―― 最近、使用者は従業員の社会保険証の原本を預かってはならないと聞きました。それはベトナムの法令上禁止されていることでしょうか。
フィンチー 社会保険法上は、使用者が従業員の社会保険証を預かることを正面から禁止する条項は見当たりません。
ただ、従業員は社会保険証を管理する権利を有する旨を定めているため、使用者が従業員に社会保険証の提出を求めるのは、従業員の権利に反すると判断される可能性があります。
―― ただ実際には、従業員が入社する際に、社会保険証の提出を求める会社もあるのではないかと思います。その理由は何でしょうか。
フィンチー 色々な理由があるとは思いますが、その一つは、旧社会保険法では使用者が従業員を雇用する際、その従業員の社会保険証を預かる責任を負う旨が定められていました。
これに従い、かつては使用者が従業員が入社する際に社会保険証の提出を求め、その従業員が退職するまで預かっていました。
しかし、旧社会保険法は2016年1月1日に廃止されました。現行法上は、使用者が従業員の社会保険証を預かる責任がある旨を定めた条項は削除され、逆に上述のように、従業員が社会保険証を管理する権利を有する旨の規定が新しく設けられています。
そのため、もし旧社会保険法に基づいた社内規定がそのまま残っている場合には、現行法に反する可能性がありますので、これを変更する必要があります。
―― なるほど。法令の改正に合わせて社内規定を見直すことは大切ですね。