日本、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの11か国による環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)の発足により、ベトナム企業は、CPTPP加盟国マーケットへの輸出チャンスが大幅に拡大したが、すべての企業がこのチャンスを活用出来ているわけではない。
CPTPPが発効した最初の年に、ベトナムのCPTPP加盟国への輸出額は、343億USDとなり、発効以前から8.1%増加した。2020年にはCOVID-19 の世界的な感染拡大により、CPTPP加盟国にも深刻な影響が広がったが、輸出額自体は維持された。しかしその一方で、この2年間にベトナムからCPTPP加盟国以外の国への輸出は、品目によって26~36%もの伸びを記録している。
世界中がCOVID-19 の感染拡大による影響を受けている中で、ベトナムがCPTPP加盟国への輸出を増加させているという事実は、この協定が初期段階においては、多かれ少なかれベトナムにとってプラスの影響を与えていることを示す。
ベトナム皮革・履物協会(Lefaso)のファン・ティ・タン・スアン副会長によると、ベトナムの皮革・履物産業は輸出が90%に達しており、CPTPPは新しいビジネスチャンスを開拓し、投資を呼び込み、ベトナムの皮革・履物産業とその周辺産業の発展に寄与していると話す。LefasoのデータによるとCPTPP加盟国へのベトナムの皮革と履物の輸出額は以前と比較して13%も増加している。特にカナダとメキシコは、CPTPPの発効によって開拓された2つの新しいマーケットだ。「CPTPPによってもたらされた優遇関税によって、ベトナムはカナダとメキシコに皮革と履物を輸出する際に第三国を経由する必要がなくなり、直接取引することができるようになりました。」とスアン副会長は話す。
同様に、水産品もCPTPP発効からの2年間で輸出額が大幅に増加した。ベトナム水産物輸出協会(Vasep)によると、2021年1月だけでも、ベトナムの水産物輸出額は6億600万USDを超え、前年同期比で23.4%も増加した。その内CPTPP加盟国への輸出額だけを見た場合、34%の増加となっている。
しかし、全体から見た場合CPTPPによってベトナムが受け取っている利益は、まだ限定的であると商工省輸出入局のグエン・カム・チャン副局長は話す。ベトナムの CPTPP加盟国への輸出額の伸び率7.2%は、同時期のベトナムの世界全体への輸出額の伸び率8.4%よりも低かったのだ。
これは、未だに多くのベトナム企業がCPTPPによる優遇関税制度を活用出来ていないことを示している。実際CPTPP域内での優遇関税制度の利用率は、わずか1.67%にとどまっている。
ベトナム企業がこの新しい自由貿易協定による優遇関税制度を活用できていない最大の理由は、CPTPPにおける優遇関税制度の存在自体が知られていないことだ。さらに他のFTAを活用した方がメリットがあったり、輸出書類や通関手続きに対する知識不足もCPTPPの活用の妨げとなっている。
「企業はCPTPPについて色々な話を聞いていますが、殆どの企業は、ごく浅くしか理解できていません。ベトナム商工会議所(VCCI)が実施したベトナム企業4社への調査では、1社だけがCPTPPによるメリットを理解していると回答しました」とVCCIのWTO加盟センターのグエン・ティ・トゥー・チャン所長は説明する。
チャン所長によると、残念なことにCPTPPについてより詳しく理解しているのは、ベトナム企業よりもむしろベトナム国内の外資系企業だという。
VCCIの元副会長で経済専門家のファン・チー・ラン氏も、ベトナム企業が自社の生産性を向上させるために、CPTPPからもたらされるメリットを活用出来ていないことが非常に残念だと指摘する。CPTPPの要求に対応するための経済システムの変革は遅れており、企業の競争力は抑えられたままになっている。
この状況は、多くの企業や業界団体で共通している。物流業のTransAZを経営するファン・トン社長は「弊社のほとんどの顧客は、CPTPPをよく理解できていないと話しており、その結果、多くの企業がCPTPP加盟国からの受注を伸ばせていません」と話す。
ベトナム皮革・履物協会スアン副会長も、この問題についてベトナム企業が小さな井戸から出て広い世界に飛び出していくためには、十分な情報提供と共に統一された制度と、企業が生産能力を向上させるために必要な資金、市場、人材に関する補助政策が必要であると指摘する。
出典:08/04/2021 VNEXPRESS
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