ベトナム商工会議所の「ベトナムの高齢者介護サービス市場展望」レポートによると、2035年までに2000万人の高齢者介護サービスの潜在顧客を有するとしている。ベトナムでは高齢者を60歳以上と定義しており、国連人口基金によると60歳以上の高齢者人口は2019年に総人口の12%、2050年までに25%に達する見込みだ。
ベトナム政府は2030年までに「高齢者特有の疾患を早期発見・治療する健康診断サービス」の施行を発表。ただ、家族が高齢者の身辺の世話や経済的支援をする状況は変わらないだろう。公的支援に頼れない今、介護疲れによる精神的・肉体的虐待といった社会問題が深刻化する前に、民間で問題解決の動きが出始めている。
例えば、家事代行サービスだ。以前、富裕層は住込み家政婦を雇っていたが、最近は必要な時にアプリやネット経由で時給制の家政婦を依頼できる。平日1時間6~9万VND、祝日は10~30万VND程度で、富裕層でなくても利用できる価格帯が魅力だ。家事に限らず食事、入浴、排泄の介助など高齢者介護サービスを提供している企業も存在する。
新型コロナ禍により、家事は「家族がすべき」から「外注するほうが快適だ」へと価値観の転換期を迎えているベトナム。元々、子供の世話を人に頼むことに抵抗がないため、介護も「専門スキルで安心の訪問サービス」から「医療面もカバー可の入居サービス」へと、消費者の需要が変化するのは自然な流れだろう。
今後は少子化による高齢者の一人暮らしが避けられない同国において、介護先進国の日系企業は有利な状況であると言える。