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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第05回
ALL NIPPON AIRWAYS

経済発展や旅行者増で利用者が激増しているベトナムの空の便。2001年に進出し、2016年にベトナム航空と提携した全日本空輸(ANA)は、着実にその存在感を高めてきた。General Director, Vietnamの杉正純氏が実情を語る。

提携でシェアと収益が増加

―― 杉さんはハノイとホーチミン市の両方を見ています。

杉 はい。ホーチミン支店が2001年に開設され、ハノイ支店は2014年です。私は頻繁に両支店を行き来し、たまに日本にも出張します。各地を飛行機で移動するのが本職ですから慣れています(笑)。

―― 日越間の旅行客が増えていますね。

杉 昨年の訪日ベトナム人が約30万人、来越日本人は約80万人で、どちらも過去最高です。こうした動きはお客様の増加につながっていると思いますが、実は越米間の移動も多いのです。

 アメリカに住むベトナム系アメリカ人やベトナム人は200万とも言われており、ベトナムとアメリカとの往復が多いんですね。そのため、成田や羽田を経由して両国を移動する便も人気となっています。日本の他にも、台北、仁川、香港、上海、シンガポールなどを経由して、ベトナムとアメリカを結ぶ各社の便が多くあります。

 これらの空港はハブ空港とも呼ばれ、多くの路線の経由地となっていますが、将来的にはハノイやホーチミン市もハブ空港になり得ると思っています。地政学的に見て近隣諸国に移動しやすい立地ですし、北米に行く場合もシンガポールなどより利便性が高いですからね。

―― ベトナムは魅力的な市場だと。

杉 その通りです。国内外での移動が増える中、ベトナムには新幹線のような長距離高速鉄道がなく、航空へのニーズが高まることは間違いないでしょう。9500万人の若い人口と拡大する経済で、今後の流動はますます大きくなると思います。

 訪日旅行にも期待大です。東京オリンピックもあって日本側がインバウンドを促進していますし、ベトナム旅行者の観光やショッピングに消費する貢献は、非常に高いと思います。

 課題としてはタンソンニャット空港が飽和状態などと言われていますが、増加する旅行客に空港の供給が追い付いていないわけで、実は成田や羽田も同じです。空港の拡張政策には10年、20年のスパンが必要であり、地下鉄の完成などと足並みを揃えながら、総合的な交通インフラの議論が成熟していくと思います。

 将来は成田と羽田のように、タンソンニャット空港と計画中のロンタイン空港とで、ホーチミン市はメインの空港が2つある「デュアル空港」を持つかもしれませんね。

―― ANAは2016年にベトナム航空と提携しました。

杉 アメリカ駐在時代はユナイテッド航空、ドイツではルフトハンザ航空との提携があり、提携に関する業務としての差は特にありません。ただ、ベトナム航空は国営企業でもあり、位置付けは別格です。

 ANAは毎日ホーチミン市から日本に2便、ハノイから1便の合計3便を運航していますが、ベトナム航空は合計11便とネットワークが広い。また、国内線の便も多いですから、提携効果はかなり大きいです。また、成田空港とタンソンニャット空港間での追加サービス、ベトナム航空とのマイル積算プログラムやコードシェア便の拡大により、乗客数が増加していると考えられます。

 一方で弊社も協力しています。ANAは今年、イギリスSKYTRAX社のワールド・エアライン・スター・レーティングで、世界最高評価の「5スター」を6年連続でを獲得しました。ベトナム航空は2016年に初めて4スターを獲得していますが、ANAは訓練を一緒に行うなど、機内・空港サービスなどの技術支援をしています。両社のパートーナーシップにより、お互いがWin-Winの関係に発展することを期待しています。

始まっている淘汰の時代

―― 近年ではLCCを中心に、航空業界への新規参入が多いです。

杉 我々としてもLCCの新規参入を予測するのは難しい。それほどのスピードで増えています。もちろんLCCは競合ですし、例えばクアラルンプール経由などで日本からLCCでベトナムに来る人も珍しくありません。

 LCCに対して我々のような航空会社をFSC(フルサービスキャリア)と呼びますが、そもそもこれらは便宜上付けられた名前であり、最近ではどちらか判別しにくい航空会社もあります。そしてそんな区別はお客様には関係ないのです。

 価格、サービス、マイル、時間帯などから航空会社を選ぶのはお客様であって、マーケット近況は楽観視できませんが、LCCとは共に成長できると思います。

―― ベトナム市場ではいかがでしょうか。

 ちょっと昔話をさせてください(笑)。私が若いころ、海外旅行は一生に一度と言われ、家族でハワイやアメリカ、ヨーロッパなどにパッケージツアーで行ったものです。皆でカメラを持って、添乗員について観光地を巡っていました。それが今のベトナムです。

 その後の日本はどうなったでしょうか。今ではインターネットで航空券やホテルを予約して、年に何度も個人旅行できる時代になっています。それがこれからベトナムにやってくるわけですから、弊社の1日3便を4便、5便に増やしたくらいでは追い付かないニーズが生まれるのです。

 ただ、競合他社もそのことは承知していますから、こちらも戦略を立てなくてはいけません。その中で提携戦略が絶対的に重視されてきます。

―― それはなぜでしょうか?

杉 航空業界では既に淘汰が始まっており、提携なしには勝てなくなっています。既にヨーロッパの先進国の中ではドイツのルフトハンザ航空、フランスのエールフランス航空、イギリスのブリティッシュエアウェイズの3グループに集約されています。他の国のナショナルフラッグであっても、どこかに所属するような形で、今でも世界中の航空会社が様々な提携に動いています。

 一方でアジアでは日本、韓国、台湾のように主たるFSCが複数ある国がありますが、これは珍しいほうです。大きな国土を持つアメリカでも、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空の3グループですから。

 ベトナムは成長の基盤ができて、その発展が始まったばかりの国。先も話しましたが増加する旅行客への対応や空港拡張政策など、色々な形で協力して、今後の戦略を立てたいと思っています。長距離での代替交通手段のないベトナムでは、確実に航空事業の成長が期待できます。普通なら不安要素がある中で「確実」と呼べる、数少ない成長分野の一つなのです。

ALL NIPPON AIRWAYS CO., LTD.
杉 正純 Masazumi Sugi
米国の大学を卒業後、現地で日系企業に就職。その後、全日本空輸株式会社に入社。日本での宣伝部等を経て、米ロスアンジェルス支店に6年、ドイツのフランクフルト空港所に4年駐在後、2016年より現職。