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ベトナムニュース【社会】路上駐車をめぐる争い

(C) VNEXPRESS

駐車スペースを探して車をゆっくりと走らせていたズンさんは、道沿いの店から飛び出して来た女性に車のドアを開けられ「ここは駐車場じゃない」と大声で注意された。

この行動に腹を立てたズンさんは、3軒先のパン屋の前に車を停めようと思っていたのをやめて、注意してきた女性の店の隣にあるアイスティー屋の前に車を停めて店に入った。「車を停めたいなら慎重にしなければなりません。バイクのようにぱっと店の前に停めればいいというわけにはいきません。」とランソン市に住むズンさんは話してくれた。

店の前の路肩にズンさんが車を停めるのを見て女性は憤慨し、近くの市場に行ってマムトム(エビの発酵ペースト)を2瓶購入した。その後、女性は車のそばまで行ったものの、考えを変えてマムトムを家の前の木の下に捨てた。

客観的に見るとズンさんの車は、洋服店と隣のアイスティー屋のちょうど中間あたりに駐車されていた。ズンさんは、ランソン市の車道は広く、駐車禁止の標識も出ていないので法的には何も問題がないと説明する。当初は、ズンさんも店舗に影響が無いように駐車スペースを探すつもりだったが、女性の態度があまりにも酷かったので敢えて、その場所に駐車した。

ズンさんが住むランソン市はハノイ市のコーザイ区と比べて面積は6倍だが人口は2/3にしかいない。ズンさんの場合は、駐車場所を巡って時にはトラブルに見舞われることがある程度だが、コーザイ区に住むグエン・ドゥック・ゴックさん(34歳)の場合は、ほとんど毎日駐車スペースを巡るトラブルに見舞われている。

どこかに出かける前にゴックさんが最初に行うことは駐車スペースの有無と駐車した場所から目的地まで何キロ離れているかを確認することだ。しかし、駐車禁止の場所でなくても車を停めることが出来ないケースがこれまでにも何度もあった。ゴックさんが車を停めようとするたびに近くの店から人が飛び出して来て「ここは家の前だから駐車しないでください。」と叫び、時には悪態をつかれたりする。場所によっては、道路わきに自家製の駐車禁止マークを掲示したり、大きな石を置いたりして駐車できないこともある。

「一番大変なのはタクシードライバーですよ。」と配車アプリドライバーの仕事をするミン・ドゥックさんは話す。市内中心部に行くたびに客を下ろす前に店の警備員に追い払われ、車体を蹴られたり、酷いときにはナンバープレートに黒いペンキをかけられたりする。

100万人以上の会員が参加しているSNS上の自動車ドライバー向けのフォーラムでは、都市部で駐車場所を探すドライバーの窮状が何十件も投稿されている。あるドライバーは、店の店主にモップで追い払われ、あるドライバーは暴言を浴び、あるドライバーはマムトムをかけられたりしている。

しかし一方で、少なくない人が他人の家のドアの前に車を停めたり、店の前に車を停める行為を批判している。「私たちは意地悪をしたいわけではありません。楽しく過ごしたいのですが、それも時と場合によります。」と自分の店の前の道路に2脚のプラスチックのイスを設置して車が停められないようにしながらグエン・ティ・ハンさん(41歳)は話してくれた。

ハンさんは、コーザイ通りの路上でアイスティーの販売を始めて2年経つが、これまでに何度も店の前に車を停める人とトラブルになっている。この道で店を開くためにハンさんは毎月場所台として50万VNDを支払っている。「一人のお客さんにお茶とお菓子を売ってようやく5000VNDの売上です。1日に25万ドン程度の売上しかありませんが、店の前に車が止まると店が見えなくなって、商売になりませんよ。」とハンさんは話す。

ハンさんにとって路面が重要なように、ドンダー地区で家賃1000万VNDの店舗を経営するチェウ・フンさん(51歳)にとっても店の前の道路に車を駐車されることは認めがたい行為だ。フンさんの店の警備員は、お客のバイクの管理以外に自動車で来たお客に店やその周辺の店に迷惑とならない位置に車を停めるよう常に指示しなければならない。「時には、隣の店の警備員と協力して客に駐車する場所を支持しなければなりません。」とフンさんは話す。

昨年、ハノイのドンダー区で26歳の男が路上駐車が原因で懲役12年の判決を受けた。この男は女友達の家まで車で行き、近所の女性が住む家の扉の前に車を停めた。これを巡って女性と男が口論となり、男が車に乗って立ち去ろうとすると、女性は車の前に立ちはだかりボンネットに飛び乗った。男が車のエンジンをかけて加速したため、女性は道路に振り落されて、63%損傷という重傷を負った。

駐車スペースをめぐるドライバーと店主や家主との対立は、表面的な問題だけでなく、根本的な矛盾を含んでいる。実際問題、道路交通システムの発展は、自動車の増加ペースに追いついていない。

交通運輸省傘下の交通輸送戦略開発研究所の調査結果によると、COVID-19以降の反動で、首都ハノイの市民の1日の外出回数は平均3.7回から3.9回に増加した。更に、自家用車の購入需要も11~13%から17%に増加している。

しかし、ハノイ市交通運輸局によると市内の駐車スペースは、駐車場需要の約10%しか満たしていない。90%近くの車両が、マンション、広場、オフィス、車道、路地、学校、病院、建設プロジェクトの空き地などのスペースに車を停めている。

一方のホーチミン市でも毎日100台以上の車と600台以上のバイクが新たに登録されている。そのような中でベトナム・ドイツ交通輸送研究センターのブー・アイン・トゥアン所長のチームが実施した調査によると、市内中心部では駐車スペース需要の30%しか満たせていない。

ハノイではこれまでに検討された100以上の駐車場建設プロジェクトのうち、完成したのは57プロジェクトしかない。ホーチミン市では、計画によると市内中心部に4か所の駐車場を建設し、約6000台の自動車と4000台のバイクに対応する予定だが、計画から15年以上経過した今でも手続きや資金繰りの問題から実現していない。

トゥアン所長は、駐車スペースの不足は都市計画と管理の失敗が原因だと指摘する。買い物する場所の近くに駐車するという習慣は、まだ自転車がほとんどでバイクが少なく、自動車に至っては殆どないという大昔からの習慣として既に市民の間に根付いてしまっている。しかし、その後の都市の開発によって人口が流入し、収入の増加に伴って自動車の保有台数が飛躍的に増加した。実際には1990年代から政府機関は、規定に従って駐車スーペースを管理しておく必要があった。「その当時から30年が経過し、根付いてしまった習慣を断ち切るのは容易ではありません。」とトゥアン所長は話す。

トゥアン氏によると中央駐車場の計画に加えて、交通管理機関は、どの場所で無料駐車が可能で、どの場所が有料駐車スペースになるかや、違法駐車の行政処分方法などについて、しっかりとした分析をおこなう必要がある。

上記のソリューションによって、駐車場需要の70%を満たすことが出来ると予測されている。残りの30%については、トゥアン氏は、市民の自家用車の使用を制限できるようにするため、公共交通機関システムを発展させるべきだと提案する。また、有料駐車スペースは、時間制の料金システムを導入し、利用者が時間を意識して利用するようにすべきだと指摘する。

「有料駐車スペースによって、政府は収入を確保して公共交通機関とスマート交通システムの開発に予算を投入することができます。また、市民にもより文明的な習慣を意識づけることが出来るようになるでしょう。」とトゥアン所長は述べた。

駐車スペースをめぐる争いに出口が見えない中、ゴックさんは自家用車購入という決断を次第に後悔するようになった。「常に郊外に出かけるとか仕事の都合でどうしても車が必要という場合以外は、他のことにお金を使った方がいいと思います。都会での運転はストレスしかありませんから。」とゴックさんは、打ち明けてくれた。

出典:19/09/2022 VNEXPRESS
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