個人データ保護法施行直前の規約変更
ベトナムで個人データ保護法が2026年1月1日に施行されるのを前に、通信アプリ「Zalo」が数百万人規模の利用者に対し、新たな利用規約への同意を求めている。
Zalo(VNGコーポレーション傘下)によると、新規約ではユーザーデータの収集範囲が拡大され、電話番号、氏名、性別、家族関係といった基本情報に加え、身分証(旧CMND/新CCCD)、位置情報、利用行動、やり取りの内容などの機微な情報も含まれる。
「同意しなければ45日後に削除」
問題視されているのは、利用を継続するためにユーザーが選べる選択肢が「すべてに同意」しかない点である。
同意しない場合、アカウントは45日後に削除されるとされており、この対応がSNSやオンラインフォーラムで大きな議論を呼んでいる。
「過剰収集ではないか」との懸念
利用者の間では、個人情報の収集が「過剰」であり、施行予定の法律と抵触する可能性があるとの懸念が広がっている。
ホーチミン市在住のドゥック・ブー氏は、「ZaloはCCCD、性別、年齢など極めて個人的な情報へのアクセスを拡大しながら、同意しなければ利用をやめろと迫っている」と不満を示した。
また、同市在住のマイン・チン氏は、「Zaloは広範なデータ収集やコンテンツ管理の権限を自らに与え、情報漏洩時の責任も免除している。主導権を完全に握ろうとしているのではないか」と指摘する。
VNGグループ内での情報共有も焦点
新規約では、ZaloがVNGグループ内の子会社、関連会社とアカウント情報を共有・移転できると明記されている。
ある専門家は、「Zaloしか使っていない利用者であっても、VNGが他のグループ企業で個人データを利用できる点は問題になり得る」と疑問を呈している。
この動きに反発し、抗議としてZaloアカウントを削除する利用者も出ている。
「同意の自由」に反する可能性
複数の専門家は、「すべて同意」しか選択肢がない点について、個人データ保護法が掲げる『自発的同意の原則』に反する可能性があるとの見解を示した。
ピラック・グループのグエン・フー・ズンCEOは、「利用者が懸念を抱くのは当然だ。問題の本質はデータ収集そのものではなく、収集方法、利用目的、そしてユーザーがどこまで管理・制御できるかにある」と述べている。
データ管理は「最大収集」から「責任ある管理」へ
専門家らは、法律を実効性あるものにするには、利用者自身が暗号化、保存、管理、必要最小限の共有を行える仕組みが必要だと指摘する。
これは多くの国で採用されているアプローチであり、データ乱用のリスクを抑えつつ、プラットフォーム側の「最大収集」思考から「責任ある管理」への転換を促すものだとしている。
「選ぶのは利用者」との見方も
一方、Skillify創業者のチャン・ビエット・クアン氏は、「Zaloが国内法を公然と違反するとは考えにくい」とし、新規約に同意するかどうかは最終的には利用者の選択だとの見方を示す。
実際には、「仕事や生活の連絡がZalo中心」「商売に使っているため仕方ない」として、懸念を抱きながらも同意する利用者が少なくないのが現状である。
Zaloとは何者か、収益構造は
Zaloは2012年にVNGが開発した無料通話・メッセージアプリで、現在はベトナムで最も利用されている通信アプリとされる。
VNGの報告によれば、2025年第3四半期の月間利用者数は7,920万人、1日あたりの送信メッセージ数は約21億通に上る。
行政利用とビジネス展開
2024年末時点で、Zaloには1万7,273の政府・公共系Zalo公式アカウント(OA)が存在し、63省市で行政手続きや情報提供に活用されている。
こうした普及により、ZaloはMessengerやFacebookを抑え、国内で圧倒的な存在感を持つ。
企業向け事業と資本増強
2024年以降、Zaloは高付加価値サービスや法人向けサービスを強化し、2025年初頭にはZalo Platforms社を設立した。
同社は2025年中に相次いで増資を行い、12月26日には資本金を500億VND(約3億円)に引き上げた。
本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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