ベトナムの消費市場は成長を続けているものの、物価や生活費の上昇を背景に、消費者の購買行動には慎重さが目立っている。2026年1~9月の商品小売・消費サービス売上高は前年同期比13.4%増となったが、物価変動の影響を除いた実質伸び率は7.8%にとどまった。食品や住居費、光熱費など日常生活に欠かせない支出が家計を圧迫するなか、消費者は必要性や価格を厳しく見極めている。年末商戦に向けては、値引き販売だけでなく、家計の購買余力を高める施策が求められている。
小売売上高は13.4%増、実質成長率は7.8%
ベトナムでは年末の消費シーズンを迎え、スーパーマーケットやショッピングセンター、電子商取引(EC)サイトなどで大規模な値引き・販促キャンペーンが予定されている。小売市場の活性化が期待される一方、統計上の成長がそのまま消費者の購買意欲の強さを示しているわけではない。
財務省統計局によると、2026年1~9月の商品小売・消費サービス売上高は推計5,925兆7,000億VNDとなり、前年同期比13.4%増加した。しかし、物価変動の影響を除いた実質ベースの伸び率は7.8%だった。
同期間の消費者物価指数(CPI)は前年同期比で平均4.52%上昇した。食品、住居、電気・水道、交通、外食など、日常生活に直結する分野で価格上昇の圧力が続いている。
生活必需品への支出が家計の大きな割合を占めると、消費者はそれ以外の買い物を抑えざるを得ない。小売売上高の伸びには価格上昇の影響も含まれており、消費需要そのものが同じ勢いで拡大しているとは限らない。
消費者は節約志向、価格と品質を慎重に比較
ベトナム小売業協会のグエン・フック・コア副会長は、小売売上高の増加と実際の消費実感には大きな差があると指摘する。名目上の伸び率が13.4%であるのに対し、物価変動を除いた実質伸び率は7.8%にとどまっており、成長の一部は価格上昇によるものだという。
現在の消費者心理は、慎重さと実用性、節約志向が中心となっている。多くの家庭では生活必需品への支出を優先し、必要性の低い商品の購入を控える傾向がみられる。
小売・サービス分野のコンサルタント会社FnB Directorのドー・ズイ・タイン社長も、購買力は所得層や商品分野、商品の必要性によって差が広がっていると分析する。
消費者は買い物自体をやめているわけではないが、購入前に価格や品質、機能を比較し、急を要さない支出は先送りするようになっている。
購入先の選択にも変化がある。伝統的な市場が引き続き重要な役割を担う一方、近代的な小売店やECの利用も拡大している。複数の販売チャネルで価格や割引を簡単に比較できるようになり、小売企業には価格だけでなく、商品の品質やサービス、買い物体験で差別化することが求められている。
大幅な値引きは消費者の関心を集めるものの、所得や生活費への不安が続く状況では、必ずしも持続的な購買につながるとは限らない。
タイン氏によると、2026年1~9月の実質成長率7.8%は、前年同期の7.2%を上回っている。消費が経済成長に引き続き貢献している一方、名目成長率と実質成長率の差を踏まえ、年末に向けて購買力の実態を慎重に評価する必要があるという。
年末商戦の活性化には家計の購買余力が重要
年末は祝祭日や旧正月(テト)に向けて買い物需要が高まる時期であり、消費を刺激する余地は大きい。ただし、値引きキャンペーンを増やすだけでは、持続的な需要の拡大につながらない可能性がある。
コア副会長は、消費者が年末の買い物に使える資金を早い段階で確保できるようにすることが重要だと指摘する。財務状況に余裕のある企業には、テトの給与や賞与を休暇直前に集中させず、早めに支給することを検討してほしいという。
給与や賞与を早期に受け取ることができれば、労働者は買い物の時期を計画しやすくなり、各種キャンペーンを活用しながら支出を分散できる。年末直前に消費が集中するのを和らげる効果も期待される。
付加価値税(VAT)の減税措置についても、政策による恩恵が実際の販売価格に反映され、消費者の負担軽減につながるようにする必要がある。企業側には、宣伝効果を狙った形式的な販促ではなく、消費者が節約を実感できる価格設定や特典が求められる。
全国規模の集中販促を12月から実施へ
ベトナム商工省は、2026年12月1日から2027年1月5日まで、全国規模の集中販促プログラムを実施する予定だ。伝統的な小売市場とECの双方で販促活動を展開し、企業の参加を促すことで、年末年始の消費を活性化させる狙いがある。
プログラムの効果を高めるには、地域ごとの生産者と販売業者、消費者を結びつける取り組みも重要となる。ベトナム製品を農村部や人口密集地域に届けるほか、商取引のデジタル化を進め、流通コストの削減を図ることが求められている。
流通段階の費用を抑えられれば、消費者により競争力のある価格で商品を提供できる可能性がある。
企業の福利厚生も消費と国内需要を支える手段に
タイン氏は、消費刺激策を考える際には、消費者の支出能力を高めることと、企業の受注を増やすことの両面から取り組む必要があると指摘する。値引きは短期的な購入を促す手段にはなるが、持続的な購買力を支えるには、所得や消費者の信頼、商品そのものの価値が重要になる。
具体策として、企業が従業員向けの福利厚生や労働組合を通じた贈答品、年末のギフトなどに支出しやすくする仕組みを検討することを提案している。行政には、福利厚生費の会計処理を明確にするとともに、証憑があり従業員に直接還元される支出について、税制上の取り扱いを検討することが期待される。優遇措置を設ける場合には、適用条件や支出上限、対象者を明確にし、企業の事務負担が過度に増えない制度設計が必要だという。
企業が労働組合や国内サプライヤーと連携し、食品や日用品、家庭用品などを組み合わせた実用的なテト向けギフトを用意することも一案である。従業員の生活を支えると同時に、国内の製造業や流通業に新たな販売機会をもたらす効果が期待できる。
企業には、商品の産地や品質を明確にし、価格を透明に示したうえで、実質的な割引や特典を提供することが求められる。生産者と販売業者の連携を深め、中間コストを抑えることも、消費者にとっての価格競争力につながる。
年末商戦は、ベトナムの消費市場にとって需要を伸ばす機会である。ただし、販促の規模を拡大するだけでなく、家計の負担を軽減し、消費者が安心して支出できる環境を整えられるかが、市場の成長を持続させるうえで重要となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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