク港から3kmと利便が良いのだ。ロンアン省のベンルックとドンナイ省ロンタインを結ぶ高速道路が開通すれば、高速からは5kmの距離となる。また、ホーチミン市7区からは20分程度と通勤圏内で、実際にここから通う日本人も多い。
 ロンハウ工業団地は工業団地向けの工業用地、256㎡から借りられるレンタル工場、各企業のニーズに合わせたオーダーメイド型レンタル工場を提供している。全体では工業用地が多少多く、大手企業は入居しているものの、主なターゲットは中小企業だ。
 2016年からは124haの第3期が始まっており、現在は60%ほどが埋まっているが入居企業は募集中。第1期~第3期の入居企業は合計170社ほどで、ベトナム企業が約半分、日系企業が約25%と2番目に多く、韓国、アメリカ・オーストラリア、シンガポール、EUと続く。

環境に留意した工業団地

 2015年8月に着任した、日系企業向けの担当者であるInvestment Promotion Managerの奥倉敏夫氏は、この3年の変化をこう語る。
「自動車のPDI企業さんや、生活用品メーカーさんの大型倉庫などがそれぞれ約5haの敷地で入居しました。食品容器や冷凍・冷蔵倉庫など、食品関係の企業さんも増えています」
 PDI(Pre-Delivery Inspection)とは自動車納車前整備と呼ばれ、自動車をディーラーに納車する前にエンジンやブレーキから電装系、内装系までを検査する仕事だ。ここではインドネシアやタイからの輸入車を中心に行われているそうだ。また、ロンアン省はメコンデルタなどからホーチミン市に運ばれる食品の最終到着場であり、7区など中心部にも近いので、食品関連の企業は多いという。
 実際、同工業団地の入居企業は金属加工、機械加工、鉄鋼、縫製、化学、物流、プラスチック成型など業種が広いのだが、1番多いのが機械系で2番目が食品系だ。それはロンハウ工業団地が当初より注力している、自然や環境への対応と無縁ではないだろう。

 敷地内に入るとすぐにわかるが、樹々の多さが目に留まり、渡ってくる風が心地よく感じる。各社の工場に隣接したスペースや公共施設にも樹木や芝生を植えており、ロンハウ工業団地が管理。今号の特集で取材したRRFRAN GREEN FRAMの田辺CEOも、「緑が多く、環境や自然を考えていることから選びました。食べ物を作っているのに埃が舞う工業団地ではね」と語る。
 オフィス棟近くには入居企業用の大型レストランがある。大きな池のほとりに建つ茅葺き屋根の風情ある施設で、室内が吹き抜けとなっていて居心地が良い。サービスに対しても環境意識が強く、同工業団地では入居企業の排水処理を引き受けているが、それだけに終わらずこの水を浄化して企業に販売。各社は散水や工場の清掃用などに使っているそうだ。

新たなサービスを開始

 ロンハウ工業団地には土地用地エリアとレンタル工場エリアがあるが、レンタル工場が手狭になって自社工場を持ちたいケースも出てくる。そうした企業のためには、レンタル工場エリア近くの第3期内に9haの土地を造成中で、希望者の移転候補地としてもらう。設備や機械の移動は楽だし、他の工業団地に移転して新たにワーカーを採用する手間もなくなる。
 また、第3期の隣には55haの居住エリアがあり、ここに隣接する形で第3期内の第2期を計画。現在はマスタープランを作成中で、面積は100haを予定している。将来はここにも自社工場の移転候補地を作るという。
 入居企業向けのサービスとしては他に、第2期と第3期の間にロジスティックスエリアを設ける予定だ。2ヶ所を作る考えで、2019年からプラン作りに入る。イメージとしては仕分け作業等を極力自動化させた最新倉庫で、大手EC企業が持つような巨大なサイズ。入居企業の利用を前提にロンハウが開発する予定だが、物流企業とパートナーを組むこともあり得るという。
「新しいレンタル工場も建設しています。一つは『T-4コンパウンド型レンタル工場』で、第3期と隣接した第2期内で、1000~1200㎡のA区画と900㎡のB区画からなります。Aで5つ、Bで4つの区画が入る予定で、複数の区画を結合できることから、コンパウンドという名となりました。今年の12月から引き渡しが始まります」

 こちらが従来型のレンタル工場とすれば、ユニークなのがロンアン省で初となる6階建ての「ビル型レンタル工場」だ。居住エリアに近いヒェップフォック通りに建てられ、貸出面積は100~3330㎡とバリエーションが広い。空調などの工場設備やスプリンクラーなどの防火設備が完備されているので初期投資が削減でき、荷物の輸送には幅2.8mのカーゴリフト(2t)が2基ある。プロのセキュリティチームによる24時間365日の監視体制。最上階の6階はオフィスになる予定で、耐荷重は1階が1t/㎡、2~6階が600kg~800kg/㎡。2019年6月頃の完成を予定している。

今年もマッチングイベント

 居住エリアはワーカー向けの寮だけでなく、事務スタッフ向けのファミリールーム、外国人用のサービスアパート等も含まれ、部屋数は全部で約600室。スーパーマーケットやクリニックもあり、例えばクリニックではスタッフの健康診断などもできるので、便利でありがたいと評判だそうだ。
 2019年3月に完成予定なのが2階建てのサービスセンターだ。広い駐車場を持ち、オフィスの他にスーパーマーケット、銀行、カフェなどが入る予定だ。
「3年前には全体で1万人強だったワーカーさんが、今では約2万人に増えました。それだけの人が働くのですから、対応した設備の拡充は欠かせません」
 その他、入居企業へは税務、法律、ワーカー採用などのアドバイスがあり、これらはカスタマーサービス部が対応している。他の工業団地から移転してくる企業もいるが、多くはベトナム初進出で入居するため、会社設立のサポートから操業までの労務、法務、財務といった支援サービスを行う。そして、入居後も様々なカウンセリングやセミナーを開催。特に会計系の法律は良く変わるので、当局の担当者を講師として招聘し、各社のチーフアカウンタントが参加するセミナーなどを開催している。
 サービスで一風変わっているのが、昨年11月に開催した「ロンハウサプライヤーデー」。入居企業だけでなく近隣の工業団地、ビンズン省など遠方の工業団地からも製造業各社が参加し、合計300社余りが集まったという。
 裾野産業が成長途中のベトナムでは、サプライヤーの発掘と現地調達が各社の悩みとなっているが、そのためのマッチングイベントだ。ブースで自社製品を紹介したり、ビジネス交流が行われたりと評判は上々。そのため、今年11月には第2回を開催予定という。

 こうした多くの活動が評価されたのか、今年8月に開催された「ロンアン省企業の統合と発展」の競争運動2017~2020年期概括と2017年総括会議において、ロンハウ工業団地は1位となる努力賞を獲得した。同省での工業団地での授与は同工業団地だけで、努力賞の獲得は2年連続という。

ダナンにレンタル工場で進出

 今後、ロンハウ工業団地はダナンにも進出。ダナンハイテクパーク内の裾野産業エリア約30ha内に、中小企業向けのレンタル工場を建設する。その第1号として2019年3月には1haのレンタル工場が完成予定で、今年の9月17日には、投資ライセンス授与式、第1号企業の予約書の署名式などが同地で開催された。
「ダナンは観光業やホテルなどへの投資は多いものの、製造業や工業系が少ないようです。裾野産業関連事業は弊社がロンアン省で培ってきた経験を活かせるので、十分に支援できると考えています」
 新しいサービスやプロジェクトが数多く始まっているロンハウ工業団地。今後も注目度が高まりそうだ。