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リーダーたちの構想 第45回
MORE Production Vietnam

ベトナムでの日本の絵本の普及活動などで、日本政府から外務大臣表彰(2019年度)を受賞したモア・プロダクション・ベトナムの勝恵美社長。多彩な事業を展開しながら、絵本の販売、寄贈、読み聞かせにも精力的に動く。

編集者からプロダクション設立へ

―― 写真の撮影でベトナムに来たそうですね。

勝 はい。写真学校を休学して、自分なりの作品を撮影するために、当初は半年くらい滞在する予定でした。それが、もう20年過ぎました(笑)。

 2002年にハノイに来て、日系の旅行会社でアルバイトを始めました。最初は旅行部門の担当でしたが、後に正社員となってフリーペーパーの編集業務を兼務しました。取材や撮影をして、文章を書いて、デザインを指示して、月刊誌を作っていました。

 そのうちにフリーペーパー事業が大きくなり、編集専属としてハノイ支社を任されるようになりました。ただ、自分なりの仕事がしたくなり、親友のヒエン(レ・ティ・トゥ・ヒエンさん)とモア・プロダクション・ベトナムを設立したのが2013年です。

 モアの仕事は、航空会社の日本便の機内誌編集、政府機関や企業のパンフレットの制作などです。仕事が広がると、日本の雑誌やガイドブックのベトナム取材コーディネート、イベントのアレンジ業務なども始めました。最近では企業の社内報制作、ベトナム人向けの雑誌編集などもしています。

 お付合いのある方が困っていて、「ベトナムでなかなかできる人が見つからないんだけど、勝さんなら何とかなる?」などと頼まれると、引き受けていました。やっぱり大変なんですけど(笑)、チャレンジできる機会をたくさんいただき、おかげさまでスタッフは14人になりました。

―― 2017年9月には日本の絵本をベトナムに普及させる「MOGU絵本プロジェクト」を始めます。

勝 2017年までは日本人向けの仕事が多かったのですが、その後はベトナム人に日本を伝える仕事が増えました。弊社の転換期です。

 ベトナムには絵本が少なく、その文化もほぼありません。共同経営者のヒエンは日本の絵本に感動して、自分の子どもに読み聞かせ、2014年からは読み聞かせの活動を始めました。日本の絵本をベトナムに広げることが彼女の夢になり、私の夢にもなっていったのです。

 ただ、絵本の単価は安く、そもそもビジネスの仕方がわからない。模索する中で転機となったのは、、2017年3月にベトナムをご訪問された美智子皇后(現・上皇后)のお言葉です。

 在ベトナム日本大使館主催のレセプション式場でお会いしました。「あなたの夢は?」とお聞きくださり、「ベトナムの子どもたちに日本の絵本を広げることです」と答えると、「頑張って」と背中を押してくださいました。勇気が出ました。

 その後、早稲田大学名誉教授でベトナム研究49年の坪井善明先生からスポンサー企業を紹介していただき、3社から出版のための支援金をいただきました。ただ、絵本の著者も出版社もライセンス契約のことも知りません。そこで、児童書出版社として有名な福音館書店に連絡して、日本に行って説明をしました。

 私たちは書籍の翻訳も印刷もできるけれど、日本の出版社とのライセンス契約ややり取りの仕方がわからないと、正直に話して一から教えてもらいました。

―― 絵本は出版できたわけですね。

勝 2017年6月に、『からだのみなさん』(五味太郎著)、『そらいろのたね』(中川李枝子著)、『ぞうくんのさんぽ』(中野弘隆著)の3冊の翻訳絵本を、各1万部で出版しました。うれしかったです!

 この3冊は私が選びました。昔から五味先生のファンですし、『そらいろのたね』は子どもの頃の愛読書、『ぞうくんのさんぽ』は幅広い年齢層に読んでもらうための本です。

 翻訳はヒエンで、色々と工夫もしました。『からだのみなさん』は原著の文字が手描きなので、ベトナム版でも面白いフォントにしたいと、ヒエンの子どもが書いた文字をフォント化しました。『ぞうくんのさんぽ』にも特殊なフォントを使っています。また、印刷はハノイで一番クオリティが高いと思う印刷所に委託しましたが、価格は1冊2万5000VNDに抑えました。

 意識したのは日本の作家さんの世界観をそのまま伝えること。わかりやすさを重視してベトナム語の単語を選び、日本語独特の擬音語や擬態語の要素も入れました。直訳でリズムもつながりも考えない絵本には絶対にしたくなかったからです。

 社員一丸となって取り組み、時間も手間もかかりましたが、それが評価されたと感じます。この時のチャレンジ精神は今でも社内に伝わっています。

営利と非営利で絵本を普及

―― 絵本は書店で販売したのですか?

勝 ベトナムには日本の取次会社のような流通ルートがないので一般書店での取扱いは難しく、当初は主に日系企業さんにスタッフ向けに購入していただきました。その後は各書店との直接取引を広げて現在は約300店舗で販売しており、市場価格は2万5000~6万5000VNDです。ただ、日系企業さんなどから出版支援の寄付をいただいており、早くビジネスとして成立させたいです。

 こうした市場販売と並行して非営利活動も始めました。企業や個人から支援金を集めて、ベトナム全国の子どもたちに絵本を届けるプロジェクトで、2019年10月に非営利団体の「橋をかける基金」を設立しました。絵本の読み聞かせ活動や童話創作コンテストの開催などもしています。

 寄贈先は地方の病院や小児科病棟、保育園などが多く、訪問して読み聞かせをし、読み聞かせの方法なども伝えています。私も田舎育ちでしたからわかる部分がありますが、特に山岳地域では絵本を見たことがない子どもが多くいます。

 海を知らない子が絵本で海を知る、新しい世界を知る。絵本は平和、モラル、愛情、悲しみなども伝えやすく、最高の媒体なんです。そして、寄贈先に一番影響を与えるのは子どもたちの喜ぶ姿です。

―― 現在(取材時)までに何冊出版しているのですか?

勝 106冊です。2017年に5年で100冊の出版を目標としていましたから、まずは達成できました。ただ、100冊を超えても、子どもたちが好きな本を選べる環境ではありません。日本だったら何千冊という絵本があり、図書館にもあふれていますから。

 日越で文化などの違いはあっても、絵本シリーズ『ぐりとぐら』のように世界で親しまれている日本の絵本も多くあります。良いものは国境を越え、世界観は共有されると改めて感じます。絵本の普及活動は私のライフワークになり、もちろん機内誌を初めとする様々な制作・編集にもベストを尽くします。

 私は小学校まで歩いて1時間かかる山間の出身で、小さいころの夢は「一生に一度、飛行機に乗りたい」でした。それが海外で生活して外国語をしゃべって仕事をするなんて、想像すらできませんでした。好きなことをその都度続けてきたからこそ今があると思っています。

 ですから、特に決めた大きな目標はありません。毎日のできることを続けながらベトナムに関わって、会社もスタッフも私も、一歩ずつ成長していけば良いと思っています。

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勝 恵美 Megumi Katsu
大学卒業後、テレビCM制作会社に入社。退職後、写真の専門学校に入学。2002年にベトナムの日系旅行会社に入社し、2013年10月にモア・プロダクション・ベトナムを設立。2017年9月から「MOGU絵本プロジェクト」をスタート。