―― 新型コロナ感染拡大で、昨年は厳格な社会隔離措置が数ヶ月続きました。各種書類への署名が困難になったこともあり、電子署名の導入を検討し始めた企業が増えているようです。ベトナムでは電子署名で締結された契約は、書面での契約と法的に同じ効力があると考えて良いのでしょうか?
フィンチー はい、民法の規定によれば、電子取引法が定める一定の要件を満たせば、書面で締結された契約と法的に同じ効力があるとされています。同様のことは、労働契約を締結する場合についても労働法で規定されています。
―― その一定の要件とは、具体的にはどのようなものでしょうか?
フィンチー 現在の政令では、公開鍵と秘密鍵を組み合わせた暗号方式のデジタル署名であること、さらにデジタル署名の作成者を特定する電子証明書が使われていることが求められているといえます。
電子証明書は当局から承認された機関が発行しますので、利用するためにはそうした機関と事前に契約をしておく必要があります。
―― 今の実務では、どのような契約についても幅広く電子署名は使用されているのでしょうか?
フィンチー 実務的には、まだ限界もあります。例えば、個人が相手の契約でも上述の方式を取る必要があるのですが、個人の方が電子証明書を利用するために、事前に所定の機関と契約を締結していることは現実的には期待できません。
―― なるほど。しかし、電子署名はやはり便利なので、今後益々普及することに期待したいですね。