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【観光】ビザ緩和から1年、観光業への影響は?

(C) VNEXPRESS

ベトナム政府は2023年8月15日からビザの緩和政策を実施し、日本など13カ国に対してノービザの滞在期間を45日間に延長した。
それから1年が経ち、海外からの旅行者は回復の兆しを見せている。

昨年からのビザ緩和政策により、スペイン人のマリア・サンチェスさんは、ベトナムで3週間滞在した後でカンボジアに1週間滞在し、その後再びベトナムでの会議に出席するためベトナムに入国することができた。

「旅行の計画が楽になりました」とマリアさんは話す。ノービザの滞在期間が45日に拡大されたことで、マリアさんは、ビザの有効期限を気にすることなく、様々な都市に滞在して旅行を楽しむことが出来た。

ベトナム政府は、2023年8月15日からドイツ、フランス、イタリア、スペイン、イギリス、ロシア、日本、韓国、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ベラルーシの13カ国の国民に対してノービザの滞在期間を15日間から45日間に拡大した。ベトナム政府はさらに、全ての国の旅行者を対象に滞在期間を30日から90日に延長し複数回の入国が可能なe-visaを発給することを決めた。

「この新しい政策によって旅行者はビザ申請の時間と労力を節約することができ、ベトナムの観光業界に少なからぬ恩恵をもたらしました」とアジア観光開発研究所のファン・ハイ・クイン所長は述べた。

ベトナム観光諮問委員会(TAB)のホアン・ニャン・チン事務局長は、ビザ緩和政策が海外からの旅行者誘致に重要な貢献をしていると指摘する。ビザが緩和された日から1年間で海外からの旅行者数は大幅に増加している。2023年8月1日から2024年7月31日までにベトナムを訪問した外国人旅行者数は延べ1600万人近くとなり、コロナ前の2018年8月から2019年7月までの99%近くにまで回復している。

2024年1月から7月までの海外からの旅行者数は1000万人近くに達しており、2019年の同時期と比べて102%増となっている。ビザ免除対象である13カ国からの入国者数は370万人以上で前年同期の1.4倍に達し、全体の37%を占めている。

観光局の統計によれば、ビザ免除対象国は今年7か月間で成長した市場の上位にランクされている。韓国は、前年比37%増となっており、日本が34%増、ロシア75%増、イタリア61%増、スペイン38%増、フランス33%増、ドイツ27%増、スウェーデン27%増、デンマーク26%増、イギリス25%増、ノルウェー21%増と軒並み増加した。

ビザ緩和政策は、旅行会社がインバウンド(海外からの旅行者)向けの市場を開拓するのに役立っている。Vieluxtourの広報部長であるチャン・ティ・バオ・トゥー氏は、外国人旅行者のピーク時期(2023年10月から2024年4月)の同社の顧客数は、前年同期と比べて45%増加したと話す。2024年1月から7月までの同社の顧客数も前年同期と比べて50%増加しており、最も伸び率が高かったのは、ノービザ滞在の対象国であるフランスとドイツだった。ノービザ対象国であるその他の11カ国についても前年同期と比べて約30%伸びている。

ベトトラベル社のフイン・ファン・フーン・ホアン副社長は、今年のピークシーズンに同社は9000人以上の海外からの旅行者を受け入れ、前年同期から250%以上も増加したと話す。2024年1月から7月にかけて同社では1万人の海外からの旅行者を受け入れており、前年同期から220%以上伸びた。このうちノービザ対象国である日本と韓国からの旅行者が最も多かった。ベトトラベルによれば、ノービザでの滞在期間が延長された13カ国だけで見れば、受け入れた旅行者数は前年同期から300%も増加している。

ベトナムへの海外からの旅行者受入れを専門としているVivu Journeys Vietnamのトゥイ・チャン社長によれば、今年の海外からの旅行者受入れ人数が1万人を突破し、昨年の同時期から倍増している。

ホアン副社長によればビザ緩和政策と旅行会社の努力によって、ベトナムの旅行業界は、今年、海外からの旅行者の受け入れ目標である1700万から1800万人を達成できる見込みだ。

TABのチン事務局長によれば、海外からの旅行者の質も向上している。ビザ期限の延長によって旅行者の滞在日数も伸び、支出額も増えた。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によれば、2023年にベトナムは1260万人の外国人旅行者を受け入れ、観光収入は203兆VNDを超えた。外国人旅行者の一人あたりの平均支出額は1616万VNDとなっている。これに対して2019年の一人あたりの平均支出額は1534万VNDだった。平均の支出額の伸びはそれほど高くないが、ビザ緩和政策の影響が出ていることは間違いない。

Vietluxtourのトゥー氏は、ツアーにもよるが外国人旅行者のベトナム滞在期間は昨年同期に比べて10~30%延びていると話す。トゥー氏は、期待通りとまではいかないものの滞在期間が延びたことで、支出は増加しているとコメントした。

ベトナムのビザ緩和政策は、他国との競争力向上にも役立ち、海外の旅行者から見たベトナムのイメージがさらに魅力的になった。TABのチン事務局長によれば、ベトナムのイメージアップは、ベトナムの旅行業界がより強く発展するために重要な要素だと指摘する。

世界経済フォーラム(WEF)の2024年の旅行・観光開発能力指数(TTDI)によればベトナムの国際開放度スコアは2021年から2ランク、2019年から3ランクアップして80位となった。一方でインドネシアは27ランクダウンの69位、タイも4ランクダウンの44位と順位を下げている。フィリピンは1ランクアップして62位から61位に上昇した。最も開放性が高かったのはシンガポールで2021年から2ランクアップして1位となった。

トゥー氏によれば、ベトナムの観光産業が売上と旅行者数を継続的に拡大させていくためには、ビザ緩和政策と共に観光地の質を向上させ、世界に告知していく取り組みが必要だ。旅行者が増え、滞在日数や消費が増加すればベトナムの経済発展に貢献し、国の税収を増加させるだけでなくベトナムと海外との文化交流促進にも役立つ。

外国人観光客を専門とするツアーガイドによれば、ベトナムを訪れた外国人旅行者の殆どは、ベトナム旅行を高く評価をしている。しかし、旅行者からは、日中の観光活動に比べてナイトエンターテイメントが不足しているとの声が聞かれる。また、外国人旅行者は、ベトナムのことをより深く知るために様々な言語での観光プロモーションを実施することを求めている。

2024年1月から7月までのベトナムを訪問した外国人旅行者数でトップ10に入っているオーストラリアからの旅行者の多くは、オーストラリアにもビザ免除規定を適用してほしいと希望している。スペイン語と英語のツアーガイドを務めているクアック・チョン・タンさんによれば、オーストラリアからの旅行者は、物価が安く長期滞在できるベトナムを好んでおり、旅行時には惜しみなくお金を使う。

TABのチン事務局長は、ビザ緩和政策のメリットを最大限に活用するために、ベトナムの旅行業界には具体的かつ柔軟な戦略が必要だと指摘する。

ベトナムは海外からの旅行者を惹きつけるために、新たなビザ政策と魅力的な観光地についての宣伝を強化しなければならない。その為には、様々な旅行関連の国際展示会に参加し、在外公館のWEBサイトを使って広範な情報を提供するなどの試みが必要とされている。チン事務局長によれば、海外にあるベトナムの観光促進事務所は、海外の観光客誘致にとって非常に重要な役割を果たしている。

今年2月に発行された包括的かつ迅速で持続可能な観光開発の促進に関する首相指示で、ベトナムがビザ免除対象国をさらに拡大し、国境ゲートでのビザ発給を試験導入することが重要なハイライトとして盛り込まれている。TABのチン事務局長は、これは正しいアプローチであり、周辺諸国の一般的な方向性と一致していると話す。ビザの緩和政策は観光客の誘致を促進するだけでなく、国際的なビジネス交流や海外からの投資の促進にも貢献する。

WEF 2024において国際開放度が高く評価されたのがマレーシアで、前回から10ランクアップして119ヶ国中11位となった。マレーシアは、2023年に約2900万人の外国人観光客を受け入れており、タイを上回って東南アジアトップだった。

ベトナムにあるマレーシア観光促進局のノル・ハヤティ・ザイヌディン所長は、VnExpressの取材に対して、昨年、マレーシアの観光業界が輝かしい成功を収めるのに貢献した戦略について語った。それによれば、マレーシアはサービスの質の改善や新しい観光スポットの開発に努力する一方で、10億人以上の人口を抱える2大国、インドと中国からの旅行者を誘致するために両国国民に対して30日未満のビザ免除制度を導入した。

一方で、ベトナムの観光専門家は、ベトナムのビザ緩和政策も非常に有効だと評価している。観光業界は、旅行者の支出額だけをターゲットにするのではなく、より長く滞在してもらってより多く消費してもらう方法も検討すべきだと専門家たちは指摘している。

Vivu Journeys Vietnamのトゥイ・チャン社長は、サービスの質を向上させるために旅行業界は人材育成に注力する必要があると指摘する。また、観光客を誘致するためには、各観光地での効果的な安全対策を確立し、旅行者にとって安全でフレンドリーな環境を維持し、持続可能な観光旅行を促進することに旅行業界が注力する必要がある。

ラックスグループのファン・ハーCEOは、ベトナムが観光立国になりたいのであれば5つの大きな質問に応えなければならないと話す。それは、”どのようにしてより多くの観光客を誘致するのか?””どのようにしてより長期に滞在してもらうのか?””どのようにしてより多く消費してもらうのか?””ベトナムに来た外国人旅行者がどのようにしてその魅力を地元の人々に伝えられるのか?””そして、どのようにしてリピーターを増やすのか?”というものだ。

「我々は、ベトナムに来た旅行者が旅行を楽しみ、帰国するまでに予算を全て使い切れるように支援しなければなりません」とハーCEOは話す。

出典:2024/08/15 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載