ホーチミン市商工局の統計によると、同市では毎年400件以上の展示会や見本市が開催されており、年平均成長率は3.68%に達している。しかし、大規模で専門的な会場が不足しており、需要に対応できないことが課題となっている。
MICE需要の高まりと既存施設の限界
経済の中心都市であり、最大の輸出入拠点でもあるホーチミン市は、MICE(国際会議、研修旅行、展示会、イベント)需要の増加に直面している。
一例として、サイゴン・エキシビジョン・コンベンション・センター(SECC)では同時に3つのイベントが開かれた際、周辺が深刻な渋滞に陥り、来場者は遠方に駐車せざるを得なくなっている。大規模な機器の展示もスペース不足で制限されている。
ハノイの先行事例と南部の遅れ
ハノイでは、総面積30万4,000㎡を誇る新たな「ベトナム国立コンベンションセンター」を整備中で、これは世界で10本の指に入るほどの大規模展示会場だ。一方、南部のSECCは拡張後も屋内4万㎡にとどまっており、国際イベントには力不足である。
3つの候補地と建設モデル
ホーチミン市は「ホーチミン市エクスポ」ブランドを構想しており、新たな国際展示会場候補地として3案を検討している。
① トゥーティエム~タンミーロイ
このエリアは、ホーチミン市が将来の金融・行政の中心地として開発を進めている地域である。サイゴン川東岸に位置し、中心部からのアクセスも良い。展示会センターをここに建設すれば、金融・国際会議・創造産業が集積する新しいMICE拠点として発展する可能性が高い。
② 南部ヒエップフオック(ニャーベー)
市の南端に位置し、大規模な工業用地と深海港を擁する地域である。水路を通じてメコンデルタやカンボジアとも結ばれており、物流や貿易のハブとして有利な立地を持つ。将来的には、ロンタイン国際空港や環状道路3号線とも連結し、工業・物流・海運分野に特化した展示会センターとして最適とされる。
③ 北西部クチ
ホーチミン市とカンボジア国境のモクバイを結ぶ高速道路沿いにあり、陸路貿易の要衝として注目されるエリアである。中心部からはやや距離があるが、土地利用の自由度が高い。農業、機械、工業設備などをテーマにした国境貿易型の展示会を展開する拠点として有望視されている。
投資スキームと加速の必要性
専門家は、国際展示センターの整備には「官民連携モデル」の導入が不可欠と指摘する。具体的には、土地整備や基盤インフラを公的部門が担い、施設建設・運営・マーケティングを民間が担当する形である。
また、競争的入札や税制優遇などのインセンティブを導入し、スピード感を持ってプロジェクトを推進する必要がある。
展望:2030年に国際MICEハブへ
市は当面、フラッグシップ拠点をトゥーティエムに建設すると同時に、ヒエップフックで産業・物流型展示会施設を整備する方向を検討している。さらに2030年までに環状道路3号線や主要高速道路が完成すれば、「ホーチミン市エクスポ」「ポートエクスポ」「ボーダーエクスポ」という3拠点構成のMICEエコシステムが形成され、国際的な投資・観光・貿易の波及効果をもたらす見通しである。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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