日本と台湾の企業が設立したKI・WORKS VIETNAMはオーラルケア製品のOEM生産を主事業とし、15年連続の売上増を誇る。在越台湾商工会の副委員長も務める岡村総祐取締役が事業内容とオーラルケア業界を語る。
多彩なOEM製品開発
―― 御社の事業内容を教えてください。
岡村 歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどのオーラルケア製品を製造販売する企業グループが、ローコストでの生産を目的に、海外の生産拠点を探していました。東南アジアの中でタイとベトナムが候補となり、より人件費が安く、工業団地が好条件を提示してくれたベトナムに決めました。それが1997~1999年頃で、2002年にKI・WORKS VIETNAMが設立されました。
弊社も歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなど数多くの商品を製造していまして、9割以上がOEM生産、残りがベトナム国内向けの自社製品の生産です。
OEMは海外のお客様が中心で、輸出先はおよそ欧州が40%、米国が40%、ほかの各国が10%です。弊社の特徴は設計から出荷までの一貫生産体制でして、金型の設計や開発も自社の金型部門で完結させますし、自動化のためのロボットアーム開発なども生産部門が担当しています。従業員数は約400人です。
これら100年に渡る経験とノウハウの成果ですが、私は台湾人と日本人のハーフでして、両親がKI・WORKS VIETNAMを立ち上げました。企業として台湾系と日系の良いとこ取りをしていると思っています。
―― OEMの顧客はどのような企業が多いのでしょうか?
岡村 著名なオーラルケアメーカーもありますが、メインは欧米の大手スーパーマーケットやドラッグストアで、これらのプライベートブランド製品を作っています。
OEMによる製品開発の内容はお客様によって変わります。既に図面が出来上がり、デザインや素材なども決まっていて、お客様主導で生産に入る場合もあれば、ODMのような形で弊社からアイデアを出す場合もあります。
お付き合いの長いお客様が新製品を考えているのであれば、現在のオーラルケア市場のニーズや他社の動きからこんな新材料やデザインが主流になっているようだ、などと働きかけることもあります。
製品の数はかなり多いです。というのは、フロスピックならフレーバーにミントやフルーツ、歯間ブラシなら複数のサイズ、パッケージなら50個入りと100個入りなど、1商品の展開数が多いからです。一度のご注文で20種類以上、時にはそれ以上の製品を受注することもあります。
商品によって差はありますが、発注があってから最初の出荷まで半年くらいです。金型の開発だけで約2ヶ月は必要となりますから。
―― OEM委託をする企業に特徴はありますか?
岡村 お客様にはOEMに特化した企業、自社工場も併せ持つ企業、リスクヘッジで複数社や複数国にOEM委託する企業もあります。各社の戦略が異なるのだと思います。
弊社に発注する理由も、コスト面を重視される方、弊社のノウハウを知りたい方、効率の良い生産方法を探している方などあり、お客様とのこうしたお話からビジネスがスタートする場合もあります。仕事のきっかけはお客様によって様々で、お話を聞いていると興味深く感じます。
20年のお付き合いで新製品を一緒に考えるお客様もいれば、小さい取引から始まる新しいお客様もいます。事業のきっかけは弊社からご連絡したり展示会などでアプローチするほか、有難いことにご連絡をいただく場合もあります。後者は企業規模の大きな会社が多いです。
歯ブラシやデンタルフロスなどオーラルケア市場は世界的に伸びていると思いますが、一方で新規参入者の成功が難しくなってきている業界とも感じます。それはOEM業界も同様であり近年、特に新型コロナ後はOEMを中国からベトナム、インドネシア、インド、タイ、アフリカ、南米など多様な国にシフトする傾向が強くなりました。
そのためか、これまで中国の同業他社に委託していたのを、弊社を見つけてご連絡をいただくケースが急激に増えました。
トレンドは製品の多様化
―― ベトナムの優位性とは何でしょうか?
岡村 例えば、中国から米国に輸出するとかなりの関税がかかりますが、ベトナムから米国ですと関税が低くなります。加えて、若くて活力ある労働力、労働のコスト競争力、物流や輸送の利便性、FTAなどの貿易協定、他の東南アジア諸国と比べて安定した産業技術とサプライチェーンなどに優位性を感じます。
弊社へのご連絡で言えば、信頼感や安心感があるのかもしれません。KI・WORKS VIETNAMは新型コロナ期も生産を続けて、輸出を止めずに安定供給しました。また、弊社の理念である「誠信」に基づいて、品質へのこだわりと約束を守る姿勢に一貫して取り組んできました。長年に渡ってお客様からの信頼を築いてきたことも理由だと思います。
弊社の売上は15年間増加中で、新型コロナ期も生産が減るどころか急増しました。口内の衛生が新型コロナの予防にもなると積極的に手入れをする方や、マスクを取った時に歯を綺麗に見せたい方などが増えたからだと思います。
―― オーラルケア業界のトレンドとは何でしょうか?
岡村 最近は新しい製品が増えています。例えば、糸だけのデンタルフロスから簡単に使えるフロスピックになり、サイズや形状も多彩になりました。フロス部分のフレーバーはミントが主流でしたが、フルーティーな種類が増えました。プラスチック樹脂を環境に優しい素材に変えるなどもあって、ユーザーの選択肢が多くなっていると思います。
特に欧州では環境意識が高く、製品の樹脂製部分をそのまま燃やせる素材や紙製に変えたり、パッケージもプラスチック袋から紙箱に変えてほしいなどの要求が増えています。
私は良い傾向だと感じます。例えば、欧米人とアジア人では骨格の差からフロスピックのサイズがかなり違います。欧米用は大きくて、アジア用は欧米では子ども向けになるサイズです。また、同じ国でも生活習慣の異なる都市部の人と農村部の人とでは製品のニーズが異なる場合もあり、商品の多様化には賛成です。
―― 今後の計画を教えてください。
岡村 工場を拡張したいと考えています。輸出で40フィートコンテナを月に25本以上出荷しているのですが、工場にコンテナを置く場所が2ヶ所しかないため、工場内に製品で溢れている状態です。その次はやはり事業の拡大と増産を考えたいです。
当工場が今日まで存続できたのは地域社会と皆様のご支援のおかげであり、ベトナムに根差した企業として、口内ケア活動、物資や衣類の寄付、介護支援、住宅建設、植樹など様々な社会貢献活動を続けています。また、私は在越台湾商工会(CTCVN)の副委員長を務めており、弊社はホーチミン日本商工会議所(JCCH)のメンバーでもあります。今後も会員企業と協力しながら社会貢献に取り組んでいきます。