中東や東南アジア各国は、インド人観光客の誘致を競い合っているが、インド人観光客には文化や宗教家からくる独特の独自性がある。
経済発展により数百万人のインド人が貧困から抜け出したことで、インド人観光客数は2019年に2700万人に達し、過去10年で倍増した。エコノミスト誌によればインド人観光客の海外旅行中の支出額は2023年に330億USDに達し、10年間で3倍に増えており、2025年までにはこれが450億USDまで伸びると予測されている。
「インド人観光客は大きな潜在能力を秘めており、どの国もインド人観光客誘致を望んでいるのは全く不思議ではない」とインドで7000軒以上の旅行代理店にアジア旅行サービスを提供しているTravB2BのCEOであるスディール・ウパディヤイ氏は語る。
ウパディヤイ氏は、インドが現在最も渇望されている観光客供給市場だと話す。インドは中国を抜いて世界第1位の人口を抱えており、経済的にも中国に追いつきつつある。ウパディヤ氏は、インドの海外旅行市場は、今後8~10年で現在の5~6倍に拡大すると予測している。
長年にわたり中国は世界最大の観光客供給国であり、欧米諸国は中国人観光客誘致のために様々な政策を実施してきた。しかし、現在は、中東や東南アジアで、インド人観光客の奪い合いが始まっている。
タイとマレーシアは、インド人に対するビザ免除を決めた。中東の一部の国では、インド映画のスターを広告塔に起用して、観光客を誘致している。過去10年、毎年100万人のインド人がタイを訪れていた。2024年には上半期だけでインド人観光客数が100万人に達し、その多くが初めての海外旅行だった。
ベトナムでもインド人観光客増加を受けて、多くの企業がこのマーケットに注目している。国家観光局によれば、2023年にベトナムを訪れたインド人観光客は39万2000人で2019年から230%も増加した。2024年上半期にベトナムを訪れたインド人旅行者は23万1000人で、前年同期から165%増加している。
Vietravelは、8月26日からインド最大の製薬会社サンファーマの従業員4500人の社員旅行を受け入れた。この団体は6グループに分かれており、9月7日までに順番にハノイ-ハロン-ニンビンの観光を楽しむ。この社員旅行を担当しているグエン・グエット・バン・カイン氏は、Vietravelはインド市場の潜在能力を高く評価しており、2018年からプロモーション活動をおこなってきたと話す。
コロナ前は、インドからの直行便が限られており、インド人観光客も他の東南アジア諸国や中東への旅行を好んだため、ベトナムに対する関心は低かった。一方で、ベトナムの旅行代理店も中国、韓国、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパなど従来の市場開拓に力を入れていた。
コロナ後にインド経済は力強く成長し、中間層が急速に増加したため、海外旅行需要が高まった。これまでの伝統的な観光市場が変化し、新たな観光市場の開拓が求められる中で、各旅行会社はインド人観光客誘致への投資を強めている。現在、Vietravelの外国人旅行者のうち16%をインド人が占めており、コロナ前と比べて急激に増加している。
エコノミスト誌によれば、インド人の海外旅行増加の原動力は、人口と経済の成長にある。最も海外旅行に積極的といわれる25~34歳の層が厚く、間もなくインドの人口の20%を占めるようになる。中間層の人口も2047年までに倍増すると予測されており、パスポートの保有者数も10年前の5200万人から今年には9300万人まで増加した。インド人観光客は、ヨーロッパへの旅行よりも近隣諸国への旅行を好む傾向がある。
ウパディヤイ氏は、インド人旅行者は英語スキルが高く西洋と東洋の両方の文化の影響を受けてきたので、中国人観光客に比べて海外旅行先の文化や魅力を受け入れやすいと評価する。それもあって、インド人観光客は、団体ツアー旅行よりも個人旅行を好む傾向にある。個人旅行は団体ツアー旅行よりも多くの体験を得やすく、支出も多くなる傾向にある。
インド人観光客を満足させるためには、受入れ側は、インドの独特の文化をよく理解しておく必要がある。例えば、今後Vietravelが受け入れることになる4500人のグループに対しては、宗教や信念に合わせた特定の料理を準備する必要がある。他にも彼らは今回の旅行を素晴らしい経験にするため、30~35人のグループごとに3人のガイドをつけることを要求している。対応するツアーガイドは全員がヒンディー語が堪能でなければならず、観光スポットで通常英語とベトナム語でおこなわれる説明をヒンディー語に通訳しなければならない。
「ベトナムでは、ヒンディー語が堪能なツアーガイドやインド料理レストラン、インド文化に対する理解などが不足しています」とカイン氏は話す。
カイン氏はインド人がベトナム国内で行きたい場所は、ハノイ、ハロン、ニンビン、ダナン、ホイアンだと指摘する。インド人観光客は文化的な場所、神秘的な場所、ビーチリゾートを好む傾向があり、平均5~7日間を3つ星から5つ星のホテルで過ごす。
ウパディヤイ氏は、インド人観光客を誘致するために最も重要なのは、ビザを免除するか、ビザの取得を容易にすることだと付け加えた。インド人観光客は、時期が近づいてから旅行の予定を立てるため、入国が容易な国ほど魅力的に感じられる。
インド人の味の好みは複雑なので、料理も同じく重要な要素になる。ウパディヤ氏によれば、インド人観光客の約30%がベジタリアンで、70%が非ベジタリアンだが、その多くは、鶏肉、羊肉と魚は食べるが宗教上の理由から牛肉や豚肉は食べず、シーフードもあまり好まない。
また、インドのジャイナ教徒は、ベジタリアンだが玉ねぎやニンニクなどは口にしない。多くのベジタリアンは、ベジタリアン料理専門店を好み、普通の料理と一緒に提供されることを嫌う。そのため、インドからの旅行者グループを受け入れる際には、レストランの手配は、事前に慎重に検討しておかなければならない。一方で、フリープランの旅行者は、珍しい経験を好む傾向にあり、地元の食事を好んで食べる。
「ベジタリアンだろうと非ベジタリアンだろうとインド人は料理が大好きで、旅行中の殆どのトラブルは、美味しい食事を無料で提供すれば解決します」とウパディヤイ氏は話す。
ウパディヤイ氏によれば、インドでは、学校が休みなる4月から6月までとディワリ祭りのある10月から11月が海外旅行シーズンになる。
インドの観光旅行客は様々な消費スタイルがあり、企業側は規模に応じて対応を選択することが出来る。TravB2Bでは、バックパッカー向けのサービスは提供しておらず、主に3つ星(20~25%)、4つ星(40~50%)5つ星(15~20%)のホテル宿泊グループ向けにサービスを提供している。ウパディヤイ氏は、低予算の旅行者は通所うスケジュールをあまり変更しないのでサービスが提供しやすいと話す。一方で、新たな中間層はより多くの支払い能力がある。
VIP顧客について同氏は、インドではどんな顧客でもコストパフォーマンスを重視するので、VIP顧客でも一般客と同様に値段交渉が行われると話す。言うまでもなく、インドの高級旅行分野では、多くの業者が市場シェアを求めて熾烈な競争を繰り広げている。その為、インドの富裕層向けのサービスを提供する旅行業者はユニークで完璧な体験を提供しなければならない。
Vietravelの担当者によれば、インド人観光客を誘致するために旅行業者は、ベトナムの魅力を伝えるために、まず現地の観光関連機関や外交機関、パートナー企業と協力する必要がある。さらに、ベトナムがインドとは違った魅力のある旅行先であることをPRするための広告キャンペーンも重要になる。
出典:2024/08/26 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載