ベトナム経済は、世界的に困難な状況の中でも予想よりも早く回復しており、今後も成長を続けると評価された。
これは、9月21日の朝に開かれた記者会見で、アジア開発銀行(ADB)のカントリーディレクターであるアンドリュー・ジェフリーズ氏によって発表された内容だ。
2022年上半期のベトナム経済について、ADBは製造業、サービス業などが予想よりも早く回復していることで、経済バランスが安定し順調な回復を遂げていると評価した。
2022年第2四半期のGDP成長率は、7.7%に達し、上半期の平均成長率も6.4%となり、2021年と2022年の同時期と比べて増加した。ただし、コロナ以前よりは低い数字となっている。
サービス業の成長率は、国内旅行者が6080万人に急増したことを受けて、2021年の3.9%から6.6%まで回復した。国内旅行者の急増によって、旅行関連サービスは2022年上半期に7%の成長を記録した。経済回復が金融サービスと銀行の成長を促進させたことで、金融業の成長率は前年の9.1%から9.5%に増加した。これは、コロナ前と比べても高い数字となっている。
また、ビジネス環境が改善され経済活動が回復したことで、起業件数が増加し、事業を再開する企業の数も急速に増加している。
これによりADBは、アジア諸国の経済成長予測を引き下げている中で、ベトナム経済については、2022年が6.5%、2023年が6.7%と力強い回復の予測を維持している。
また、ベトナムの慎重な金融政策と石油製品などの効果的な価格管理によって、2022年のインフレ率は3.8%程度に収まり、2023年も4%に抑えられると予測している。この予測は、4月にADBが発表した予測数値と変わっていない。
一方でADBは、ベトナム経済の直面するリスクは今後も増大し続けると警告している。リスク要因の1番目は輸出だ。ADBのチーフエコノミストであるグエン・ミン・クーン氏によると、ベトナムの輸出は増加しているものの徐々に暗雲が見え始めている。
経済活動の回復と為替レートの安定性によって、2022年8月末までの輸出額は2508億USDとなり、前年同期比で17.1%も増加した。国内製造業の回復が輸入を促進したことで輸入額は2468億USDとなり、前年同期比で13.6%の増加となった。これによりベトナムの貿易黒字は40億USDに達している。
しかし、世界的な景気低迷はベトナムの輸出に予想以上の打撃を与え、貿易収支を悪化させる可能性がある。ADBの分析によると、世界市場の需要低迷によってベトナムの輸出が停滞しつつある。今後はドン安によって輸入額が輸出額よりも大きくなり、今年全体では貿易赤字に陥る可能性も残されている。
クーン氏は、実際に8月に入ってベトナムの受注が減少していると指摘する。特に韓国と台湾からの受注が減少しており、それが他国にも波及しつつある。ADBは、アメリカの連邦準備金制度理事会(FRB)が金利を引き上げている状況では、これは”驚くべきことではない”としている。
以前から一部の専門家や組織もベトナムの輸出が直面する課題について警告を発していた。HSBCは、多くの電子製品の需要が弱まっていることに初期の段階から注目していた。また、VnDirectは、ベトナムの輸出が年末に向けた最後の3ヶ月で急減する可能性があると指摘していた。これらの指摘の根拠は、世界的な金融引き締めであり、サプライチェーンの混乱が経済成長の見通しを弱め、ベトナムの輸出品への需要減少につながるとみられている。
輸出リスク以外にもベトナム経済は、高インフレのリスクに直面している。主要経済国の中央銀行による大幅な利上げは、世界的な物価上昇圧力を緩和するのに貢献しているが、世界的な地政学的不安定性の高まりが物価を押し上げ、インフレを促進させる可能性がある。金融引き締め策にもかかわらず世界的な物価上昇は続いており、海外からの送金額の減少にもつながるとみられている。
さらに、最近になって多くの医療従事者が退職し、医薬品や医療機器が不足しており医療提供体制が整わない中で、COVID-19が再度感染拡大するリスクも残されている。現在のような労働力不足は、サービス業と労働集約型の輸出産業の急速な回復の障害となる。また、公共投資と社会支出が計画通りに進まなければ、2022年と2023年の経済成長が予想より鈍化する可能性もある。
出典:20/09/2022 VNEXPRESS
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