3月21~24日、ホーチミン市1区のレバンタム公園で、第3回「バインミーフェスティバル」が開催された。150以上のブースが出店し、3日間の来場者は第2回の約15万人を超えたとか。祭りはようやく本調子だ。We love Banh Mi!
本格的なバインミー祭りだ
バインミーフェスティバル、3回目にしてようやく本家の貫禄が出てきた。これまでは「バインミーに関係あるの?」と聞きたくなる商品のブースもあったが、今回は老舗から新興まで個性派のバインミー店が揃った。
開催地は昨年と同じレバンタム公園で、公園内の基本レイアウトも一緒。会場入口を抜けると広い通りが続いて突き当りがメインステージ。そこまでの左右に並ぶのはバインミー店よりベーカリーが多い。
今回はABC Bakery、Bon Appetit、HY LAM MON、BreadTalk、SUGAR TOWNなどの人気チェーン店が出店し、様々なパンやケーキに人が集まった。
バインミー店は昨年と同様脇道に多く、道幅が狭いこともあって人が密集する。今回のテーマが「バインミーとカフェ」とあってコーヒー店の出店も増え、バインミーとコーヒーをセットで販売する店もあった。
初日金曜日の昼過ぎに参加したが、既に人手が多く、欧米人の姿もちらほら。これが夕方となり、日が落ちてからは大混雑となった。


Faifoがホイアンから参加
ステージ前に大きな円形のブースがあり、ルーフには巨大なバインミーとアイスミルクコーヒーのオブジェが立つ。その中に入っていた店舗の1つが「Faifo Banh Mi」だ。
ホイアンが発祥の店で、Faifoとはフランス植民地時代のホイアンの名称。バインミーが同地に根付いた時期でもあるという。
「食材はホイアンから持ってきました。肉は煮てからソースをかけるスタイルです」
2万~3万5000VNDのお手頃価格と立地の良さもあって、早い時間からお客が並んだ。ホーチミン市3区でベジタリアン向けレストランを運営しており、写真を見せてもらうと高級店のようだ。
ホイアンのバインミーは両端の先が細くなっているのが特徴とか。

中華街にある老舗店の味
ホーチミン市5区の中華街にある「Banh Mi Tang」は、1968年設立と創業50年を超える老舗の有名店。赤と黄色のユニフォーム、漢字の店名、真っ赤なブースと中華風の装いが人目を引く。割引の効果もあって、狭い路地にお客が長い列を作る。
「うちのパテは自家製です。煮込むのではなくて、フライパンで炒めるから旨味が出るんです」
店頭で大きな金属の皿の中にパテを入れ、火に掛けながら少しずつ炒めていく。その隣では深皿にソースを入れてミートボールに味付けをしている。
このパテに挟まれたミートボールのバインミーが絶品。これで2万5000VNDは安い!

ダラットのバインミー・クエ
昨年も話を聞いたM&O FOODSはダラットが本拠地。パンが細長いバインミー・クエ(Banh Mi Que)の中に器用にソーセージ、玉ねぎ、チキン、なますなどを挟みこむ。昨年に続いて出店したのは、特に観光客や外国人に対してブランドイメージを広げたいからだそうだ。
「今日はもう何百個も売れたよ! 午前中にホーチミンテレビが取材に来たよ!」
売れ筋は全部の具材が入ったスペシャル(Dac biet)とのこと。

ホーチミン市でトップ5の店
パテもバターも使わず、具材はハムや白身魚のすり身を使った数種類の特製チャーカー(Cha ca)、野菜はタマネギとキュウリのみ。そんなバインミーが美味しいのかと思うかもしれないが、うまい!
店の名前は「Banh Mi Cu Ly」。オーナー自らがバインミーを作る中で話を聞いた。
「ホーチミン市から、ホーチミン市の有名なバインミー店トップ5に選ばれた時の証明書がこれさ。50年以上続いている店の中から受賞したんだ。待ってて、すぐに作るから」
店頭には様々な具材が広げられ、隣でお客が指差しながら質問中。何を入れるか迷っているようで、店員が詳しく説明する。狭いブースだったが中年以上のベトナム人が列を作っていた。

ハイフォンのソウルフード
前回も出店したかったが間に合わず、念願の初出店となったのがハイフォンから来た「Banh Mi Pate Cot Den Hai Phong」。ホーチミン市に3店舗あり、より一層の販路の拡大が目的だ。
「ハイフォンと言ったらこのバインミー。うちはハイフォンの特産パテを使っています」
細いバインミーの中の具材はパテのみ。バインミー・クエと同じだが、ハイフォンではバインミー・カイ(Banh Mi Cay)と呼ばれる。ピリ辛味もあって食事というよりメインディッシュの付合せや小腹が空いたときにベスト。
短いサイズだと5本で3万5000VND。作り置きがあって注文を受けるとレンジで温めるが、作り続けても間に合わない売行き。多くの人がまとめて買っていくからだ。

大手日系企業、出店の理由
後半戦に行く前に日系企業のブースをご紹介。味の素ベトナムはメインロードに出店。「なぜバインミーフェスティバルに?」と聞くと、新商品のマヨネーズのPRとのこと。
「バインミーの中にマヨネーズを使いますよね。それならうちの商品がいいですよ」
エースコックベトナムも出店。バインミーを好む若い世代が自社のターゲット層に重なると、バインミーと合うインスタントスープの試供品を配っていた。
「バインミーを食べながらスープはいかがですか。スープとマッチするチャーハンもどうぞ」
ベトナムで存在感を出しつつある赤城乳業も出店し、ガリガリ君を無料配布。

初日で1000個以上を販売
ボリュームたっぷりのバインミーで有名な「Banh Mi Huynh Hoa」は昨年と同じメインステージ前に出店。このフェスティバルで一番バインミーを売ったであろう人気店で、常にお客が並び続け、バインミーを作るスタッフの手が止まらない。
昨年は女性社長に取材したが、当日も彼女がいたのだが、他のスタッフを含めて全員が忙しそうで声を掛けられない。それでも以下だけが聞けた。
「何個売れたか? わからないね。昨年以上にお客さんが多いよね」
後で調べると、初日のHuynh Hoaの来場者数は前年比で40%増加し、1000個以上のバインミーを売っていた。

マーケティングにバインミー
バインミー店でないのにバインミーを作る理由は? 「Viet Huong Food」は伝統的バインミーの具材の定番である、ベトナム風ハムのチャーボー(Cha bo)やチャールア(Cha lua)を生産している食品メーカーだ。
グリーンとイエローのパッケージに、ビニールテープで縛ったこのハムの塊を、スーパーなどで見かけているはず。
「前回もうちの商品を挟んだバインミーを売ったら、Cha boやCha luaの売行きがよくなってね。だから今年も出店したんです」
マーケティングにバインミー! 同社商品の品質の高さは、包装紙にある赤い品質保証マークからも折り紙付きだ。

1942年創業のハムとパテ
他店と違ってメインロードに出店していたバインミー店が、ハノイで1942年に創業した「ICOOL Nguyen Sinh」だ。
バインミーだけでなく、多彩な種類の自家製ハムとパテが大人気。パテは豚肉から作ることが多いが鶏がベースとなっており、試食させてもらうと爽やかな味わい。正式な店名が「「ICOOL Nguyen Sinh Pate & Eatery」であることからもその自信が伺え、パテは商品化されて韓国系スーパーなどで売られている。
「店には長い歴史があって今の私が3代目。息子に後を継がせることが決まっています」

人気ストリーマーの繁盛店
人気ストリーマーのPewPewが開業した、若者に人気の「Banh Mi PewPew」。10種類以上とメニューが豊富で、隣にもカフェブースを出店してバインミーとコーヒーのセットメニューも提供していた。
パンの両側の尖った部分を切り取って、長方形に近い形にしているのも特徴だ。なぜそうしているかを尋ねると…。
「食べ始めるとすぐに具材が味わえるでしょ。美味しいじゃない」
具材を入れたパンはホットプレートで挟み、上と下から軽く熱を通してから渡す。中々声がかけられないほどお客の列が途切れなかった。

来年も行きましょう!
昼過ぎに出かけたせいでかなり暑かったが、カフェスタンドや飲料の販売店などが適度に配置されていて助かった。冒頭にも記したがバインミー店の参加が広がって体裁ができつつあり、本来の関連業種としてベーカリーやカフェも定着してきた。
フェスティバルの運営や各店のオペレーションもスムーズに回っている印象だ。来年も行こう。必ず行くぞ!

取材・執筆:高橋正志(ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。
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